ALL-CITY Cosmic Stallion を購入してから少し経った。
色々あって、多く乗れているとは言い難いけれどけれど、乗る中で不満が出てきたのも確か。
一番の不満点が「乗り心地が硬い」ということ。
今まで乗っていたKONA
Sutraと比べてフレーム自体の硬さも明らかに上がっているし、タイヤ幅も細くしているので当たり前だけど、それ以上に気になっていたのがホイールとの相性の悪さ。
とにかく、硬くて進まない。
今まで使っていたのはフルクラムの旧Racing 5DB。
新しいモデルが2021年に出ましたが、それではなくひとつ前のモデル。
実売価格は海外通販で40000円ほどで、重さは1610gとコスパ良好。SUTRAの方にも履かせていて、四国・紀伊半島や北海道でのキャンプツーリングなんかにも乗り回し、10000km以上乗って特に大きなトラブルもなく使えていたので、そこを考えてもやっぱりコスパは良好。
ただ、先にも書いたように、cosmic
stallionとの相性がとにかく悪い。硬くて進まないのです。SUTRAはcosmic
stallionに比べフレームに柔らかさがあるからか気にならなかった硬さが、気になるようになりました。
具体的に言うと、軽くて硬いので踏み出した時はいいのだけど、巡行するときにそのまま踏み続けないといけないような感じがするのです。それと、衝撃も「ガツン」とくる印象です。「路面状況をつぶさに伝えてくる」と言えば聞こえはいいかもですが、個人的には「そこまで伝えてこなくても…」という感じでした。
それと、旧Racing
5DBに35C前後でサイドが柔らかめのタイヤを履かせて低圧で運用すると、下りの高速時に、よれるというか捻じれるような感じがしてまっすぐ進まないことがありました。これが結構怖くて、使うのをやめたタイヤもあります。
この辺りはタイヤとの相性もあるのだろうけど、リム内幅17mmということもありそう。ちなみに新しく出たRacing
5DBは内幅20㎜になっています。
というわけで、この辺りの不満を解消できるように
「新しいホイールを買おう!」
という結論に至りました。
求める性能は「乗り心地が良いこと」と、「リム幅は広いもの」の他にも、今までの乗り方を考えて、「アルミリムであること」「リムが軽いこと」という2つの条件を上げていました。これはRacing
5DBを買ったときにも考えていましたが、アルミリムは当然ながら値段のこともそうだし、普段から気兼ねなく使えることが大事なのでカーボンは除外。リムが軽いことが条件なのは、峠を軽快に登れる登坂性能を重視しているから。
というのも、リムブレーキのRacing
3・zondaみたいな定番ホイールはディスクロードではありませんし、ホイールの売り文句って大抵が「何グラム軽量化」「高剛性化」「空力最適化」「何ワット削減」といったものばかりで、なかなか欲しい条件、特に「乗り心地」「リムが軽い」を満たすかどうかわからなかったのです。
上にリムのジョイント部の写真を挙げた通り、届いた時点ではリムテープは未装着。自分でつける必要があります。付属のリムテープは、stansのリムテープより色は薄いけど、感触としては似たような感じ。おそらくチューブレスにも対応してると思われます。写真はリムに1重巻いた残りの状態。2周はいけそうです。
そういうわけで、手組も視野に入れつつ考えていました。
手組を視野に入れつつ探していると、ホイールビルダーから評価が高いメーカーを見つけました。それが今回購入したHED.です。
参考にした評はこの辺り。
HEDについてですが、BELGIUMなんて名前のリムを作っていることもあって、勝手にヨーロッパのメーカーだと思っていたのですが、アメリカのメーカーです。HEDはカーボンリムをメイン作っていて、実際にピストにHEDのディープリム履かせている人を見たことがありますし、個人的にもそっちのイメージが強いですが、上の通りアルミリムの評判も上々のよう。
手組も考えましたが、24Hのリムの在庫が無いようだったのと、メーカー完組がコスパが良かった(決して安くはない)のでそこで購入しました。メーカー完組といってもJスポークを使っているので、最悪乗り心地が悪かったりしても、組み替えてもらったりと後々の選択肢があるな、と思って購入に踏み切りました。
で、ようやくですが、今回購入したのが、
Ardennes RA Performance Disc
です。
