起きた。
いつもと違う部屋の匂い。
3日目の朝だった。
今日は朝風呂に向かった。
理由は単純で、昨日の朝思っていたよりも寒く、走り始めで体を温めるのに難儀したから。温泉で最初から体を温めておいた方が良いな、と。11月に入った会津はそういう気温なのだと思う。
ビュッフェスタイルの朝ごはんで多めに腹ごしらえ。
いつも思うけど、ビュッフェの時って普段家で食べている倍か、それ以上の量を食べられる気がする。普段なら、スープとシリアルとヨーグルトくらいで十分なのに、ご飯とパンとおかゆを食べて、ソーセージに焼鮭、ベーコンエッグに納豆やらなんやらとおかずをいっぱい持ってきてしまう。それでもって追加でデザートなんか食べたりして。そして、食べ過ぎたと思いながらも、案外食べられてしまうのはいつも謎。
今日は最終日。
ルートは以下の通り。
磐梯熱海から南下して御霊櫃峠を越え、猪苗代湖畔へ。
その後、猪苗代湖の真南に位置する布引高原へ抜けた後はグラベルをいくつかつないで白河ヘと向かう予定。
まず最初に田園を抜け、御霊櫃峠へと向かった。
御霊櫃峠は猪苗代湖の真東に位置する峠。
入り口には林道を知らせる看板としてはかなり綺麗な部類に入るものがあった。
路面はかなり綺麗だった。
御霊櫃峠はその道を地図で見ると綺麗な九十九折りの形をしている。この形をしている道は2パターンあると思っていて、一つが斜度がきつすぎるから九十九折に仕方なくしているパターン。もう一つがもう少し真っ直ぐにできるけど斜度の緩和を狙って敢えて九十九折にしているパターン。
御霊櫃峠は完全に後者。
RWGで見ると、距離は8.5㎞で獲得標高は528m。平均斜度で6.6%。
実際、斜度は6%前後の区間がほとんどでゆるゆる登れる上に、九十九折が楽しい。このくらいの斜度だと全く息が上がらず、ずっとしゃべりながら登れる。もう何をしゃべったかあまり覚えてないし、覚えてないところを見ると多分どうでもいいことだったんだろうけど、その時間を過ごせたことだけは覚えている。
もう3日目となると感動はかなり薄れているけれど、紅葉は間違いなく良かった。一日目では「うあああああ!」ぐらい叫んでいてもおかしくない道でも「良い紅葉だね~」くらいになってしまっていた。人間はいい方向にも悪い方向にも麻痺する。東京のコンクリートジャングルでリセットしないと最大の感動を得られないというのはなんとも皮肉的だな、と思った。
木が無くなり、草が生えるような開けて場所にでたと思ったら、そこが峠だった。
峠の右手に少し小高くなっている場所があり、さらに見晴らしがよさそうだったので登ってみた。
振り返ると東側の郡山市街。
前は西側の猪苗代湖。
静かな峠だったが、風が冷たかった。
どうやら御霊櫃峠は風の通り道になっているようで、けっこう風が冷たい。登りで汗ばんだ体に容赦なく吹き付けて、これでは体が冷え切ってしまうということで、あんまりゆっくりすることなく下った。
下りきって猪苗代湖畔。
ルート上では県道を走る予定になっていたけれど、そのまま猪苗代湖畔の道を走った。
湖畔は時間の流れ方が違う pic.twitter.com/l0W3Sv4sRx
— Tomy (@Tomy_viajar) November 2, 2021
湖畔もまた静かだった。
秋は静かだと思う。
いや実際には、虫が鳴いていたり、鳥が鳴いていたり、風切り音がしたりと、よっぽど自分の部屋にいるときの方が音量的な意味では静かなのだろうけど、秋には秋の静寂があると思う。自分の部屋が沈黙だとしたら、秋はきっと静寂。ニュアンスが伝わるかは分からないけれど、そして、この言葉の使い分けが正しいのかは知らないけれど、そんな感じがした。
湖畔に別れを告げ、ここからヒルクライム、というタイミングで食堂があった。
時刻は11時半くらいだったと思う。別にお腹が特別すいていたわけでもなかったし、時間も早いからもう少し進んだところで昼食にするか二人で相談したけれど、この食堂の雰囲気が気になったし、入ってみたいという結論になってここで昼食を取ることにした。
赤はらの天ぷらがオススメと書かれていたので、赤はらの天丼を注文した。
赤はらとはウグイのことらしい。
猪苗代湖は、湖に注ぐ長瀬川が火山性の酸性水であるため、水質は弱酸性の貧栄養湖となっているらしく、そのため、漁業はウグイやフナに限られるそう。そういえば強酸性の湖で有名な恐山の宇曽利湖でもウグイは生きていたことを思い出した。この土地の貴重なたんぱく源だったのかな、とも思った。
川魚の天丼は初めてだったけど、食べてみると泥臭さとかの癖は特に無く食べやすい印象。割と淡白だったので、天ぷらとかが美味しく食べられる調理法なんだろうな、とも思った。天丼自体は、甘辛のタレが天ぷらとマッチしていてとてもおいしく、またこのあたりに来るときはここで昼食を食べようと思った。
そして、ここはなんといっても景色がいい。
