『霧降高原雪上サイクリング』

今年の冬、雪上サイクリングを始めた。
僕のTwitterなんかを知ってる人は知っていると思うけど、今回はその記念すべき冬チャリ一発目のライドの様子を。
今回のライドは一人ではなく、Gatさんとのライド。

今回は僕から誘った。
これにはいくつか理由があるけれど、そもそも雪上サイクリングというものを明確に意識したのは他でもないGatさんからのとあるリプライからだった。


これは一年半前の北海道を旅していたときに来たリプライ。
今さっきまでいた場所に冬に訪れた自転車乗りがいる、という事実は冬チャリを意識するには十分なインパクトがあった。確かにそれまででも写真なんかはちょいちょい見ていたりしたので、冬チャリの存在自体は知っていたけど、ここまで明確に意識したことはなかった。

これをきっかけに、少し時間が経ったけど、この白銀の世界を自転車で走ってみたいという気持ちが大きくなったのと、もう僕も大学生も終わりも終わりで、大学生のうちに何か新しいことを始めてみようかな、という一般大学生的な発想によりそう思ったので冬チャリをやることにしてみた。

で、今回はそんな当人に、冬チャリを始めるにあたってまだまだ分からないことが多いので実際に色々と聞いてみたいというのと、最初は誰かと一緒に走った方がリスクヘッジになるし、それから前回に走ったときにそれなりにペースとか、そのほかの波長みたいなものが合いそうだなと思ったというのもあって誘った。

向かったのは霧降高原。
今回は自分の冬チャリの慣らしという側面が強いので、一度僕は夏に走っていてハードルが低い点と、関東近郊で日帰りできる雪道でかつ交通量が少なさそう(スキー場がない)という点を考えてここに。

以下、当日の話。



始発でスタート地点の東武日光駅へ。

天気はこれ以上ない快晴。
ただ思ってたよりも三段階ぐらい暖かい。
気温は1度ほどだけど、日差しがあってもっと温かく感じた。
前日は東京でも雪が降ったけれど、この気温はもしかして雪がないやつでは?


悪い疑念はすぐさま当たる。
路面にも路肩にも雪なし。

そしてスパイクタイヤの舗装路における走行性能の低さを嫌というほど感じた。何ならスタートしてすぐ、1kmも進んでない地点の登りで「今日、走り切れるかヤバいかもしれない」と思うけどキツかった。一年生の夏合宿、あまりにきつくて泣きそうになった鳥取の大山の登りを思い出した。

2.1インチ、センチにすると約5.3cmという太さがあるのでタイヤ自体にそもそもの重量がある上、外周部に金属がついている時点で重量がさらに重くなり、追加でスパイクの走行抵抗まで付いてくる。

Gatさんに先行してもらったけど、Gatさんの方がペースが速いので数メートル離れて、それにGatさんが気がついてペースを合わせてもらう、ということの繰り返しだった。Gatさんは空気圧を上げるとピンが地面に当たらないタイプのタイヤで、登りでの走行音はかなり静かだった。反対に自分のはタイヤチェーンをつけた郵便配達のバイクみたいなノイズを常に鳴らしていた。

ひとまず霧降の滝でひと休憩。







Gatさんも今回、カメラを持ってきていたので、「これどう撮りますかね」みたいな話をしながらワイワイガヤガヤ。カメラを持っている人とこういう話をするのは結構好きなので、結構楽しかった。

霧降高原レストハウスへ向けリスタート。
この辺りからスパイクタイヤの走行抵抗にも慣れ、進ませ方もある程度把握し始めたので、疲労の溜まる速度は遅くなった。慣れは偉大だと感じた。

ところどころ写真を撮りながら進んだ。


この辺りから路肩には雪が見え始めた。
ただ、路面はフルドライだった。



遠くには女峰山だろうか、冠雪した山々が見えた。







ここまで雪成分が足りてなかったので、除雪されていなかった霧降高原第二駐車場に迷わずイン。
ひとしきり遊んでからリスタートした。
ここまでこればレストハウスまではあと少し。


霧降高原レストハウスの前のカーブより。
良き景色。


photo by Gatさん


そんなこんな霧降高原レストハウスに到着。
向こう側には展望台がはっきりと見えた。
約束された勝利だ。

ここからは自転車を置いて小丸山へ向かい階段を登った。
序盤の木々の間を歩いているうちは傾斜は緩いが、段々ときつくなる。




林を抜け、振り返ればこの通り。
蒼穹と呼ぶにふさわしい雲一つない晴れ。


スノーシューも楽しそうだな。


photo by Gatさん

ここまで登るともはや「スロープ」に変わってしまっていた。
手すりをしっかり掴んで体を持ち上げないと行けないほどきつい。
というか手すりが無ければ登れなかった。

足元にはアイゼンの歯の跡があった。
なにもつけずに来る場所じゃなかったか。


休憩を挟みながら小丸山山頂へ。




良い眺め。
前回来たときは、霧が立ち込めて階段すら先が見えないほどの白の世界だったけど、今回は白銀の世界。たったの一文字違いだが、その感動の違いはとてつもなく大きかった。

