『兵庫初夏グラベルライド』福崎~朝来

兵庫にどうやらロングダートがあるらしい。
ツーリングマップルを見ながら気が付いた。

これと、これと、この道足したら10…20…いや……30㎞近くか…?
これは結構な砂利道が走れるんじゃないか。
これは行くしかない。
というわけで早速行ってきた話。

ちなみにこれは個人的な意見だけど、作ったルートは早めに使う方がルートを引いた時のワクワクをそのままライドに乗っけて行ける感じがあって好き。食べ物は熱いうちに食べる、みたいな。

スタートは福崎駅。
京都からは新快速で姫路駅で向かった。
新快速の偉大さを関西に来てから身にしみて感じている。
行動半径がめちゃくちゃ広くなる。
米原辺りから姫路まで総武通勤快速が常時動いているような、そんな感じ。
姫路駅からは臙脂の車体が可愛い播但線で移動。


さて、福崎駅前に出ると、ぷくぷくと空気の上がる円柱のそれなりの大きさがある水槽があった。
「何だろう」
多くの人が思う疑問を僕も抱いた。
何が見られるんだろう、そう思って見ていると…

いや、怖いんですが。
普通に。

子供だましの作り物などではなく、明らかに財力と労力をかけられたこの河童をみても分かるように、実は福崎町は妖怪を一つの観光資源として打ち出している。そもそもこの福崎町はあの柳田國男を生んだ町なのである。この駅に出てくるこの妖怪は河童の河太郎(ガタロウ)と呼ばれており、この河太郎は柳田の著書『故郷七十年』に出てくる河童のガタロがモチーフになっているらしい。

辻川あたりでは河童はガタロというが、ずいぶんいたずらをするものであった。子どものころに、市川で泳いでいるとお尻をぬかれるという話がよくあった。それが河童の特徴なわけで、私らの子ども仲間でもその犠牲になったものが多かった。毎夏一人ぐらいは、尻を抜かれて水死した話を耳にしたものである。
(柳田國男『故郷七十年』)

ちなみに以上は帰って来てから調べて知ったこと。
あまりに福崎駅前のインパクトが強すぎて調べてしまった。駅前の河太郎のほかにも至る所に妖怪らしきものいるらしく、今度はそれを見に行ってみようかなんて思ったりするいる自分がいる。まんまと観光の思惑に乗ってしまっている。妖怪観光恐るべし。


さて、話をライドに戻そう。
福崎駅を出発し、林道へ向かう。
その前にコンビニへ。
ここ以降、一軒のコンビニもないのだから。
そう一軒も無いのだから(大事なので二回書いた)。

福崎より数キロ東へ進むと林道の起点がある。



なんとわかりやすい青看板。
このブログを読んでいる100人のうち、この看板を見ると110人が右へと吸い込まれるという。(弊社調べによる)



林道に入ると緩やかに登り始める。
基幹林道らしく終始右左は開けた明るい道であった。


路肩を見れば砂利道であった痕跡みたいなのが見える。
いつまでもあると思うなその砂利道。
舗装も新しめだったから、いつかは全線で舗装化されてしまうのかもしれない。



舗装路を数キロ登ると砂利道が始まった。
バラスの撒かれた人工的な砂利道。
それなりに締まっているけれど、調子に乗って飛ばしていると砂利が上滑りするような道であった。


今回から初めて本格投入したXCタイヤ。
VITTORIA MEZCAL 27.5×2.1

2.1インチとなると太さは52㎜。定義がよく分からないけれど、多分この太さだとグラベルというよりモンスタークロス。グラベルレースのレギュレーションが48㎜とからしいから、それ以上は多分モンスタークロス、というのが個人的な認識。


「2.1インチタイヤだと、この道では役不足では?」という疑問もあると思う。確かにまあ走るだけならどう考えてもオーバースペック。自分でもそう思う。でもかなり楽しく走れたので、締まった走りやすいダートであってもMTBタイヤは結構アリという印象を受けた。

「走れる」と「走って楽しい」はちょっと違うと個人的には思う。

そして、その「走って楽しい」の範囲は人それぞれなので、これを読んでいる人が自分の楽しい範囲と同じかどうかは知らないけれど、僕の場合は700×38cのグラベルタイヤよりも2.1インチの方が「走って楽し」かった。






笠形林道は3つに分かれており、また途中途中で舗装路が挟まる、というよりも舗装路がメインでそこに未舗装路が挟まるような形になっている。一番長い未舗装区間は県道145号線から34号線の手前までの区間。それより北は全て舗装路。それ以外の場所を合わせて未舗装区間10㎞強。
そして、全線を通じてずっと開放的な林道であった。











途中には展望台も。
緑が深い季節になったとしみじみ思う。






明石海峡大橋展望駅より。
なぜ「駅」なのだろう。

「駅」という言葉は、鉄道が普及するまでは基本的に人馬の継立地であり宿泊施設のある場所、といった意味であって、たとえば、律令制では「駅制」という名で陸上交通制度が整えられている。その意味では「駅」が鉄道駅を指すようになったのはかなり最近のこと。だから「道の駅」なんて呼び方はある種ぐるっと回った感のある言い回しなのかもしれない。

