合宿の苦楽(苦の方が多かったような…)を共にした、多分一番気を遣わず走れる相手。
大学サイクリング部の合宿で、毎日複数人で走り続けて、毎日ご飯作って、毎日テントか星空の下で寝て、毎日早朝に起きて、なんて生活をしていれば、普段見えないところも露わになるし、そもそも隠しきれるもんじゃないもんね…。
この日のルートはこんな感じ。
僕は大垣駅から。
関東から来る彼は岐阜羽島駅から。
関西に来てから驚いた一つが岐阜の近さ。
前に、同志社との合同合宿(うちのサークルは同志社サイクリングクラブと毎年合宿をしている)の開催地はどこがいいかみたいな話をしたときに、
「長野はどうですか?」
「えー長野はいきにくいわー」
「じゃあ岐阜はどうですか」
「え、岐阜まで来てくれるん?」
という会話をしたことがあって、千葉に住んでいた当時の僕にはその距離感覚が全然ピンと来なかったのだけど、京都に住み始めて「なるほど」と思った。確かに岐阜は行きやすいし、長野は距離以上に距離を感じる。
今回は僕がルートプランを立てたので、岐阜まで来てもらうことにした。
そんなわけで揖斐川の途中でY²と合流。
合流してからは揖斐川沿いを北上して、さらに根尾川に乗り換えてひたすら北上。
彼と僕とはペースも大体同じくらい。
お互いの感じも分かっているのでストレスフリー。
走行ルールもWCCの頃のまま走れるのでシームレス。
「この場面は前の人がここを確認して、後ろの人はここを見る」みたいなことが、阿吽の呼吸的にできる楽さがある。
Y²のタイヤは、ダボスとパナレーサーのタッグ、GRAVEL RUNNER。センタースリックで、舗装路の転がりも良いとは本人談。触ってみるとサイドノブも思ってたより柔らかめで砂利道でも良さそう。
R157はサイクルツーリズム的な道でもあるらしい
道の駅を過ぎて、川を渡る辺りから道が狭くなる。
大型車通行不能の文字の通り、狭隘路かつ羊腸の如き曲がりくねった道が続く。
とはいえ、自転車からしたら特に問題はなく。ただ、国道でかつ休日に訪れたからか、特に序盤はこういう山道にしては車が多く、ブラインドカーブもあったので予想より怖かった。加えてガードレールがないからか、対向車も後続車も僕らのすれすれを走り去っていくので、それももちと怖かった。途中から、車来たらほぼ毎回止まって抜いてもらってたレベル。
その辺を考えると、自転車乗り的に走りやすい、とはちょっと言いにくい印象だった。
残念ながら、こういう国道は林道感覚とはちょっと違う。
(林道の方が好き)
川はどこまでも透き通る。
本来は途中から分岐して、R157の東側を走る猫峠に向かうつもりだったけど、残念ながら通行止めの看板。
そのままR157を進んだ。
温見峠は標高1000mちょっとに位置する。
とはいえ川沿いをだらだと登る区間も多く、斜度は終盤を除いて厳しいところもない走りやすい峠だった。峠に近づくにつれ交通量も減り、走りやすくなった。最初からこうだったら、と心の隅で思った。
訪れたのは11月初め。
そう、紅葉の季節。
紅葉は標高500m以上、600mを越えると色鮮やかに映えるようになった。
落葉の絨毯。
秋だ。
時々景色が開ける。
ガードレールは無い。
それが良い。
それで好い。
山の頂上と目線が近くなり、視界における空の面積が広くなる。
峠が終わりに近づいてる証拠。
夕方の空気が流れ込むころ、温見峠に到着した。
空が抜けるようにどこまでも高く、それで秋とわかる良い天気だった。
峠から岐阜側を望む。
山が遠くまで、遠くまで広がる。
どこまでも秋。
眺望が良い峠が本当に好き。
温見峠は岐阜県と福井県の県境でもある。
それにしても県境峠がこんなにワクワクするのは、なんでだろう。
少しゆっくりして、秋の風に体が冷えそうになったタイミングで福井側へ下った。
景色が良いのは福井側。
川沿いに広めの柔らかな谷間が広がる。
標高からもっと急峻な山々を想像していたけれど、思っていたよりも優しい谷間が印象的だった。紅葉はもう、何も言わなくていいと思う。
これから行く道が下に見える。
この上なく楽しみ。
一気に標高300mほど吐き出すと、先ほど見えていた谷まで降りられ、そこからは緩やかな川沿いを走る道に転じる。
振り返ると橙を帯びた山々が見上げる。
福井側の下りは、途中までは隘路だけど、さらに下りダムに近づくと二車線の高規格道路に変わる。面白いのは、福井側は全然交通量が無かったこと。峠からダムの辺りまで30㎞ほど走って、片手で数えられるぐらいしか行き会わなかった。
ダムを越えるタイミングでグッとさらに標高を吐き出し、越前大野へ。
ここまでくれば後はもう少し。
真っ暗になるか、宿に着くのが早いか。
この時期は大体競争になる。
暗くなるころに本日のお宿に到着。
とってもおしゃれ。
この日泊ったのは古民家を改装したゲストハウスなまけもの。
それを紹介するのは後にして、とりあえずお風呂とごはん。
宿にシャワーはあったけれど、ゆっくり浸かるなら銭湯の方が良いよねってことで近くの銭湯へ。走るペースだけじゃなくて、この辺の感覚が近いのも彼と何度も走る理由だったりする。
ご飯は地元の食堂へ。
ボルガライスというオムライスにトンカツ乗っけてデミグラスソースをかけた料理がB級グルメ的な地元のご飯らしく、それを食べた。
その後は再び宿へ。
濡れた髪の間を、少し冷たい夜風がするりと抜けていく感覚が非常に好き。
銭湯を出て、宿に戻るまでの時間でしか感じられない旅情が絶対にある。
宿でご飯もお風呂も完結するのは楽だけど、この愉しさを感じるために泊まることがあっても良いと、僕は思うんだ。
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