『秋の福島・新潟ツーリング』3日目 八海山~魚沼スカイライン 

起きた。
体は、やや重い。
ただびっくりするほどではなかった。
うん、これなら。
昨日は最後にほうは自分としてはかなり踏んでいたので、その疲れが残ってたら嫌だな、と思ってたけど、大丈夫そう。これは温泉パワーかな。

朝ご飯の前に朝風呂へ向かった。
体を温めたかったのと、せっかくだから入っておきたかったから。

反対に言えば、朝風呂に入らず寝ていたいと思うほど疲れていたわけじゃないということ。本当に疲れている時はわざわざ朝風呂なんて入らない。入れない。今日も大丈夫そうだ。
 
そういえば、この日の一般の宿泊客は多分、僕だけ。朝風呂も多分僕のためだけに準備してくれていた。ありがたいと思う反面、少し申し訳なくなった。確かに人がごった返すような忙しない場所に泊まりたいとは思わないけど、貸し切りというのも落ち着かない。早く落ち着いた世の中になるといいな、と柄にもなく思った。

さて、お待ちかねの朝ごはんも白米はおかわり自由。


なんだかんだ言って補給食こまめにとるよりも、一回でガンってエネルギー補給しちゃうの結構、面倒くさくなくて好きなんですよね。
というわけで多めに食べて本日もスタート。


たもん荘さん、お世話になりました!

この日のルートはこんな感じ。


これは小出スタートになっているのでスタート地点が違うけど、今いるのは浦佐駅近くの旅館。
ここから今日は出発。

本日最初に向かうは八海山。
八海山と言えば日本酒。
下戸で、一回だけ飲んだ日本酒はアルコール消毒液としか思えなかった僕でも、その名前くらいは知っている。だけど、実際の八海山がどんな山かは最近まで知らなかった。「最近」という言い方をしたのは、昨日まで一緒に走っていたイナさんがそこを走っているのを、ツイッターで見たから知った、ということ。




知らない場所に行くワクワクはあるけれど、「うわーここ行ってみたい!」と思っていく面白さも、また、あると思う。今回の八海山はまさにそれ。宿で教えてもらった道を走り県道214号に入ると、その山容が見えてきた。


いやーかっこいい!
「どーん」って感じだった。
それと、214号線を走っていると、ずんずん八海山が迫ってきて、迫力を感じられるのがとても良い。割と周りが開けているからだろうか、一時的に民家で見えなくなることはあっても、大体ずっと見えていて、なんだろう、すごく気持ちが良かった。



今日は一人。
写真をのんびりとっても良し。
のんびり走っても良し。
上がってきたテンションに任せてペースアップしても良し。

もちろんイナさんと走ることは楽しかったけど、一人旅もまた楽しいもの。この二つはベクトルの違う楽しみがあるものだし、久しぶりの一人の遠出。当然、テンションが上がらないわけがない。

関東近辺のソロでのライドは何回か行っていたけれど、やっぱり「旅」という感じじゃない。「旅」の定義をどこに求めるかは、その時々で変わるから、”これ”というのは今言えるわけじゃないけど、あれらは旅じゃないとは思っていた。けど、これは間違いなく旅だ。家から遠いからかもしれないし、久しぶりに泊まり込みだったからかもしれない。とにかくこれは旅だった、と思う。


八海山へのアプローチ自体は楽。
何処からにもよるけど、盆地からだいたい250mほど登るのに8㎞以上あるのでゆるゆる。最後だけちょっと上り坂感はあるけれど、ヒルクライムでは全くない。体を温めるのにちょうどいいな、なんて思いながらゆるゆると登り八海山ロープウェー山麓駅へ。



八海山ロープウェーは山麓駅から約5分で4合目まで行ける。文明の利器は強い。
昨日の宿で、割引券を貰えたのでいくらか安く乗ることができた。やっぱりこういうのは宿に泊まる良さだよなあ、とは思う。


あっという間に小さくなる山麓駅と、その田園地帯を見ながら、ロープウェイに揺られること約5分。山頂駅に到着。


ロープウェーから降りてすぐ、魚沼盆地が一望できた。
良い。

もう田んぼが金色の稲穂に埋め尽くされる時期は過ぎていたけれど、それでも十分見ごたえのある景色だった。あと、やっぱり秋だったなあ、とこの写真を見て書きながら思う。確かに紅葉はしてないし、お米がたくさんあるわけでもないんだけど、この空気感は気持ちの良い秋晴れの日にしかないもの。そんな日にこの景色を見られたのは良かったと思う。ちなみにロープウェーの案内のお姉さん曰く、紅葉のピークは10月の終わりくらいだそう。その時期にも行ってみたい、と思える良い場所だった。

五分ほど歩くと展望台があるそうなのでそちらにも向かった。


こんな感じの360°見渡せるタイプの展望台。
ただ、周りに木が多くて、景色的には山頂駅の方が良かった印象。


こっちは北側。


これが反対に南側。
三国峠を越えれば群馬、というのに若干驚く。新潟ってだいぶ遠いイメージがあるけど、群馬はそこまで遠いイメージが無いから不思議な感じ。隣の県だって頭ではわかっているし、峠一つ越えれば、というのも分かってい入るけど、なんだかその距離感が思っていたよりも近くて。この土地関係が分からなくなるの、旅っぽくて好き。


