『伊賀~松阪の晩夏サイクリング』 香落渓~曽爾高原~伊勢本街道

 伊賀方面から伊勢方面へ行ってきたので今回はその記録。
この辺りは全くの未到エリアだったので未知へのワクワクも込めつつ。

スタートは伊賀上野駅。
京都からだと、滋賀県の草津線で三重県の柘植駅へ行き、そこから関西本線へと乗り換えて南西方面に向かうため、逆「く」の字を書くような輪行経路。まだまだ関西の鉄道地図って全然頭に入っていないから、どのくらい時間がかかるかも、どこから向かうのかもよくわかっていなかったり。

電子機器で調べられる世界、万歳。

あと、行ったことない場所を走る電車の中で、マップの現在位置見るの好き。そうやって現在位置見ながら「ああ、こことここがここで繋がるのね」みたいに脳内地図が埋まっていくのも好き。

前述のとおりスタートは伊賀上野駅から。

忍者と芭蕉で有名な街。

コンビニで水を補給。
もう9月も半ばだというのに、すでに日は高く、秋の気配を吹き飛ばす勢いで強い日差しがサングラス越しに差し込んでいた。今日も暑くなる。水は多いに越したことは無い、と直感的に感じた。

R425で南下した後、R25号で南西方面へ。




この波多野街道こと国道25号線、二桁国道だけれど交通量も道の感じも二桁国道っぽさが全くない。どうやら並行して走る名阪国道(こちらも国道25号線)が大動脈となっているようで、こちらには車はほとんどなく、気持ち良く快走することができた。 


名張川を越えるタイミングでR25に別れを告げ、川沿いの道へ。

こちらはこちらで快走路。
そのままの勢いで名張の町を越え、さらに川沿いを南下。


シンプルに暑い。



急に視界が開けると、そこにはコンクリートの壁。
青蓮寺ダム。


この青蓮寺ダム、街との距離があまりに近くて驚いた。
目と鼻の先に名張市街地がある。

これは関西に来てからよく思うことだけれど、街と山が近い。
いや、関東平野が広すぎるだけなのかもしれない。
そんなことを思う景色だった。



青蓮寺湖畔にかかる橋。
この辺も良き。


さて、ここからが今日のハイライトその一。

香落渓。

てっきり「こうらくけい」と読むのかと思っていたら、まさかの訓読みで「かおちだに」。初見殺し。

そんなここ香落渓は、安山岩が川の流れによって削られ、かなり深い峡谷を形作っている。


ここまでくると本当に壁。
圧迫感と空の狭さ、遠さが凄い。

「明らかにこれに川の流路を遮られているだろ」と思う巨大な壁というべきか、そんな存在感のあるやつらが、そこかしこにある。川が曲がるということはすなわち、川沿いにある道も曲がるということで、そんな直角に空に延びる木々と岩でできた壁にぎりぎりに近づいては、細い峡谷を縫うように曲がる。そんな道だった。

今まで行ったことのあるどの渓谷よりも「壁感」が凄かった。



香落渓は人気のツーリングスポットらしく、日曜日ということも手伝ってバイクに数多く抜かされたし、自転車乗りもそれなりに多かったけれど、なるほど納得。これを見ながら走るのは、かなりの非日常感があって面白い。






こちらは紅葉谷周辺の写真。
写真に写っている部分、よく見ると紅葉が多い。
紅葉の季節は綺麗だろうなと思ったけれど、実際そのようで、関西だと有名な紅葉スポットとして混むらしい。それならスルーかな、と思ってしまう性格だったりする。



曽爾村に着く頃には峡谷を抜け空が広くなり、美しい田園が広がり始めた。曽爾村は日本でもっとも美しい村連合の加盟村でもある。

ちょうどお昼どきだったので、近くのカフェに。




ドライオムカレーにカツサンドにコーヒーゼリー。

お店の主人と地元の人の話をしていたので耳を傾けると、アナグマによる被害についてとか、柿の実り具合だとか、そういう話をしていた。その話ももちろんだし、会話の途中に挟まれる「〇〇さかいに、」とか「〇〇やし」みたいな言葉のイントネーション一つ一つに非日常を感じていた。

さて、その地元のお客さんが帰ったあと、自分にも話が振られて、自転車で来たことや香落渓を通ってきたことや担いでいたカメラのことなんかの通り一遍のことを話したあと、曽爾高原の話になった。