駅長莫驚時変改 一栄一落是春秋

時が流れれば、それが指す意味も変わる。

それはそれとして、林道の途中の地点を「駅」として称しているのはなんでなのかは気になるところ。


あの道はなんだろう。
気になる。





アップダウンをこなしながら進むこと数時間で笠形林道も終点。
ここから先は県道367号線に合流しそのまま北へ。

ここはじわじわと登るタイプの道だった。
正直、タイヤの重さを最も感じるのはこういう道。
急坂よりもずっと「このタイヤ、重てえなあ」と思った。


そのまま北へ北へと進み、動物避けのゲートを開け本日二本目の林道へ。
一本目の林道よりもがれていて斜度もキツイ。
ゴロゴロとした石を踏みつけながらひたすら進む。




登り切り付近では斜度もゆるくなり、路面も走りやすい締まったダートに変わった。



登り切りでは、大き目の石が転がる林道にはあまり似つかわしくない立派な石に「歸去来」の文字。
「帰去来」の意味は「故郷に帰るために、ある地を去ること」だけれど、何故その文字が刻まれた石碑がここに。
理由はよく分からなかった。


道が下りに転じると路面状況は立派な石碑と似つかわしくないもので、つまり、それなりの斜度と荒れ具合の道に再び戻った。なんなら登りよりひどく、ところどころ法面が崩れていた。言うまでもなく、MTBタイヤの真価を発揮した下りだった。





川沿いまで下ると杉林を抜ける道に。


木漏れ日が素晴らしく、どこぞのメーカーのプロモーションビデオで出てきそうな素晴らしい雰囲気。味わい深さと雰囲気はこの道が一番好きだった。こういう道だと杉枝によるリアディレイラーへの攻撃を気を付ける必要はあるけれど。

一応残基(ディレイラーハンガー)は持ち歩いているので多少の心理的余裕はあるものの、本体が逝ってしまったら試合終了なので。



さて、ここからさらに北へ進みダムを過ぎると本日三本目の林道に。


中国山地の谷間にある町。




こちらも一本目と同様バラスの撒かれた高規格な砂利道。

ただ、景色のレベルでは一番上の林道だった。
それはこの日という意味でもあり、今まで走ったことのある林道の中でも最上位のクラスであったという意味でもある。



が、正直に言うと、この林道の最後の登りがかなりキツかった。


あそこまで…行くって……マジ…?

基本的にどこまで行くか見えた時にはテンションが上がるタイプの人間だけれど、さすがにこの時は本当に「…………え…マジ?」という感じだった。タイヤ自体が太くてなって路面抵抗が大きい上に重くてしんどいというのもあるけれど、そもそもこの日のルートの強度は高め。単純に疲労が溜まっていた。



斜度は大体10%。この斜度になると砂利道では立ち漕ぎはできない。自分は割と立ち漕ぎを混ぜながら登りたいタイプなので、疲労が溜まった中、シッティング固定で上るのは結構辛かった。休憩を多めに取りながら、最悪無理なら引き返して下って播但線だなあ、などと思案しながら進んだ。

この近くでは熊が出る。
さっき会ったオフ車乗りの人がそう言ってたことをこのタイミングで思い出す。
こんなところで一人夜を迎えたら、なかなかにエクストリームが過ぎる。




先にあげた写真の通り、この道はどこまで行くか見える。
つまり、それだけ景色が良いということでもある。
下から見えるのだから、上からも見えるということである。

遠くからも見えていた登り切りに到達するころには、辺り一面黄色のベールがかかる時間になっていた。
登り切り付近の景色は本当に素晴らしいものであった。








高規格な林道にふさわしく、登り切りには立派な石碑。


ここからは下るだけ。
持っていた800mの位置エネルギーをすべて吐き出し、砂利道を下った。
抜重しながら進もうと思っていたが、体力の消耗が激しくかなり適当になっていた。それでも問題なく走れたのは、間違いなくタイヤの太さのおかげ。登りの辛さを我慢すれば、下りの安全マージンはたっぷりお釣が貰えるほどとれる。


ちなみに下りも景色は素晴らしく。




県道に合流する最後まで砂利道。
大変素晴らしい林道だった。


お昼もまともに食べていなかったので、ラーメン屋さんにふらふらと入った。


美味しかった。
あまりに美味しくてそれ以外の感想が無かった。

駅へ向かう途中京都府に入った。
そうか、ここも京都か。
正直位置関係が頭に入っていないので、なんだかびっくりした。
まだまだ関西に来て3か月。
少しずついろんなところを知れたらいいなあ、などとそんなことをぼんやり考えながら、山陰本線に揺られながら帰った。


「限界かなあ」とか書いてましたが、割とホントの意味で限界でした。
これ以上は無理。
最後までしっかり楽しむならもう少し強度面でイージーにする必要がありそう。
あるいは自分を鍛えるか。
いずれにせよ、もう少しいろいろと練る必要がありそうだな、と。

装備が変われば、必要となる力も変わる。
そういうことを考えるのもまた、自転車趣味の一つの楽しみ方だったりすると思う。
さて、次はどうしようか。

おしまい。


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