むくり。
そうだ。ここは、海岸だ。
夜明けとともに起床。なんて言えばものすごく健康的に聞こえるけど、現実は海岸にテント張って寝ていたので、早めに撤収しなきゃいけないわけで眠いをこすり、シュラフの温みに後ろ髪惹かれながら、なんとか這い出しただけ。
まだ、月が見える。
急いでテントを片したあとは、堤防に腰かけて、しばしぼーっと。
昨日買ったせとかを頬張りながら、辺りが明るくなるのを見ていると、ようやく頭が回るようになってきた。
この頭が回転し始めるまでの夢と現実の間でぼーっとしてる感じ好き。(ずっとぼーっとしてていつまでたっても出発できないやつ)
昨日の話はこちらから。
腹が減ったのでとりあえず朝飯を求めてコンビニへ。
暖まりたかったので迷いなくカップ麺。
さて、この日のルートはこんな感じ。
それでは最初に行きたかった場所、鬼ヶ城へ。
ここから先は遊歩道が整備されているので、自転車は置いて徒歩で散策。
平安時代に、鬼と恐れられた海賊「多蛾丸」というのがここを拠点にしていて、坂上田村麻呂が征伐したとかなんとか。
坂上田村麻呂といえば征夷大将軍として、蝦夷(北海道じゃなくって今でいう東北地方)へ赴いて武功を挙げたりして、学校の授業でも取り上げられるくらいには有名な人物。京都の清水寺とも関係が深い人物じゃなかったかしら。そういえば、田村麻呂が戦った蝦夷のアテルイやモレの碑があったのも確か清水寺。
この入り組んだ感じとか見ていると、攻め込みにくく守りやすそうな地形だなって思えてくる。なるほど海賊が根城にする理由も何となく分かる。
この辺り、野宿できそう()
遊歩道はこんな感じ。
ちゃんと柵はあるので安心と思いきや、チェーンだけのところとか、柵がぐらつくところなんかもあって結構スリリング。歩きやすい靴の方がオススメです。
今回の旅、このGIRO Republic R Knit というビンディングシューズを使っていて、歩きやすいし良いんだけど、とにかく靴底が削れるのがはやい。いやまあ、お城巡りとか輪行とかしてゴリゴリに歩いているからってのも大いにあるんだろうけど、それでもよく削れる。「おめーさては消しゴムだな!?!?」ってレベル。
旅に出てから既に15日目も経っていて、かなり削れてしまって滑りやすくなったこの靴でこの岩場を歩くのは結構気を遣う。
「歩きやすい靴≠たくさん歩いても大丈夫な靴」ということが今回の旅でよくよく分かった。ちなみに、この靴は家に帰って来てから靴底補修材で補強しておきました。
少し見えにくいけど、真ん中にいるこの鳥、イソヒヨドリっていうらしい。
自分の家の近くだと見たことが無いけど、四国そして紀伊半島と旅してきて見ない日は無いくらいによく見るから、気になって調べてみたらそういう名前らしい。
こういういつも見ない生き物を見ると、「ああ!いつもと違う場所にいる!」って感じられたりして楽しい。
こっちみんなし
思ってたよりも遊歩道が長くって、全部歩ききれそうになかったので、7時半になったら引き返すと時間を決めて散策。自転車を置いたところまで戻ってきたときには時刻は8時をまわったくらいで、結局1時間くらい歩き回っていました。
城跡もあるみたいだったけど、今回は時間切れ。さすがにこれ以上散策していると今日の宿にたどり着かなくなっちゃう。
さて、それでは志摩を目指してスタート!
R42を走っていると、なんだか様子がおかしい。今日は海沿いを走るはずだったのに、山を登っている。あ、ルートミスった。
というわけで戻って海沿いの道へ。
海沿いの道に来てもなんだか様子がおかしい。ガーミンに地図を入れて来たのに、走っても走っても一向にスタート位置にたどり着かない。ガーミンの地図を拡大、拡大、拡大、かk、、、
あれ?スタート場所、尾鷲になってないか!?!?