ご主人曰く「曽爾に来たのに、曽爾高原に行かないのはもったいない」、と。

そう言われたら行くしかない。
もともと行く予定はなかったけれど、足の調子は悪くない。
時間も問題なさそう。
というわけで午後一発目は曽爾高原までのヒルクライムに。

曽爾高原までのヒルクライムは、約4㎞で300mほど駆け上がる。
平均斜度は8%に迫るほどで、それなりに高強度の登り。
急がず焦らず淡々と。

最近は膝を痛めてからこういう登りは避けるようにしていたので、久しぶりしっかりと登る道。「やっぱり自転車乗るなら、こう来なくっちゃ」と思いつつ、「暑いし、しんどい」と悪態もセットでついてくることもしっかり思い出した。

曽爾高原までの登りでは視界は開けない。
駐車場に自転車を置いて、歩いて数メートル。


「どん!」っと急に空が開けて、この景色。



ハイキングルートのようになっていたのでとりあえず上を目指して歩くことに。





いちめんのくさはら
いちめんのくさはら
いちめんのくさはら
いちめんのくさはら
いちめんのくさはら
いちめんのくさはら
いちめんのくさはら
かすかなるむしのね
いちめんのくさはら

―――風景














秋の足音聞こえる晩夏にふさわしい景色がそこには広がっていた。

遠くに立ち昇る入道雲が、まだ夏であることを示しながら、それでも近くのススキは穂を伸ばし、遠くに蝉の声は聞こえるものの、足元からは秋の虫の音が響く。照り付ける日差しは夏のそれ。でも、吹き抜ける風は秋のそれ。


曾爾高原、大変良いところでした。



ちなみに、ススキが色付き金色の野辺が広がるころには、大変込み合うらしく道中が渋滞するほどだそう。残念ながら、渋滞ヒルクライムをする趣味はないし、土日の錦市場よろしく混みあう草原を愛でる趣味も無いので、このタイミングで来られてよかったと思った。

曽爾高原を後にした後はそのまま東へ。
この道がなかなか素晴らしくて、コンクリ舗装の斜度が結構きつくていろいろ散乱しているなかなかになかなかの道。


迷い込んだ、というべきか。

そのまま走ると国道368号線に合流。
この国道368号線、ツーリングスポットとして大変良い道でした。


①景色が良い
②信号が少ない
③交通量も少ない
④歴史的にも面白い

ざっと挙げるとこんな感じ。

まず景色。いわゆる「絶景」みたいなある種、曽爾高原系の景色の良さではない。だけれど、写真にあるように視界が広く、遠くに山岳が見えてとっても気持ちが良い。そういう類の景色の良さ。SNS映えするわけではないけれど、それでも「ああいい景色だ」としみじみ思える良さ。

信号・交通量が少ないのは、言葉の意味そのまんま。
走りに集中できるし、快速ツーリング(当社比)が可能(写真が捗るので実はそこまでペースは上がらなかったり)。

歴史的というのは、ここR368が伊勢本街道と呼ばれていることからも分かる通り、古くから整備されていた道である、ということ。広々とした2車線の区間からは街道筋の面影は読み取れないけれど、それでも道の両側に広がる家々を見れば街道筋の香りがする。









こういう道標が道中にあると、なんかグッときちゃう。



この辺の石垣もまた、往時を偲ばせてくれたり。


仁柿峠付近は道が急に狭くなり、旧道っぽさが出てくる。
こういうのがあるのもツーリングにうってつけだと思う理由の一つ。




峠を抜けると再び広々2車線道路。
快適ツーリング道路。




櫛田川にぶつかるタイミングでR368は南へと向かうのだけれど、今日の最終目的地は伊勢ではなく松阪なので、後ろ髪ひかれながら別れを告げてR166で松阪へ。


松阪の市街地に着く頃には山際に日が隠れ、夕闇迫る時刻になっていた。
この時期から、一気に日が落ちるのが早くなるよな、と毎年のように思う。



晩御飯は食べていくか悩んだけれど、美味しそうな駅弁があったので、そっちに。こういう機会がないとこういうのもなかなか買えないので。

というわけで、これにておしまい。

思っていたよりも伊勢本街道に心惹かれたので、次回は大和の国から伊勢の国まで走ってみようかな、と思う。きっとあの道、季節によってまた違う顔がある気がしてならない。ツーリングに向く道というのは、そういうものだという気がする。次はどの季節に行こうか。

おしまい。






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