紅葉が見たい!
赤土峠を越え県道346号線にたどり着く頃には青い空が顔をのぞかせるようになっていた。実を言うと、この日、というよりもこの旅をした3日間は全て曇り、悪ければ雨という予報だった。運が良かった、と言えばいいのか分からないけど、この3日間で2021年の天気の運はだいぶ消費したと思う。そして、ここでその運を消費できてよかった、とも思った。
今回のライドに関してはもうこの一点だけで家を飛び出しました。
やっぱり、なんだかんだ紅葉の季節が好きなんです。たぶん季節の中で一番。桜も新緑も、夏のうだるような暑さも、冬のぎりぎりまでそぎ落とされた景色も好きだけど。でも紅葉の季節が好き。その刹那的な瞬間を見に行きたいのです。
今回の行き先は会津。
そして二人旅。
Y²とのサイクリングでした。
Y²はこのブログにも既に数回登場しているので知っている人は知っていると思いますが、WCCの自分らの代の主将で良く自転車に乗っている奴。多分二人旅なら一番信頼できる。
実を言うと彼とのサイクリングはもっと前から、正確には夏くらいから計画していたのだけど、予定が合わないことや諸々があって計画が流れに流れて、利根川で言うと多分佐原くらいまで流れたようになっていました。
ここまで流れてしまったならいっそ紅葉ライドにしようということで、冒頭の紅葉ライドにしようということに。
会津が選ばれた(選んだ)理由はいくつかあるけれど、一番は紅葉。
奥只見なんかが有名だけど、凄いと聞いていたので。
そして実際にすごかった。
3回に分けて記事を書くけど、どれも良い景色を見ることができたと思います。何なら来年もまた再訪したいと思えるほど。それぐらいだった、と思うし、それは以下の写真を見てもらえれば。
前置きはこのくらいにして以下、本編のはじまり。
10月の最後の日、会津高原尾瀬口駅に降り立った。
今回はここから。
ちなみに会津高原尾瀬口駅は野岩鉄道内。この野岩鉄道線内ではICカードは使用ができない。まあ、割と知っている人も多いと思うけれど、僕は全く知らず、電車内で野岩鉄道線内の料金を払いました。
さてこの日のルートはこんな。
最初に向かうは七ヶ岳林道。
この道はグラベルなのだけど、これが本当にすごかった。
入り口は会津高原尾瀬口駅のすぐ。
北に数キロ走れば入り口。
七ヶ岳林道はその名前の通り七ヶ岳の近くを走る林道。実際、七ヶ岳への登山口もある。場所からも明らかな通り、アップダウンのあるルートだけどそこまで急な坂は無かったと思う(時々記憶は改竄されるものだから、あんまり断定したくないけど、でも多分なかったと思う。たぶん)
距離はR352から分岐して17~8㎞ほど。最初の数キロのみ舗装路で、その後はグラベル区間。グラベル区間は測っていないので、正確な数字は分からないけど少なくとも10㎞以上はあったはず。ロングダートと言って差し支えない距離は間違いなくあった。登りは大体500mほど。RWGで見る限り平均勾配は3.5%なので、そこまで急じゃない。やっぱり僕の記憶は間違っていなかった(と思う)。
何より景色が良かった。
思わず「うわああああ!」と言う声が出た。
声が、感情が意思を持って口から飛び出てきたような歓声だった。多分写真を見たところで伝わらない感動だった。山の奥に更に山、山、山。その山々がすべて紅く染められていた。山深い場所だと地図や写真を見ていたから知ってはいた。だけど、知った気になっていただけだったと思った。見なければ伝わらないものが、そこにはあった。
路面の話をすると、基本的に走りやすいけれど、定期的に砂利を撒いているのか深い砂利の区間があり、ズルズルと滑り、トラクションがうまくかからなかい場所があった。一応700×38cで走って問題なく走れたし、楽しめる場所も多かったけど、全線全てで楽しみたいならもう少し太めのタイヤ幅のほうが良かったなと。走破できることと、楽しんで走ることができるのは、かなり違う。箸で食べるカレーとスプーンを使って食べるカレーぐらい違う。我慢すれば出来るけど、楽しいかは別(と個人的には思う)。
あと、自分のバイクコントロールに一抹どころか十抹くらいの不安があるのでマージンは多めにとっておきたいと思っているところ。上手な人ならもっと少し細いタイヤでも走破可能だと思う(深砂利は大変だろうけど)。
とはいえ、酷い路面洗掘などは特になく、総じて走りやすい林道だった。
残念だけど、これの写真ですら、この紅葉の良さは3割くらいしか写ってない pic.twitter.com/ovbqppxYyv
— Tomy (@Tomy_viajar) October 31, 2021
道中にこんなツイートをしたけど、ほんとにそう。
この写真以外も、この良さはカメラに映らない。
自分の技術の無さもそうだけど、でも目で見たものに敵わない。
