『春の徳島~高知海岸線ライド』 1日目 日和佐~宍喰

関西から四国は近い。
それは地理的にもそうだけど、気持ち的にもそう。
関東から行くときは「行くぞ行くぞ行くぞ!」って気持ちじゃないとなかなか辿り着かないアクセスの悪さがあるけれど、関西からだと「そうだ四国に行こう」ぐらいのテンションで行ける。

というわけで、四国へ。

初っ端「関西から四国は近い」などと宣った上で言うのはちょっと恥ずかしいのだけど、実は徳島は自転車で走ったことが無かった。魅力的な場所が多いってのはもちろん知ってて前々から行きたかったってのも事実。剣山をはじめとした深山幽谷。そして鳴門~紀伊水道と太平洋に続く海岸線。

どっちにしようか悩んだけれど、まだ4月。
山は新緑の季節まで待ちたい。
ということで、今回は「海」に。

さて、今回はすーさんさんささんと一緒。
すーさんとはよく走っているので、この辺の記事を見てもらえれば。


ざっくりと説明するならカメラ持って走る系の旅好きサイクリスト。
つまり一緒に走って楽しい。


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話は飛んで当日。
金曜の退勤後、和歌山市駅近くに移動して一泊していた自分は、和歌山港ですーさんと合流した。この日は残念ながら雨だった。
しとしと降る春雨ではなく、わりとしっかり目の。

嘆いても仕方ないので、南海フェリーに乗り込み四国へ。
この日は雨なので一本送らせたけど、その前だと5:30発ー7:35着の便がある。この便に乗れば午前中もしっかり遊べそうだし、今度は晴れのタイミングでこっちに乗ってみよう。


和歌山港から約2時間の船旅。
自転車の話や好きな道の話をしていたら2時間なんて一瞬である。
ほどなくして四国に着いた。


フェリーから降りるときは、いつでも高揚感がある
乗り込む土地と降り立つ土地が地続きではないという事実からなのか、それとも単純にフェリー旅が好きだからなのか。多分どっちも。この日ももちろんそうだったけれど、徳島に着いても雨だったので±0。いや何ならちょっと強め雨だったので若干マイナス。

というわけで、徳島駅から輪行で南下。
わざわざ強めの雨の中を走るほど物好きではない。

このまま普通にしゃべって何もなく電車で行くのも悪くはないけれど、雨で走る場所も流れてしまってちょっとつまらないなあという気持ちがちょっとあった。そして何より、せっかくの二人旅。なにかちょっとした縛りがあっても………

「すーさん、今日はモノクロ写真縛りにしませんか…?」

実は、この旅の数日前にペンタックスのモノクロ専用機発売のニュースが出たばかりだった。だからというわけではないけれど、でも頭のどこかにあったのでそんな提案をポロっとしてみた。提案した自分は「面倒くさがられるかな」と恐る恐るだったけれど、すーさんは「ああ、いいですよ」とあっさりOK。

して、二人で雨の車窓を、白と黒の世界で描く。




一人での縛りプレイは、ふと我に返って「あれ…自分何してるんだろ…」となりがちだけれど、二人だとわいわいがやがや、やいのやいの言いながら楽しんだままでいることができる。撮った写真を見せ合って「あーでもない、こーでもない」と言い合う時間の愉しさよ。今更当たり前のことだけれど、二人旅の時には、二人旅でやった方が楽しいことをやりたい。





白黒で撮る時は、カラーで撮るときとちょっと周りの見方が変わる。

当たり前だけれど、カラー写真で撮るときは色でメインと背景の差を出せるけれど、モノクロの時は明暗差だけでしか分離できない。だから、その「明暗差」をよくよく注意してみるようになる。

自分はその「いつもと見方が違う」ってことを感じる瞬間が結構好きだったりする。


カメラ撮りがち。


ちなみに使ったフィルムシミュレーションはACROS。
モノクロも悪くはないけれど、富士フイルムで白黒写真を撮るならACROSの方が好き。高めのコントラストと質感表現がばっちり好み。