もう一度、今日のルート予定見てみましょう。
あー!!尾鷲になってるー!!!!!
まじか。
ちなみに鬼が城ここ。
尾鷲、、、遠い、、、。
なんでこんなことが起きたかっていうと、ルートを立てる時に昨日(つまり5日目)に熊野市までで終わりにするか、頑張って尾鷲まで行くか悩んでいて、最初は尾鷲まで行くことにしていたのですが、結局熊野市までに変更したというのがありまして。
昨日は熊野本宮大社とか丸山千枚田とか観光要素強めだったから、熊野市までにしておいて正解だったのですが、問題は次の日のスタート地をきちんと尾鷲から熊野へと変更するのを忘れるあたりがもう、ポンコツのポンコツたる所以。
そして、それを前日に確認せずに走り出してから、しかも走り出してから結構時間が経ってから気が付くあたりがもうね、もう、って感じです。
しかし、ポンコツ、ここでさらなる失態を犯します。なんでか最短ルートを調べずに「海岸線行けば尾鷲つけるっしょ。海岸線の方が気持ちいいし」なんて考えてそのまま海岸線を進みます。
ここで聡明な読者の皆さんならもうお気づきでしょうが、海岸線はとにかく前に進みません。上下左右にグネグネしているおかげで、地図の下の方にあるスケールバーとか全く役に立たないあれです。
結果、まあまあ進んだ気になって、地図を見て愕然。進んでねえ。(←ほんとポンコツ)
ここでようやくグーグルマップで最短距離を調べます。
いつものザックリ解説。
もうだいぶ走ってから調べたので、たしかこのミスに気が付いたのは楯ヶ崎の辺りでした。R42を行くのが一番近いのでそっちに戻らないといけないのですが、かなり遠回り。しかも、さっき山の中で「間違えたー」って言ってた道が実はR42で一番の近道だったという。ショック。
さらに言うと、スタート位置間違えたのに気が付いたけど調べずに進んだ時にちゃんと調べておけばもっと近道できたというね。
しかもこの日は野宿でもキャンプでもなく宿を取っていたので、間違えた分短くして明日以降に回せばいいということもできません。とにかく間違えた分+走る予定だった距離を走り抜けなければなりません。
尾鷲まで走ると50㎞。そこからこの日の予定していた100㎞。まあ頑張れば何とかなるでしょう。これだけ入り組んだ海岸線なので獲得標高が気になるけど、それもまあ何とかなるでしょう。多分。
150㎞という距離だけ見れば、その程度であれば走ったことも何回もあるし何の問題も無いのですが、そうじゃなくて気分の問題。「今日は150㎞走るぞ~」ってなっている時と「今日100㎞走るぞ~」って思っていたら実は150㎞だった時って絶対違う。精神的疲労度が違う。
まあ、やってしまったものは仕方ない。
もう後はとにかく頑張るだけですよ。ええ。
というわけでここから写真、めっきり減ります。悪しからず。
賀田の辺りから海岸線に別れを告げ、山へ。R42に接続する少し手前の登りが精神的にも肉田的にも結構きつかったです。R42が見えたときにはほんとにほっとしました。
R42に入ってからは尾鷲まで下り。
尾鷲を過ぎたあたりで道の駅を見つけたのでそこで昼食。
鳥のスタミナなんちゃらみたいな料理名だった気がします。もう「スタミナ」の四文字だけで決めたのでよく覚えてません。
ここまでで55㎞ほど。つまりあと85㎞進めばOK。宿の予約するときに「5時半くらいに着きます」と伝えていたので、そこまであと5時間なので1時間で17㎞進めばいい計算。このくらいのペースなら僕でも問題なさそう。
こういう計算って僕の中では結構重要で、精神力も脚力もない僕が「とにかく頑張る!!」とかやってしまうと全然もたないので、細分化して達成できる小さい目標をこなしていくようにして最終的に帳尻が合うようにしています。
この辺り、平地なんて甘えたものはありません。とにかくアップ&ダウン。
登りでは体力を使いすぎないように、下りでは体力を回復するように。
それにしても、三重県って山深い。
三重というと真珠やら牡蠣やら、それこそ伊勢海老なんか名前に「伊勢」が入っているくらいだから海なイメージが強かったけど、この日でイメージ180度変わった。三重県、山ばっかりじゃねーか!!