そのことが悔しいけど、でも嬉しい。
全てのものが体験せずに見られたら、それはきっと貧しいことだと思う。
Y²のバイク。
Muddy Fox CX
泥狐はグラベルに映える。
バーテープとサドルの色があっていてかっこいい。
こちら僕のバイク。
Kona sutra
説明不用のツーリングバイク。
長かった七ヶ岳林道もここらへんでおしまい。こういう比べ方はよくないかもしれないけど、御荷鉾スーパー林道をもう一度走るか、こちらをもう一度走るか問われれば、間違いなく0.1秒以内にこっちと答えると思う。良い林道だった。
七ヶ岳林道を抜けると国道289号線だった。
もともとここに来る予定はなかったので元のルートに戻るために東へ。ちょうどお腹が減る時刻となっていたので、会津田島駅付近へ向かった。
ここで昼食。
麺つゆに入っていた揚げたてアッツアツの揚げ餅を勢いよく食べて、口の上側を思いきっきり火傷するなど。美味しそうなものほどゆっくり食べないといけないなんて難しい。腹ペコならなおさら。味は美味しかったし、揚げ餅入りでお腹にもたまった。午後からも頑張れそう。
ここから大内宿を目指す。
基本は多分R121を使うだろうけど、敢えて使わず。
国道はどうしても交通量は多くなるし、せっかくの二人旅でそれを使うのはもったいない。というわけで、僕らはR400を経由して赤土峠というひっそりとした道を走った。
赤土峠は地味な峠だった。
でも、この季節は地味な峠でも、いい。
こちらも紅葉真っ盛りだった。
確かに地味だろう。でも、その地味な峠にでも紅葉は訪れる。
その地味な峠にしか訪れない紅葉がある。
県道346から県道131に乗り換えさらに北上。
「大内宿」は当然その名前から分かるように宿場町なのだけど、宿場町があるということは、当然街道があったということになる。そんなの、少し考えればわかる当たり前のことだけど、行ってみるまで大内宿が何街道の宿場町なのか知らなかったし、知ろうという発想にも至らなかった。自分の頭で考えていることには(これまた当たり前だけど)限界があるなあ、と再確認した。
「やはた」ではなく「はちまん」。
ここでピンと来た人は多分、日本史好き。
八幡太郎義家こと源義家が手厚い歓待と、道を教えてもらえたことで敵を倒せたことに謝意を示して植えたという伝承があるらしい。まあ、前の赤城の記事でも書いたけど、それが本当かどうかは別とするにしても、相当歴史がありそうな大木だった。それと、こういう伝承があること自体が街道筋っぽいなあ、と思った。人がいた場所に伝承は伝わるものだろうから。
緩いアップダウンを数度こなしながら進んでいると大内宿に到着した。
“福島県南会津【大内宿】は、江戸時代に会津若松市と日光今市を結ぶ重要な道の宿場町として栄えました。現在も江戸時代の面影そのままに茅葺屋根の民家が街道沿いに建ち並び、この景観を引き継ぐために店舗兼住居として生活しています。昭和56年には国選定重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。(大内宿観光協会HPより)”
茅葺の民家が並び姿は壮観だった。
ただ、休日ということもあってか、観光客が多くそういう雰囲気が苦手だったのと、夕暮れの足音が大きくなってきていたので早々に切り上げ、先に進むことにした。再訪するならもう少しゆっくりできるタイミングで訪れたい。
やや寒さが増してくるなか、大内ダムを向かいこの日最後の登りへ。
到着するころにはだいぶ日が傾いてきており、山の下側は影になるような時間になっていた。秋は日が傾くのが早い。でも、秋はこの時間が一番好きかもしれない。
だいぶ日が傾いてきた。
ふりがなが凄い選手権ノミネートできる。
あとは会津盆地へ向かい下ってこの日のライドは終了。
東山の雰囲気たっぷりの二洸旅館という宿に泊まった。
この鍵のパターンは初めて。
自転車の、いやこれはどう見ても100均のカギだな。
防犯意識は高めておかないといけない。
一人で泊まるのは少し怖いかもしれない。
晩御飯は無しで予約していたので近くの食堂で晩御飯。
晩御飯の時間にたどり着かなければ、と焦るのはもったいないし、今回は会津の町がすぐあるので晩御飯を食べられないことは無いだろうということで。旅はどれだけ焦らずに楽しめるか、それがカギだと思ったりする。
ご飯を食べ、旅館の温泉に入ったらあとは寝るだけ。
二人で何をするでもなくダラダラして(この時間が好き)、適当な時間で寝た。
明日も、この紅葉がまた見られるのか、なんて思いながら寝た。
つづく。
実際走ったルート
走行距離:93㎞ 獲得標高1384m |
訪問日 2021/10/31
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