Ardennesはベルギー南東部、ルクセンブルク、および一部がフランスにまたがる地域名のことだそうです。(Wikipedia)
HEDのアルミリムにはBELGIUMという名前が付いていますが、それと同じようなことなのでしょうか。上に挙げた評の中にも書かれていましたが、ベルギーと言えば悪路!シクロ!という感じらしいのですが、そんな地域の名前を冠しているということは、そういう道を楽しく走れそうな気がしませんかね。僕はそんな気がしました。ネーミングって大事。
さて、ここからはホイールのことを細かく見ていきます。
まず、ホイールのスペックは
・前輪重量:715g
・後輪重量:860g
・全体重量:1575g
・リム重量:432g
・リム内幅:21㎜
・リムハイト:25㎜
・スポーク本数:24本
前後で1575gはビックリするほど軽いわけじゃあないけど、ワイドリムかつアルミリムだとそこそこ軽量だと思います。実測で1550gでした。ちなみにZONDA
DBは1675g、Racing ZERO
DBは1590gです。そう考えると結構頑張っているんじゃないでしょうか。
デザインは割と地味。
所有欲が満たされるかというと、あんまりそうではないです。
個人的にはこのくらいのデザインの方が自転車とのバランスも良くて好きですが。
リムもホイールも白と黒だけの落ち着いたデザインですが、リムのデザインは意外と主張するので、真っ黒のシックなものがいい、という人は嫌かもしれません。ただ、どのフレームにもある程度なじむデザインだとは思います。
以下、部品一つ一つ見ながらちょっとした説明を書いていきます。
・リムの話
リムメーカーなのでまずはリムの話。
リム自体のスペックをきちんと書いているメーカーってあんまり多くないんですが、きっちり書いている辺りにリムメーカーという感じがします。
リムハイトが25㎜でリム重量432gは正直めっちゃ軽いというわけではありません。
MAVICのMAVIC OPEN PRO UST
DISCだと430g、DTSWISSのRR421も同じく430g、RR411だと410g、あと、同じく海外通販で有名どころのHUNTだといくつかモデルがありますが420~450g程度。ただ、手組のディスク用ホイールを見ていると450g前後が多く、500gに迫るものも少なくないので、そう考えると軽量の範疇に入ると思います。
リム幅は21mm。
グラベル用のホイールだったら普通だけど、ロードバイク用なら広め。今まで使っていた旧Racing5
DBだと前述した通り17mm。ZONDA DBも17mm。新しいRacing5
DBだと2mm。他のモデルを見ても19㎜あたりが一番多そう。ワイドリム化が進む昨今においても21mmは広めの部類に入るんじゃないでしょうか。
ちょっと面白いのが、HEDが公表しているこのリムに最適タイヤサイズは28Cということ。つまりこのリム幅ですが、「グラベル用ではなく、ロード用ですよ」と主張していることです。ちなみにグラベル用だと内幅が25㎜くらいの物を作っています。
リム幅が17mmから21mmとなったことで、タイヤの幅ももちろんUP。ヴィットリアのcorsa
control 30cだと、実測で28.5mm→31.5㎜となりました。
そして現物を見てちょっと感動したのがこのジョイント部分。
リムは製造の時に一本のパイプをグイっとまげて円形にするわけですが、見て欲しいのがその時に出来るジョイント部の綺麗さ。
上の写真4カ所、リムベッドに点字のような点々があるのが見えると思いますが、そこがジョイント部。で、下の写真がそれを横から撮った写真。見ての通りジョイント部がどこか全く分からないんですよ。
旧Rasing5 DBだとこんな感じ。
フルクラムのロゴのステッカーで隠されていますが、うっすらと割れ目のようなものが見えます。
気にする人はジャダー防止だったりのために鉛貼ったりしてバランスをとっているみたいですが、僕はまあ、正直ホイールバランスなんて気にしていないので、正直、リムの継ぎ目が見えないくらい綺麗でも綺麗じゃなくてもどっちでもいいです。そう書くと「ならフルクラムでもいいじゃん」というツッコミが聞こえてきそうですが、リムのこういう細かい作りを見て、気分としてやはりいいなと思うのと、ホイールビルダー評が軒並み高い理由が垣間見えた気がして嬉しかったということです。
追加して書くと、リムの最外周部に盛り上がりが見えます。