ほら、このカメラの金属的な質感と、手の柔らかい質感の違いの描き分けとか。


外は曇天のまま。


サギって白黒だと撮りやすいんですね…





午後からは雨が上がる予報だったので、お昼ごろに日和佐駅にて下車。
雨はまだ降っているけれど、もう本降りではない。
春雨らしい「しとしと」になっていた。



駅近くのちょっとおしゃれなラーメン屋さんでお昼を食べて、自転車旅はここからスタート。


ルートは以下のような感じ。

日和佐で降りたのは、「南阿波サンライン」を走るため。
南阿波サンラインは日和佐から牟岐までの海岸線沿いを走る県道147号線の別称。『ツーリングまっぷる』には「海に飛び出すようなコーナーがスリリング」と書かれている、海沿いワインディングロード。楽しみしかない。

港近くの海抜の低い日和佐の町から、山へと入り100mほど登って南阿波サンラインへ。



トンネルを抜けると海側に出る。ここからが南阿波サンラインのメインディッシュ。
海側に出て数百メートル進み、振り返ればこの景色。写真の奥の方に今しがた通ったトンネルが小さく見える。

さすがは四国。
山が深い。
そして海に近い。


前には山の向こうに海が見える。

海岸線ワインディングというと、海抜が低い海のそばを抜けていくのかと思いがちだけれど、写真の通りここ南阿波サンラインは違う。複雑に入り組んだリアス海岸の上の山の中腹を、アップダウンとコーナーを繰り返して抜けていく。



先にまっぷるに「海に飛び出すようなコーナーがスリリング」と書いてあると言ったけれど、実際は2車線のしっかりした道だった。雨で滑って本当に海に飛び出してしまうほどの狭路だったらどうしよう…とか思ったけれど、そんなことは全然なかった。


谷筋を越える豪快な橋。


雨は断続的に降ったりやんだり。
ところどころに展望台があり、東屋もあったりする展望台もあるので、そこで雨が強い時間はやり過ごしたりした。今日は既に列車で大きくエスケープしている。急ぐ旅ではない。時間には余裕がある。


コーナーを曲がる度に景色が開ける。
前述の通りところどころに展望台が設けられていて、想像以上に景色が良い。願わくば晴れて欲しかった…! とは思うけれど、それでも走っていて楽しい道だった。



南阿波サンラインを抜ける頃には雨はほとんどやんでいた。
後は国道55号線をひたすら南下して、宿のある宍喰を目指す。


左手には海。
海にはサーファー。
まだ肌寒い4月。

「雨なのによくやるなあ」と思ったけれど、雨の中自転車に乗っている自分が言えたことではないし、多分サーファーもそう思ってると思う。
趣味って大体そういうものだと思う。


国道に入ってからはハイペースモードに。
「急ぐ旅ではない」と言っておきながら、追い風も相まって30㎞/h以上で巡行。
先頭は交代しながらハイペースで走ること30分ちょっとで宍喰に到着。


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宿に到着してからはずっとゆっくり。
そのためにちょっと踏んで早く走ったまである。
宍喰には温泉があることは分かっていたので、その温泉で濡れ鼠になった体を温めたかったし、濡れた服をとっとと脱いでしまいたかった。


宿併設のレストランで晩御飯。
宿から出ずにご飯にありつけるのはありがたい。特に雨の日は。

「うるか」と呼ばれるアユのはらわたの塩漬けを食べたけれど、独特の味で大人の味だった(婉曲表現)。これの美味しさが分かるには自分にはまだ若すぎた。一緒に食べた鰹はとても美味しかった。

次の日のルートを確認して、お互いが撮った写真を見ながらアイスを齧っていたら夜は更けていた。

明日は晴れらしい。
楽しみだ。

続く。



 

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