起きた。
外には雨音。
窓の外を見ると路面しっとり濡れていた。
今日は旅の二日目。
朝ご飯は和洋折衷。
今回泊まったのはペンション。
旅館も良いものだけれど、椅子に座りテーブルの上で食べる、こういう日本の家庭を感じるようなそういう温かみのあるお宿も好き。そしてもちろんおいしい朝ごはんだった。
ペンションデュークさん、お世話になりました!
さて、この日のルートは以下の通り。
まず特筆すべきはスタート地点とゴール地点の標高差。
自分が今いる大湯温泉は標高270mほどで、ゴールする檜枝岐は1070mほど。
ざっくり標高差800m。
つまるところ、登りが多く下りが少ない。
登りが多く下りが少ないということは、時間がかかり、かつキツイ。
獲得標高も2200mと、それなりに多め。
それでは頑張って行きましょう。
自分が机の前で考えているよりも、実際の雨の峠道というのは悪いもんではないのである。
雪国らしく、スノーシェッドを抜けながら。
淡々と登り枝折峠に到着。
13㎞ほど走って、標高差800mほどの峠だったけれど、景色の良さでつらさはほとんどなく、楽しいまま登りきることができた。足の調子も悪くない。
さて、この日、頭を悩ませていたのがゴールの旅館に着く時間。
晩御飯の関係上、18:00までには宿に着かなければならなかった。
距離は70㎞強なので、まあ何もなければ余裕だけれど、何かあったときのリカバリーを考えると余裕は持っておきたい。
そんなわけで、平均時速が9㎞/hを割り込まないようにしていた。
70㎞強のルートなので、そうすれば行動時間は8時間程度になる。
つまり、8:00に出発すれば、16:00に着く。
となれば、何かあっても2時間の余裕がある。
2時間あってもどうにもならないというのは相当な事態だし、もしそうなったら走行不能に使い状態だろうから、そこまで考える必要は無しと判断して9㎞/hを基準にした。
こう書くと、なんと大げさな、と思われるかもしれない。
たかだか70㎞の距離でいちいちそんなことを考えるなんて、と。
だけど、こういう目標を決めておくことは僕にとってかなり重要だったりする。まず「出来るだけ頑張る!」のような後々息切れしがちな変な焦りを生まなくて済む。そんな焦りが無いと、安全運転に気を配ることだったり、補給食を食べるタイミングを考えたりと他のことに注意を向かわせることができ、結果として、その方が早く楽しくゴールに着くことができる。
そして、最も大事なのが、今どのくらい写真を撮る時間があるのか、ということを把握できる。ほんとにこれは大事。
せっかくの景色を、気持ちの焦りからスルーしてしまうなんて、ほんとにもったいないこと。写真を撮ったとしても、きちんと被写体のことを考えず撮った結果、構図が変だったり、ぶれていたり、露出間違えていたり、F値もう少し考えた方が良かったなんてのもあまりにもったいない。
だからこそ、そういうある程度の基準値を設定して、気持ち的な余裕を持っておくことが、サイクリングの楽しさを最大化させる一つの重要な要素だと思っていたりする。
そして、この日に走った道は、そういう気持ち的な余裕をもって楽しむ準備をして、本当に良かったな、と思うほど素晴らしい道だった。
話が逸れてしまったので旅に戻そう。
枝折峠では特に取りたいと思うほどの景色では無かったので、温かい格好になってそのまま下りへ。ちなみにこの時の気温は3度。寒い。晩秋の山奥をなめてはいけない。
バイク乗りにも人気の道なのだろう。
自転車乗りには1人しか会わなかったが、バイク乗りにはたくさん会った。
銀山平近辺では一瞬日差しが見えるようになった。
日に照らされた紅葉は、燃えていた。
ここからは奥只見湖畔を走る。
非常に広大なダム湖であり、総貯水容量は日本2位を誇る。
紅葉はこの奥只見湖畔が一番綺麗に見えた。
それは、標高的に紅葉の時期がばっちりだったという意味でもあるし、道の見通しが良く視界が開けていたという意味でもある。
平坦な場所は多くなく、湖に流れ込む沢に当たる度に上り坂になる。
大きいところで200mほどのアップダウン。
ちょっとした峠と同じくらいの登り下りが続く。
ずっと雨天だったのだけど、一瞬だけ青空が見えた。
山の天気はコロコロと変わるけれど、それが一瞬だけだとしても晴れの方に転んでくれたのは本当に嬉しかった。それがこの景色の良い場所に差し掛かったタイミングでということも、この旅のハイライトの一つとして胸に刻まれる瞬間だった。
もし、神様がいるのだとしたら、あまりに憎すぎる演出。
だけど、だからこそ、旅は出て見ないと分からないのだと、そんなことをぼんやりと思った。
シャッターを切った後は、ガードケーブルに腰掛けしばしの間そこでゆっくりした。
息を吸って、「ほおお」っと吐く。