さっき猪苗代湖畔で写真を撮ってしまったのでここでは撮っていないけど、磐梯山と猪苗代湖と、それから、サイクルラックにかかった自分の自転車を見ながらご飯を食べられる。道沿いではなく、裏側にサイクルラックがあったのでもし気になった人は注意。
どうやらこのお店、宿泊もできるようだったので、ここを拠点にして様々な場所に繰り出すのも、あるいは旅の途中で泊まるのもいいかもしれないと思った。
腹ごしらえも済んだところでリスタート。
猪苗代湖畔を走る。
目標を決めて走る行為に対してワクワクしないので、○○一周というのにあまり興味を抱かないタイプだけど、猪苗代湖畔一周、通称イナイチは(綺麗にトレースしないで面白そうなところをつまみ食いしながら走ったら)面白いかもしれないと思った。
午後は最初に布引高原へ向かう。
こちらも斜度はそこまでで、御霊櫃峠と同じ程度か、ややきつめ。
御霊櫃峠と比べて足が疲れていたからか、序盤の方はややきつかったような印象があった。
標高が1000mを超えるあたりで景色が開けた。
風力発電の羽がぐるぐると回っていた。
遠くには猪苗代湖と磐梯山。
少し霞んでしまっていた。
夏は向日葵、秋はコスモスが咲き誇る場所らしいけど、もう11月。標高1000mの場所にはもう既に晩秋を通り越して冬を感じるような寒々とした空と景色が広がり、実際冷たい風が吹き抜けていた。
とはいえ、昼食を食べた食堂の女将曰く、向日葵が咲き誇るハイシーズンには今登った道は渋滞するほどの混雑になるらしいので、僕としてはこのくらいの秋と冬の狭間の静寂を感じられる時期に来られてよかったと思った。
さらに進むと展望台があるようだったので、そこへ向かった。
ブォンブォンブォンブォン pic.twitter.com/ic05T7Qq41
— Tomy (@Tomy_viajar) November 2, 2021
西側は黒く怪しそうな雲。
東側は晴れ。
一応今から向かうのは南東方面なのできっと大丈夫だろうけど、ちょっと急がないとやばそう。
ここからはグラベルセクション。
黒沢林道という名前の林道で、安藤峠という場所に向かいそこからグラベルを下ると、羽鳥方面へ出られるらしい。ただ、この道は下りだったけど結構きつかった。
まず、ダブルトラックあるものの藪が張り出していて道は狭く、かつ藪で隠されたブラインドカーブの先に路面洗堀があったりしてなかなかライン取りに苦労した(ミスって転んだ)。
写真はあくまで写真が撮れるくらいには余裕がある場所なので、写真を見ていると「これ行けるじゃん」と思うけど、実際にきつい場所は写真を撮る余裕なんてない。
同行者のY²は「ガレガレ~」などと言いながら、僕と同じ38cで、しかもチューブドで(僕はTLR化済み)僕の視界からすぐに消えるスピードで下っていた。機材はあくまで助けであって、乗り手が全てだと悟った。
グラベル区間を抜けると立派な2車線の道になった。
ひび割れ具合から、昔は全て2車線にするつもりだったけど、今は諦められてあまり整備もされていないような印象を受けた。そのおかげかほぼ交通量は無く良い道だった。もし布引高原のハイシーズンに行くことがあれば、この道を使おう。空気圧を下げたままのタイヤで「ファ~~~~」という甲高い音を立てながら気持ち良く下った。舗装路は偉大。
予定ではさらに西部林道、鎌房林道へ行く予定だったけど、小雨がぱらついてきたことと、思ったよりも黒沢林道で消耗してしまったので、その林道はパスして羽鳥湖を経由して県道37号線で白河へ向かうことにした。
羽鳥湖からは少し登り返しがあるものの、ほぼ下り。
交通量もそこそこあったため写真は撮らずに下ったけれど、この道もかなり紅葉が綺麗だった。そして、この下りが終わってしまえば、あとは家に帰るだけ。少しでもこの紅葉を目に焼き付けておこうと思っていた。けど、今思い出そうとしてもあんまり思い出せない。人の記憶はいい加減だなと思った。だからこそ写真に撮って閉じ込めておきたくなる。
新白河に付く頃にはだいぶ暗くなっていた。
そのまま新幹線にのり、会津ツーリングは終了。
会津の辺りはあまり走っていないこともあり、新鮮な気持ちで楽しめた。去年は山梨の辺りでよい紅葉が見られたけれど、今年も勝るとも劣らない紅葉が見られたのは本当に良かったと思う。それと「会津」の一言で片づけるにはもったいないほどの様々な表情が見られたのも良かったと思う。次はまた違う季節に訪れてみようと思った。
おしまい。
実際走ったルート
走行距離:98㎞ 獲得標高1576m |
訪問日:2021.11.2
更新ありがとうございます。
返信削除東京のコンクリートジャングルでリセットしないと最大の感動を得られないというのはなんとも皮肉的だな、と思った。
→いやはやまさにその通り。。。
コメントありがとうございます。人間とは悲しい生き物ですね…。
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