『京都春ライド』 

京都に引っ越した。

もう知っている人は知っているだろうけど、 就職を機に実家を飛び出し一人暮らしを始めた。それについて、まあ、大変だったり、上手くいかないこともあるけれど、ここはそういうことを書く場所じゃないので、いつも通り趣味のことについて書いていこうと思う。

今回は京都に越してきて一発目のライドを。

社会人となり初めての一週間を終えた土曜日。
とりあえず花脊峠へと向かった。

正直言うと、「家を出るのめんどくさいな」と思っていた部分もそれなりにあった。
それでも、家を出た。
その方が良いと、絶対良いだろうと思ったから。

趣味が義務感になってしまうと、その趣味の寿命はそんなに長くないというのは理解できる。
でも、何もせずに家にいるよりも、義務感でもなんでもとりあえず外に出て、見た景色や感じたことで救われたり、良かったと思うことがある。実際にそれは今までに何度もあった。

それに、なんでも「初めて」というのはハードルが高く、二回目になればその障壁は下がる。社会人になって初めて、京都に住み始めてから初めて。多少無理にでもそんな「初めて」を今のうちに終わらせておいた方が良いと、そう思ったから、ちょっとめんどくさいと思いながらも家を出た。

前述のとおり向かったのは花脊峠。
特に理由はないけれど、まあ強いて言うなら「良く聞く名前」だったから。





市街地を抜け、鞍馬寺の前を過ぎて本格的な登りへ。
と、その前に実はこの日は携帯を忘れていた。
登りの前のコンビニで気が付いたのだけど、大きな問題ではない。
一応サイコンにルートは入れてきているし、国道を通れば帰れないこともない。
そういうわけでそのまま峠道へ進んだ。



杉木立が美しい峠道。
ほらな、来てよかっただろ。
なんて実際に声に出して呟きながら進んだ。



花脊峠は斜度がそれなりきつい峠だった。
最近引っ越しの準備やワクチン接種なんかで全然乗れていなかった体に重くのしかかる斜度だった。自転車は乗った分だけ乗れるようになるし、乗らなかった分だけ乗れなくなることをしっかり思い出した。


峠の登り切り手前のカーブでは伐採跡だろうか、景色が開けた。



そんなこんなで登り切り。
ここから少し先に行き、旧道へ。



旧道の峠には祠があった。
ずっと前からここにあったのだろうか。
新しく付け替えられたように見えるその祠の外側や屋根は未だにここが忘れ去られた場所でないことをはっきりと示しているようで、いいなあと思った。




峠は気持ちのいい風が吹いていた。
その風に吹かれて、少しゆっくりしていこうと思った。

そう思っていたのだけど結局、少しのつもりだったけど30分も経っていた。
まだ冷たい春の風に当たって体は冷えたけれど、それでもいいと思えた。
一気に新しい環境に置かれ、フライパンにこびりついた汚れみたいに家で何をしても拭いきれなかったストレスと不安と、それからストレスとストレスとストレスとストレスが体温と一緒にどこかに運ばれていった気がした。

峠には悲しい落とし物も…。


峠からは芹生方面へ下った。



スパイクタイヤが2.1インチだったからか、700×38cが細く見えてしまう。グラベルタイヤもそのくらいの太さの物がやっぱりほしい。最近は鳴りを潜めていた自転車関連パーツの物欲もしっかり復活した。多分自転車はペダルを回すたびに物欲がたまるようにプログラミングされているんだと思う。

芹生方面に下り、舗装路に戻ってからは北上。
川沿いの道を下った。



それにしても川が綺麗だと思う。
千葉でここまで綺麗な川があった記憶があまりない。
山が高いからだろうか。




こういう何でもない、でも楽しい道が好き。
こういう道をずっと走っていたい。



下黒田まで進むと春日大社とあったので参拝した。







黒田の百年桜という立て看板のあった立派な桜はまだ咲いていなかったけれど、境内には他の桜の木が咲き誇っていた。


そのままR477を西へ進んだ。
何となく雰囲気は四国のR439の高知県あたりに似ているなと思った。
当たり前だけど、関東の感じじゃないな、と。





途中、桜が綺麗な場所があったので写真撮影。
桜はなんだかんだ言って好き。
他にも綺麗な花はあるはずなのにどうしてなのだろうと毎年のように思うけれど、いまだにその答えにたどり着けたためしがない。この日も一日中考え続けていたけれどまったくわからなかった。それが分からないから魅力的なのかもしれない。



昼食はウッディー京北にて。
Twitterで名前だけ見たことがある場所だったから、「おお、ここが噂の…!」という謎の感動があった。

昼食後はR477から桂川沿いに走り日吉方面へ。



栃本で桜並木があったのでわき道に逸れながら進んだ。

R477に別れを告げて日吉ダム方面へ。







R477は悪い道じゃなかったとは思うけれど、今の自分にはこんな一車線の交通量がほとんどない道を走りたい気分だったからこっちの方が印象に残っている。



途中ふらふらとわき道に逸れつつ。




自走で帰ることも一瞬頭によぎったけれど、乗ってなかった分きっちり弱くなっていたのは体だけでなく心もだったようで、疲れに相まって向かい風もきつかったので八木駅から輪行に決定。


スマホも忘れていたのでどの程度の時間で電車が来るか分からなかったけど、そこそこ本数があって一安心。地元なら大学生で自転車を始める前に中高で電車に乗る機会があるから、路線図や待ち時間とかが何となく予想できるけど、その知識も完全にリセットされたのだなあ、と今更ながらに思った。



今回のライドは花脊峠などなど、それなりに楽しめる区間もあったので悪くなかったけど、でも自分の本当に走りたいと思っていた場所を走れたかというと、それは残念ながら違った。それは諸々の経験値が一気にレベル1になってしまっているからだろうと思う。

でも、じゃあ家でもっとじっくり調べていたほうが良かったかというとそれもまた違うと思う。やっぱり家を出てよかったのは間違いないと断言できる。

結局のところ、いかにグーグルマップで詳細に調べたり、ブログを見たりして想像したとしても、それはどこまでいっても想像の産物にすぎず、家をでて、自分で体験して「ああ失敗した、こっちじゃなかった」なんて思ったり「うああ、当たりだこの道」なんて感じたりしながら、少しずつ、少しずついいルートが引けるようになるのだと思う。だから、たぶん次はもう少しピントの合ったルートが引けるようになると思う。

それに、体重と共に心も軽くなったのだから、それだけで家を飛び出した意味は十分あったのだと思う。

さて、次は何処へ行こうか。
社会人って休みの日を次の土日まで待たなきゃいけないなんて信じらんないぜ。

おしまい。




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