上に挙げたビルダー評の一つにも書かれていましたが、これで末端まで剛性をキープしているようです。この辺りを見ると、単純な「軽さ」だけを追い求めるメーカーではない気がします。
・スポークについて
スポークは2.0‐1.8‐2.0のダブルバテッド。
メーカーはSAPIMです。
HEDのHP見ると、使用しているスポークはSapim Sprint butted round と書いてあるんですが、これがびっくり、こんな名前のスポーク、SAPIMのラインナップに無いんですよ。
一番近い名前がCX-sprintなんですが、これはエアロスポークで有名なCX-Rayの太いバージョンのこと。太いとは言ってもエアロスポークなので、roundに反します。
というわけで、実際にモノが来るまで何で組まれているか分からなかったのですが、来たものをデジタルノギスで実測してみるとおそらく2.0‐1.8‐2.0のダブルバテッド。おそらくと書いたのは、実測でブレがあり、しかも、SAPIMには端が2.18mmのForseと、2.0㎜のRaceという二つのダブルバテッドスポークが存在するからです。どっちかは分かりませんが、このどっちかだと思います。
前に使っていた旧Racing 5DBは、2.0-1.65-2.0のダブルバテッド。
さすがに見て分かるほど細いです。
当然、太い方が重たくなるので、旧Racing 5DBよりもスポーク自体の重量は重たくなっているはずです。
で、このスポークを使うのは、目先の軽さよりも「耐久性」「剛性」「乗り心地」を優先しているんじゃないかと踏んでいます。反対に旧Racing 5DBは軽さを優先しているんじゃなかろうか、と。
細ければ耐久性が劣るのと剛性が落ちるのは説明不用でしょう。乗り心地ですが、細ければ張る力が弱くなり、それを補うためにテンションを上げざるを得ないため、乗り心地が悪くなるそうです。この辺りはあまり詳しくないので間違っていたら指摘してください。
スポークは前後共に24本組。
リムブレーキからしたら多いけど、ディスクブレーキなら標準的ではないでしょうか。
・ハブの話
最後にハブの話。
ARDENNESという名前がついているのは自分が買ったRA Performanceのほかに、RA
PROというモデルがあって、この2つの違いはハブのグレードです。RA
PROの方が軽くハブの性能もいいみたいです。
ただ、前述したように後々の組み換えも視野に入れていることと、性能が良いと言ってもどのメーカーの何なのかもよくわからなかったので、リーズナブルな
RA Performance にしました。
実際の物を見てみると、HEDのロゴマークがついていますが、製造はどうやらNOVATECのようです。
実は、15㎜スルーアクスル用を注文したのですが、届いたのが12㎜用でした。色々あって自分で探すことになり、形が同じに見えたHUNTのMASON
x
HUNT用アダプターを買ったのですが、これが予想通りHEDのアダプターと同じものでした。
いろんな場所でHUNTのハブはNovatecではないかと言われており、これとアダプターが同じなので、かなりの確率でHEDもNovatecだと思われます。そもそもこれと同じような形のハブ、Novatecのラインナップにありますし。
HUNTのハブは爆音と言われたりすることが多いですが、個人的にこのホイールはうるさいまではいかないかなくらいでした。今まで使っているフルクラムやシマノに比べると、大き目でやや甲高い「ジャー」っという音がしますが、許容範囲内。
つまるところ、リムは自社製、スポークがSAPIMでハブはNovatecの、メーカーによる手組ホイールです。
実際、HEDは受注生産のようです。
こんな感じで作業ごと?にサインしたテープが張ってありました。
このほか、リムに窓ガラスに書けるような白色のインクのペンで自分の名前が書かれていました。唯一無二感は出ますが、中古で売るときは少し注意がいるかも。
・走ってみて
ばっちり、です。
もう、それだけ。
いや、もう詳しく書いても、走行感はなかなか伝わらないし、もう「気持ちいい」とだけ書くしかないんじゃないかなと、そんな気がしてます。
不満点だった乗り心地は狙い通りのばっりちさ。
いままで「ガツン!」「ガッッ!」と来ていた衝撃が全部「ゴン。」になる感じ。これがワイドリムから来るのか、あるいはスポークから来るのか分かんないですが(多分どっちも)、衝撃の角が取れマイルドになっていて、気持ちいいです。
