起きて、天気予報を見る。
ここ数日のルーティーンとなっていた。
今日も晴れるのは、今いる弟子屈から釧路方面。
いろいろと書き込んできた地理院地図を見ながら朝ごはんを食べ、この日のルートを決定した。この、出撃前に手持ちのカード(地図)を床に広げて天気とにらめっこしている時間が結構好きだったり。
この日は輪行無しで宿からそのまま走り出した。
時刻は確か7時を回ったくらいだったと思う。
この日はよく冷えていた。
気温計の赤い液体は-20℃のところまで下がっていた。
北海道の豪雪地帯で宿のヘルパーをしていた父が「北海道の冬は寒いんじゃない、冷たいんだ」と言っていたけれど、その言葉の意味するところがよく分かる空気がパキンと鳴るんじゃないかと思うなほど凍てつく冷え方だった。
弟子屈の宿を出発し、まず最初は900草原へ向かった。
900草原までは登り道。
登りは、足がつらい。
体力や疲労の話ではなくって、「冷たさ」の話。
登りは体が温まるからそこまで寒くないかと思いきや、足先がかなり冷たくなる。ヒルクライムでは、どうやったって足に体重をかかってしまうので、足の裏を中心に血行が悪くなって、それがそのまま足先の冷えに繋がってしまう。基本的にどうすることもできないけど、「あれ、小指生きてる?」なんて思う瞬間もあるにはあった。
雪でふさがれた道…。
900草原の展望台へ向かおうとすると、そこに道は無かった。
これ程分かりやすい冬季通行止めもない。
夏に来た時に、ここから先の展望台の景色が良かったのでそこへ向かおうとしたけれど、これは残念。とはいえここからの景色も十分に素晴らしいものだった。
通り抜け出来ないので一旦下ってリルート。
弟子屈の町まで戻ってから、釧路川の右岸沿いに走る道を走った。
900草原から今走っている道に抜ける道は、写真の真ん中あたりの雪がこんもりなっているところ。これまたわかりやすい冬季通行止め。夏に来た時の記憶と、ポツンと立つ街灯だけがそこが道であることを伝えている。
朝は全てが白くなる。
釧路川から昇った水蒸気が凍ったものがキラキラと輝いていた。写真では上手く伝わらないかも知れないけれど、本当に、本当に綺麗だった。
「気温が低くなればなるほど綺麗に見える」と地元の人に教えてもらったけれど、僕が北海道にいる間だとこの日が一番綺麗だった。
反対に言うと、この日を境に北海道はゆっくりと、でも着実に春に向かっていくのを感じた。この日が2/4だったと言うと、そんな早くに北海道で春を感じるなんて、と思うかもしれない。実際北海道に行く前の自分ならそう言うだろうと思う。でも、日が進むにつれてだんだんと朝の空気の張りつめ方が緩んで行くのを、微かでもはっきりと肌で感じた。
旅とは、そういうものを感じる時間のことを言うのだろう、と僕は思う。
磯分内駅手前で十字路を左折。
釧路川に別れを告げて農場の広がる丘陵地帯へと向かった。
先に書いておこう。
この辺りは素晴らしかった。
アイスバーンとほんのり雪の乗ったアップダウンの道を、牧場を横目に際限なく走る。
時々開けた、と思えば遠くには冠雪した山々が連なり、近くを見れば白銀に光る雪原が広がる。豈に楽しからずや。
磯分内周辺のこの道路は、釧路川に対し西側にぐるりと半円を描くように進んでいる道だった。適度なアップダウンのあるこの道の通り進んでぐるりと釧路川まで戻り、さらに釧路川を渡って東側へと進んでこの日の後半戦の行程へとペダルを踏んだ。
釧網本線を渡り、直線ストレートを登り振り返ると素晴らしい景色。
昼手前の時間帯になると、大体気温は-5℃程度。写真の通り南向き東向きの路面は雪が溶けてしまっている部分もそれなりにあった。
さらに進んで道道1040号線に合流。
所謂「何もない道」で気持ちいい道ではあったけれど、残念ながら雪もない道だった。ここは夏に来よう、と思った。
道道1040号線に合流して数キロ。
多和平という場所への入り口を曲がった。
多和平を知らない人に説明しようかと思ったけれど、写真を見てもらった方が早いので、とりあえず、多和平に至るまでの写真と多和平の写真を置いておこうと思う。
多和平は360度、どの方向を見ても広々とした景色を見られる大牧場。
ありきたりだし、あまりこういう一言で括るのはあまり好きではないけれど、いわゆる北海道らしい雄大で広々と開放的な景色が見られる場所だと思う。
「あれはどこどこ方面」「こっちはこの山が見えるからどこどこだ」なんて、場所を無意味に確認したりしていた。頭の中の地図と、今見ている場所とを結びつけて脳内解像度を上げていく作業というのは、腰を据えて「面」で土地に向き合っている感じが色濃く感じられて、それだけで楽しい。こういう形式の旅の醍醐味の一つ。
展望台手前の広場はそれなりに雪があって、一番深い場所で脛までずっぽり埋まる場所もあった。ゲイターを付けていて良かったと心底思った。ここで足が濡れてしまっては敵わない。
見切れている右足はそれなりに埋もれている。
遮るものは全くないから当たり前のことなのだけれど、多和平は風が強かった。体感気温はもちろん下がり、あまりに良い景色だったのでゆっくりしていこうかとも思ったけど、その気持ちがぺしゃんと音を立てて無くなるくらいには寒かった。
多和平からの下り。
こういう道に来たかった。
これが見たくて、冬の北海道に来た。
遠くに見える右側の山が西別岳、左はカムイヌプリこと摩周岳。
多和平の風に吹かれ体は冷えたけれど、みぞおちの辺りからじんわりと暖かくなるような「これが見たかった。来てよかった」という思いに包まれながら下った。
道道1040に戻り、さらに北東にすすんでR243に合流。
ここからは宿のある弟子屈市街地へ戻るだけ。
前の記事にも書いたけれど、やはり国道は楽しくない。
写真も一枚も撮らずに進んだ。
というわけで、途中で再び裏道へと潜り込んで帰った。
こういうのでいいんだよ。
こういうのがいいんだよ。
こういう道は探さないと無い。
— Tomy (@Tomy_viajar) February 4, 2022
探すと意外とある。 pic.twitter.com/XFMeWrG0MP
そういうことです。
明日へつづく。
2日目はこちらから。
実際走ったルート
走行距離:74㎞ 獲得標高:877m
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