ぐるっと回って再び山頂駅へ。
この「ゴオングオン」みたいな音しながら動いているの、なんだか好きですね。
あと、無骨な感じも好きです。



ほら、やっぱり秋。


ひとしきり回ったのでロープウェーで山麓駅へ。
あっという間に山麓駅へ着いた。やっぱり文明の利器はスゴイ。

山麓駅まで戻った後は、家族へお土産を買って送った。
送ったのは「魚沼産コシヒカリ新米」。クッキーとかでもいいんですが、こういう方が我が家の場合喜ばれるので。あと、僕も美味しく食べられるので。実際、家に帰って食べましたが、ツヤが凄くて割れも少ない美味しいお米だったことを報告しておきます。

さて、その後は八海山から魚沼スカイラインへ、という予定だったのだけど、道中に気になった場所があったのでそちらへ。


そう八海神社。
何が気になったか、と聞かれると説明が難しいんですが、何となく行ってみたいなと思ったわけです。で、行ってみたらやっぱりアタリ。旅の時のこういいう直感は大事。






歴史は古く、社殿と大鳥居は立てられたのは延喜年間(901~923)だとか。となると平安中期辺り。その謂れが本当かどうかはさておき、歴史がある場所ということは間違いなさそう。そして、この神社の前に延びる杉並木が素晴らしかった。


これは1836年の大旱魃の際に水源涵養林として植えられたものなのだそう。1836年は天保年間。そう、つまりこの大旱魃は天保の飢饉のこと。ちなみに天保の飢饉がきっかけで起きた大塩平八郎の乱は1837年。日本史の知識がこうやってつながっていくのは、ちゃんと勉強していてよかったなあ、と思う。天保の改革が失敗に終わると、江戸幕府も終焉へと向かうわけだけど、その激動の日本をずっと見てきたのだなあと思うと、それもまた感慨深いものがあった。











さて、あまりにも雰囲気が良かったのでのんびりしてしまっていると、時刻は丁度正午辺り。そしてちょうどよく、社務所でそばが食べられるみたいなので、行ってみることに。


外観は完全に民家で、本当に社務所という感じなのですが、そこにこんな暖簾がかかっていてちょっとびっくり。社務所で営業している飲食店のパターンは初めて見たけど、他でもあるのかな。



注文した蕎麦はこんな感じ。
やや太めの麺で、コシが強めだった印象。美味しかったです。
手前にご飯は、ピリ辛の味噌と一緒にどうぞ、ということだったんですが、これもまた美味しかったです。



さて、お腹も満たされたところでリスタート。
賢明な読者の皆さんはお気付きのことだと思いますが、まだ全然走ってない!
この時点での走行距離は18㎞。つまり後残り100㎞。

やっぱり、一人旅は楽しい。
いや、一人旅も楽しい。

自分で全てを決められる自由はあるし、そんな感じなので当然、この距離を見ても焦るようなことは無く、まあ正直この時点でナイトランは覚悟はした。したけど、別に絶対避けたいわけでもないし、むしろ焦って見るべきをスルーしてしまう方が痛いので、まあ、ゆるゆる行きましょう、という感じだった。



何度でも振り返りたくなる山、八海山。
こちらは県道479号から。

次なる目的地は魚沼スカイライン。
場所は魚沼盆地を挟んで、八海山のある越後山脈の反対側の魚沼丘陵の稜線上を走る、名前の通りのスカイライン。ヒルクライム的には、盆地からは大体500mくらい登ると大体稜線に出られるというもの。

ちなみに魚沼スカイラインは前々から行ってみたいと思っていた場所で、サークルの部員が真夏の天気の良い日に走って、あまりに暑すぎたのと道中に何もなくて、途中の水たまりみたいな場所で水飲んだけど、道は良かったよ、という話を聞いてから俄然行ってみたくなっていた場所。その彼は、その道中を振り返って「ルート作成者は季節というものを忘れていた模様」の一言で終わらせていたのもセットで思い出した。あらゆる面でタフなサイクリストは信用できる。


魚沼スカイラインへのアプローチはいくつかあるけれど、今回選んだのは一番北側の県道560号線から八箇峠の道。県道560号線はスノーシェッドがずっと続くタイプの道で、やっぱり雪国なんだなと思った。



スノーシェッドを抜けると、看板があるのでさらに左へ進んで稜線へ。


振り返れば魚沼盆地。
手前に見える蛇の抜け殻みたいなのがさっき通ったスノーシェッド。


淡々と登って八箇峠。
見晴らし台があったけど、思ったよりイマイチだったのでさらに進むことに。


さらに進むとこの眺望。
スカイラインに恥じないその景色。
素晴らしい。


稜線沿いなので時々眺望が開けるのではなくてずっとこんな感じだった。景色は今まで走った道の中でもトップクラス。とにかく気持ちのいい道だった。


稜線沿いのアップダウンをこなしつつ、というか魚沼スカイラインは南側の方が標高が高くなるので、八箇峠を過ぎて下ったあとはアップアップダウンアップくらいの割合の道を進んで十日町展望台へ。