自転車に乗ることだけがサイクリングではない。
自転車に乗っている時間だけがサイクリングではない。
残念ながら、日差しはすぐに隠れていしまい、再び雨がレインウエアを叩き始めたのだけれど、もはやそれはどうでもいいことだった。
天気は神様の気まぐれ。 pic.twitter.com/g9yivjvzOd
— 103 (@Tomy_viajar) October 29, 2022
遠景から見れば「橙一色に染められた」と言いたくなるけれど、決して一色なんてことは無く、良く見ればそれぞれに色が異なり、あるいは標高差によりグラデーションがあることに気が付く。そして、それを表現できる富士フイルムのカメラが好き。
「ズババババーーーっと」と表現したくなるような、山肌を切り裂く道。
それにしてもこんなところ、良く道を通したな、と思う。
奥只見湖という人造湖の存在も、それを手伝ったのだろうか。
奥只見湖を過ぎると再び視界には木々が聳える道へと変わる。
ここからは御池ロッジ(標高約1500m)までの登りになる。
この辺りは落葉が進み、もう秋も終わりであると告げいていた。
この辺で福島県へ。
国道のおにぎりを見て「そうかここは国道だったか」と思う。
そういう道。
酷道なんて呼ばれることもあるけれど、自転車的な観点から見ればかなり走りやすく、また「酷い」なんて言葉を当てるのは不相応な、本当に素晴らしい道だと思う。唯一気を付けるならば国道であるため、林道感覚でいるとブラインドカーブから車が飛び出してくることくらい。
ちなみに食事をとれる場所はここまでには基本的に無い。
唯一あるのは、福島県に入って少し過ぎたところにある喫茶「山ん中」。その先は御池ロッジ。補給は十分持っていた方が良いと思う。
御池ロッジまでの標高差800mほど。
終盤を除き斜度はそこまできつくないので淡々と登った。
雨の日だから革サドルに乗らない。
そういう選択肢もあると思う。
けれど、雨の日でも革サドルに乗る。
そういう選択肢もあると思う。
雨脚は峠の付近で再び強めになり、一旦御池ロッジにて休憩。
気温は-1℃。みぞれになるかと思ったけれど、ただひたすらに冷たい雨だった。
マイナス気温帯の雨を想定した装備にして良かった。それでも寒かったけど。 pic.twitter.com/ApT1JNllbz
— 103 (@Tomy_viajar) October 29, 2022
時刻は3時前。ここから下り7㎞走れば宿に着ける。
多く見積もっても30分ほどで宿には到着できるので、ここでゆっくりしていくことにした。何より、ストーブがあって、かつカップ麺が食べられるということで、一度座ってしまったら根っこが生えてしまったのである。
ロッジでライダーさんと少し話をしたのだけれど、曰く「10年近く毎年この紅葉の時期を狙ってここにきているけれど、ほとんど毎回雨。降られなければ御の字」とのことだった。
ここ奥只見は豪雪地帯。
冬には雪として降るものが、この季節だと雨になるかのかもしれない。
もし、ここに行こうと思っているなら、こんな山奥走るなら当たり前だけれどレインウエアは上下であった方が良いんじゃないかとは思う。僕は手袋まで防水のものを持って行ったし、それでよかったと心から思っている。
ただ、雨は雨で独特の魅力を持つ不思議な道だった。雨が降っているタイミングで訪れた場所は、「次は晴れの時に」と思うことがほとんどだけれど、何故だかここは次も雨でもいい、それでもまた来たいなと思う場所だった。
雨にぬれた路面かつ落葉があるので、多少ビビりながらゆっくり下った。
16:00前に本日の宿、七入山荘に到着。
そしてお宿で、zumishさんと合流。
「zumishさんって誰?」って思う人もいるだろうから、一応説明しておくと、僕がツイッターでちょいちょい交流があった、自転車とカメラがお好きで時々動画も上げている方。旅の様子やバイクのチョイス、乗り方なんかから、自分と文化圏的に近そうだなと勝手に思っていて、いつかご一緒したいな、と思っていた、そんな方。
ここまで書いていなかったけれど、明日はzumishさんとのライドであり、もっと言うとzumishさんとライドをするために、京都からはるばる福島県の山奥まで来たということなのである。そのくらいご一緒してみたいと思っていた、ということであり、そう書けばどんな方なのか、何となく察してもらえると思う。
その予感は的中し、次の日のライドはとても楽しいものになるのだけれど、詳しいことは、翌日のライドしたときの印象も含めて、次の記事にでも書こうと思う。
さて、晩御飯はかなり豪華だった。
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