悲しみを知っている方が感動も大きい。









これから向かうルートにも日向には雪はない。


下りはお尻をつけてソリみたいに滑ったりしながら。


photo by Gatさん

途中、滑りながら下っていたら、サコッシュに入れていた荷物(財布・携帯・ゴーグルetc)のほとんどをぶちまけて下っていることにGatさんが気が付いてくれて、荷物を回収したり。こうして落とし物が発生するんだなあ、と反省した。



photo by Gatさん

片足は雪にめり込ませながら。


レストハウスまで戻って丁度お昼時だったのでここで昼食。





鶏の照り焼き丼とシフォンケーキ。
どっちも思っていたよりもボリュームがあって美味しかった。
御馳走様でした。

一階へ降りると「スノーシュー貸出無料」と。行く前に確認すれば良かった。受付の人曰く、「斜度がキツいところ用ではなく雪原歩き用なので、上まで行くにはあまり向いてない」という話だったけど、次に行くときはここで借りてスノーシューを履いていこう。



レストハウスを後にしてリスタート。
ここまではほとんど雪が無く涙目になりながらジャラジャラと2.1インチの太重スパイクで走らせてきたが、霧降高原レストハウスを過ぎたあたりから日陰には雪が見られるようになってきた。ようやく求めた路面があった。ただ、圧雪路はここだけで、後はシャーベット路面だった。残念。


photo by Gatさん






日陰の雪道と日向のドライ道を数回繰り返すと、六方沢展望台に到着した。


開けた景色。



こうしてみると自分の荷物の多さが目立つ。
最適化されてないことが丸わかりだな。




ここが道路の最高地点。
ここから先は下りになる。
大笹牧場まで下った。

下りは、2.1インチタイヤの優位性がはっきりと出た。
登りではGatさんの方が全然速く、自分でも2.1インチを買ったことに対して若干の後悔すら感じていたけれど、下りの安定感は抜群だった。


路面はシャーベット状orシャーベットか雪の下に凍結した車の轍が隠れているような、やや緊張を強いられる状況だった。ただ、僕はやや怖いと感じるだけで実際に危険な目には合わなかったが、ゆっくり下ってきたGatさんは「心臓に悪い滑り方を数回した」と言っていた。雪道の下りにおいて太さは正義だな、と思った。

むしろ圧雪されきらない本州においてこそ、2.1の優位性が出るかもしれないとさえ思った。(本州の急峻な登坂は考えないものとする


大笹牧場手前の開けた場所。
ここでは写真が撮りたくなる。




大笹牧場からは県道245を下った。
県道169に比べ、山陰や木陰が多いからかこちらの方が雪が残っていた。斜度が県道169の方がきついということで安全面を考えてそちらを登りにしたルートをGatさんが引いてくれたけど、もし次回行くならば全く同じルートを走るのは面白くないし、雪道を走るという目標を考えるならこちらから登ってもいいかもしれないと思った。






ここまで寒いなと思う場面はほぼなかったが、日が傾き始めて山陰に隠れるようになったこの辺りからは、下りも相まって寒いなと思うような気温になっていた。とはいえ、気温は-1度程度。もっていった防寒着は使わなかったし、北海道を体験した今となっては暖かい部類だったと思う。

日光付近まで下ると再び暖かくなった。




下今市駅に到着。
全体で40㎞も走っていないけど今日はこれにて終了。
獲得標高も1000mを越えていて、スパイクタイヤの疲れもあるのでこのくらいでも、無雪期サイクリングで換算すると倍以上の距離を走ったかのような満足度と疲労度だった。冬の運動不足は、冬チャリで解決できるなと思った。

Gatさんとの会話は、ここで書くような内容でもないのであまり書かないけれど、楽しく走ることができた。前回、一緒に走ったときは「どんな人なんだろう」と探り探りの部分も多かったけど、今回はもう少し踏み込んだ会話とかもできたのでそれも良かったな、と。

前回と違って、どちらかというと僕とGatさんの装備はもちろん価値観の「違い」を見つけるような会話が多かったように思う。それは決して悪い意味じゃなく。ニュアンスが伝わるかは分からないけど、両者の「違い」そのものや、その「違い」がどこから来るのかを考えるのは結構楽しいと思う。

そんなことを考えながら帰路に就いた。

おしまい。

走行距離:39㎞ 獲得標高1026m





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