階段を上るとこの景色。
魚沼盆地を挟んで越後山脈の峻険な山々を望む。
この高度感がたまらない。


そして自分の自転車がかっこいい(急に自画自賛)
こんな感じで数日間の旅に使える自転車が欲しいと思ってこの自転車を買ったので、こんな感じで旅の格好をさせて様になっているのは狙い通りで嬉しいし、乗っていても楽しいので、やっぱりいい自転車だなあと思えた。



さて、ここから南側に進むと再びしっかり登り。
さらに標高200m上げて900mを超える魚沼展望台へ。
日が傾き始めるとグッと冷たくなる秋の風を受けて、夕暮れの時間になったことに気が付く頃に魚沼展望台に到着した。


標高920m


こちらも良い眺め。
写真の通り夕暮れの気配が見えていて、ほてった体に冷たい風が気持ち良かった。時間帯が時間帯だったからか、あるいは平日だったからかは分からないけど誰もいなかった。ただ、風がもの凄く強くて、やっぱりこのあたり稜線だなと思いつつ、体が冷えないようにジャケットと手袋をした。


再びの八海山。
魚沼というのは八海山に抱かれる街なんだ、とこの景色を見て思う。
シンプルにいい場所だなとも思った。
それはきっと昔から変わらないんだろうな、とも。

あれが八海山と知らなければ、「なんだか山があるな」で終わってしまうし、こんな風に撮ったりすることもできない。旅先で見たもの、行った場所を通して自分の見えるものの解像度が上がるというのはやっぱり楽しいし、これこそ旅の醍醐味だと思う。


魚沼展望台を過ぎると魚沼スカイラインは稜線に別れを告げて国道353号線へ向けて標高を下げていく。すっかり冷えた空気になっていたのでしっかり着込んでダウンヒル開始。


途中に見た景色。
何でもないかもしれないけど、美しいと思った。



魚沼スカイラインを走り終えて向かったのは津南にある482号線。なんでここを走ってみたかったかというと、それは地図で見た貰った方が早い。


びっくりするくらい真っ直ぐ。
北海道かなってくらい。
これを見て興味が湧いたので行ってみることにした。

ただ、地図で見ている時は気が付かなかったのだけど、ここは釜川と中津川に挟まれた河岸段丘の上。「真っ直ぐだから平坦なんだろう」という僕の予想は鮮やかに裏切られて、ちょっと登り。


登ったら急に開けてこの通りの開けたドストレート。
これは北側の方を見ているかたち。
ただ地図で見ているほどびっくりする真っ直ぐという感じでもなかった。
そして南側に向かってやや起伏がありながらの若干登り。



ちょうど収穫の時期。
実りの秋。


自分の影を見ながら走る。


そしてここで夕暮れを迎えた。
思ってたよりもまっすぐさは感じなかったけど、でもよい景色。
季節も時間帯も、ちょうどいいタイミングだったと思う。

さて、予定では奥志賀公園栄線へと走る予定になっていたけど、ここでこんなに暗くなってしまったのでカット。まあどうしても今回行きたい場所では無かったのでまた今度ということで。

陽が沈んでからはひたすら国道117号線を走った。
普段なら怖い国道でも、夜になればその車の存在に少し安心感を覚えた。


ナイトサイクリングイズグッド。
実を言うと、ナイトサイクリングそこまで嫌いじゃないんです。どこを走っているのか分からないし、景色も分からないし、確かにそういう意味ではつまらないけど、でも、嫌いじゃない。

冷えてきた濃密な夜の中、淡々と変わらない景色の中ペダルを漕いでいると、自分の輪郭が薄れていくような、でも反対にその温度差ではっきりしていくような、そんな感覚に襲われながら、「今日も疲れたなあ」と「でもいい一日だったなあ」がない交ぜになった「ほぉ」とも「ふぅ」ともつかない吐息を、星空の下に漏らすとき、ナイトサイクリングイズグッドは完成するのである。


そんなことを考えながら、夜道をひたすら30㎞ほど走り続けて飯山駅に到着。
今回の旅はここでおしまい。


新幹線に揺られて、ゆったりした音楽を聴きながら帰った。テンポの速い音楽じゃなくて、ゆったりした音楽を聴きながら帰りたくなる、そんな旅ができたのは本当に良かった。1日目・2日目はイナさんと、3日目は一人で。どっちも楽しかったし、どっちも楽しいことを思い出せる旅になって良かったと思う。また、どんどんいろんな場所へ行こう。まだまだ行ったことない場所ばかりだし、こういう景色をもっともっとみたいなあと思いながら車窓を眺めていた。

おしまい。

実際走ったルート

走行距離:117㎞ 獲得標高1893m





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