巡行も、回せばスルスルスピードに乗っていきます。
Racing5
DBが「踏む」感じだったとしたら、明らかにこっちは「回す」方。
登坂に関しても「回す」感じ。
踏めば応えてくれるけど、どちらかというとシッティングで淡々と回すタイプの印象です。というか、「回す」レンジが広くなったという感じ。いままでは踏むしかなかった斜度の場所でも、回すことができるようになったと感じます。
加速も問題なく。
特にダンシングしたときのぐいぐい感が気持ちいいです。
下りの安定感もばっちり。
ワイドリムだからかもしれないけど、しっかり地面を捉えてる感があります。これまた気持ちいい。
もうね、ばっちりですよ。
それしかないです。
正直、この辺りは個人的な印象しかないし、フレーム及び個人の体格や走り方との相性もある上に、そもそも僕自身そんなに多くのホイールを使ったことがあるわけでもないので、万人が同じ感想になるわけがないと思います。なので「へーそんな感じなんだ」って思ってもらえれば、もう、それでいいです。(ブログで書いた意味)
同じようなスペックのアルミリムホイールのRacing5
DBから買い替える意味があったのか、注文してから不安で夜しか眠れない日々を過ごしましたが、自分に限って言えば、もう自信を持って言えます。
これは買った意味がある!
ブラインドでも分かると思います。
そのくらいの違いはありました。
・購入の諸々
HEDは岩井商会が代理店をやっていますが、アルミリムのシリーズは取り扱いが無いので、買うとなると本国の直販サイトから買うことになります。
購入ページはこちら。
「日本にも発送します」と書いている通り、発送も問題なく。
DHLで届きました。段ボールに入っていましたが、ちゃんと梱包されており特に傷や振れもなく。
納期ですが、前述のとおり注文があってから組むシステムみたいなので、少し時間がかかります。
自分が購入した時は「需要の増加のため、出荷用予定日は注文日から6~8週間です」と書いてあり、実際に出荷されたのは4週間とちょっとでした。コロナ禍で需要が多くなっているみたいですね。普段だと3~4週間のようです。
内容物は注意書きとリムテープ。
ちなみにロックリングは付属しません。
自分で用意する必要があります。タイプはセンターロック。フルクラムはAFSなのでリングは共用できません。
さて、「購入の諸々」の最後に、上に少し書いた15mmのスルーアクスルのものを注文したのに、12㎜のものが届いたという話を詳しく書こうかと思います。
上に書いた通り、間違ったアクスルタイプのものが届いたのですが、問題はその後の対応。
即座に出荷メールにあったアドレスに英語でメールを送ったのですが、1週間音沙汰なく。しょうがないのでHPにあったCONTACTページからメールを送り、また1週間音沙汰なし。仕方ないので、前述のとおりHUNTでアダプターを購入したのですが、その後メールがあり、15㎜のアダプターを送ったとのメールが来ました。
結局2週間待ちぼうけをくったわけですが、その間にメルマガが来たりインスタが更新されていたりと、ちょっとな、と思ったわけです。製品はよかったのですが、客対応はイマイチ。まあ、そういうことを覚悟の上で海外の直販サイトで買っているので、文句は言えないのですが、日本の常識とは違うなと思います。
こういうのを見てしまうと、代理店ってやっぱり大事だなと思ったりもします。
あと、これは余談ですが、ハブのアダプターの値段は、HEDで買うと4000円に送料2000円で6000円ほどかかりますが、HUNTで買うと1600円に送料500円で購入できます。いい商売してんな。輸送会社はDHLで翌々日には届きました。HUNTで買うのであれば、アダプターのバージョンは4season-v1です。多分いないだろうけど、もし困っている人がいれば。
・まとめ
客対応はイマイチな部分があったけど、製品としては大満足だったHED. Ardennes RA
Performance Discの話でした。
直販サイトしかない、知名度もそこまで、というメーカーで積極的に選択肢に上がってくるものではないかもしれないけど、個人的には大満足。もしディスクホイールで迷っている人の助けになれば、あるいはこの文章が機材好きの人の暇つぶしにでもなれば幸いです。
おしまい!
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