もちろん海はある。けど、山もいっぱいある。
さて、そんなこんなで登りでも下りでもペースを守りつつ走って、ようやく最後の大きなアップダウンにしてこの日唯一の峠へと道を進むと、、、
はい、出ましたー。通行止めー。
こういう焦ってるときに限って出てくるやつー。
この峠を越えればショートカットできるからって国道から逸れてわざわざ来たのに、まさかの遠回りしただけ。すごすごと国道へ逆戻り。
戻ってきましたよ。国道に。
この国道、車通りも少ないし信号もほとんどないから、めちゃくちゃ走りやすいのがせめてもの救い。
上の写真までで135㎞を超えたくらい。ちと疲れたので一旦休憩。
たしか、昼飯以降初めての休憩。僕の場合、早く移動するのに重要なのは速く走ることじゃなくって、止まっている時間をいかに減らすかの方がはるかに重要だったりします。
あと15㎞くらいなのでここまでこればもう着いたも同然。思ってたよりもいいペースで進んでこれたので、5時半には間に合いそう。よかったよかった。
とか言いつつ、気のゆるみと向かい風と信号で残りの15㎞が意外と進まなくてちょっと焦ったけど、予定通り5時半にとーちゃく!
この日の宿はここ。
ちょうど着いたタイミングで雨が降ってきた。いやはや逃げきれてよかった。
「入り口どこかなー」と探していると、中から宿の女将さんが出てきてくれて、案内してくれました。自転車も中に入れさせてくれてありがたい限り!
さ、晩御飯でも探しに行くか、と思ったその瞬間、その宿の女将さんに「晩御飯食べた?」と聞かれたので「いや食べてないです」と答えると、「いまからうち晩御飯食べるけど、一緒に食べる?」と。
断る理由も無いので、母屋の方についていくと、、、
女将さん「いまからいろいろ出すからテーブルの上のハマチの刺身食べてて」
僕「ありがとうございます!」
女将さん「遠慮せずたくさん食べてね~」
僕「これは何のフライですか?スズキとかですか?」
女将さん「それはね、ブダイなの。ぷりぷりしてるでしょ」
僕「へーそうなんですね。ブダイのフライは初めてです!」
女将さん「遠慮せずたくさん食べてね~」
女将さん「はい、ポークステーキ」
僕「ありがとうございます!!」
女将さん「遠慮せずたくさん食べてね~」
女将さん「キムチスープあるけど食べる?」
僕「いただいてもいいですか」
女将さん「どうぞ~。たくさん食べてね~」
女将さん「これめかぶなんだけど、とれたてだから美味しいよ~。ご飯にかけて、醤油垂らしてかきこんじゃって!」
僕「うまいっす!」
女将さん「遠慮せずt、、、」
僕「いや、もう腹いっぱいっす」
久々に満腹の向こう側を見た気がしました。
どれもこれも美味しかったのと「遠慮せず食べてね」という言葉に甘えて、写真にあるおかずだけでなく白米もいっぱい食べていて、このめかぶでもう既に3杯目。ツーリング中は普段よりもたくさん食べるので胃が大きくなっているはずなのに、それでも満腹。大満足でした。
写真がいつもよりあれなのは、カメラを部屋に忘れて携帯で撮っているからです。いやーGRの方で撮っておきたかった!やっぱり携帯とコンデジだとまだ越えられない壁があるように僕は感じますね。撮り手が機材に大きく依存しているってのもありますが。
この宿、家族経営だったので、家族の方たちと晩御飯をご一緒させていただく形になったわけなのですが、フレンドリーな方たちだったので、なんというか宿に泊まりに来たというよりも仲の良い親戚の家に泊まりに来たみたいに錯覚するくらい居心地が良かったです。
さらに素泊まり3000円くらいのプランで予約していたのですが、なんと1000円の日本一周プランに変更していただきました。
前日電話で問い合わせた時にそのプランがあることは聞いていたのですが、僕は日本一周しているわけでは無いので素泊まりで予約したら、どうやら日本一周じゃなくてもバイクとか自転車とか徒歩とかで長旅をしている若者なら、日本一周プランで良かったらしく。
しかも、それを伝えるために日中、何度も電話をかけてくれていたそう。自転車漕いでて全然見てなかった。申し訳ない。。。
もちろん、上の晩御飯もこみこみです。ありがてえ。
ちなみに晩御飯にありつけるかどうかは、女将さん曰く「タイミングと私のファーストインプレッション」だそうです。
なんでそこまでしていただけるのか聞いてみたところ、「若者を応援するのが好きなのよ」と。かっこええええええええ!!
いや、ほんとありがとうございます。
「できれば宣伝しておいて」って宿の方に言われたので、全力で宣伝しておきます。
ペンション海老蔵めちゃくちゃオススメです!!!!!!
今日の宿、ペンション海老蔵っていうんだけどめちゃんこ良い。若者旅行応援ってことで1000円で泊まれて、運が良ければ美味しい晩ごはんも食べさせてもらえる。伊勢志摩来たらまた必ず寄る。ほんとにオススメ。 pic.twitter.com/uyFbktZvrc
— Tomy (@Tomy_viajar) March 19, 2020
晩御飯を食べ終わって、ゆっくりとさせてもらっていると、女将さんが真面目な顔して「一つ失礼なこと、聞いてもいい?」と聞かれたので「全然だいじょうぶですよ」と答えると、「なんで旅の出てるの」と。
答えに詰まってしまった。なんでだろう。
僕が悩んでいるのを見ると、質問が分かりにくかったと思ったのか女将さんが「以前に自転車旅で来た人は『弱い自分を鍛え直すためだ』って言ってたけど、そういう感じ?」と。
「それは、違いますね」
この質問には僕は明確に答えられた。僕が旅に出るのは弱い自分と向き合ったり、鍛え直すためではない。僕はそんなに強い人間でもないし、出来た人間でもない。
「楽しいから、ですかね」
ポロっと口をついて出てきた。けど、口にすると心の底からそうだと思えた。僕が旅に出るのは間違いなく、「楽しい」から。
知らない土地を走って、知らないものを見て、知らない人と出会って、知らないものを食べて、知らない歴史に触れて、知らない自分になんか出会っちゃたりして。
「知らない」がどんどん「知らなかった」に変わっていく。自分の世界がどんどん広がっていく感覚。それが楽しいから、旅に出ているんだと思う。今まで聞かれたことも、考えたことも無かったけど、たぶんそうだと思う。少なくとも現時点ではそう。
こんなこと前までは気にしなかったけど、女将さんに聞かれてからはみんなが人がどう思っているかものすごく気になっています。
さて、そんなこんな話をしているうちに時間が経ったので、母屋からお暇して宿泊する部屋の方に戻ってきました。
今夜寝るのは、この部屋!
しかも、なんとこの日は僕一人だったので、この部屋独り占めです。いいのか!こんな贅沢して!今日1000円しか払ってないぞ!!!バチ当たらないか!!!
ルートを作り間違え、道中ブルーになってたし、なんで宿なんか予約しちゃったんだよなんて思ったりしましたが、文字通り終わり良ければすべて良し。頑張って走った甲斐があった!
部屋にユニットバスもついていたのでそこでゆっくり汗を流してから、携帯、カメラ、サイコン、ライトなどなどを充電器にセットしてから就寝。紀伊半島6日目にして初の布団。寝心地は言うまでもなく、一瞬で夢の中へ。
つづく
実際走ったコース
走行距離152.7km 獲得標高2219m |
(海岸線走っただけで獲得標高2000m越えって、三重県、、、こええ、、、。)
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