『冬季ビーナスラインライド』 諏訪~車山肩~佐久平

北海道の前哨戦のつもりだった。
が、とんでもなく満足度の高いライドとなった冬のビーナスライン。
今回はその様子を。

既にブログで書いている通り、今年の冬は北海道を走った。
この時点で冬の北海道をに行くことは決めていたけれど、この時点では冬北をするには、寒さに対する準備や体温調整、装備の確認や補給食などなど、ありとあらゆる自分の経験値が足りないと思っていたので準備がしたかった。

本州で、関東圏から行きやすい場所で北海道に準ずる気候の場所はそう多くない。たとえあったとしても、冬季通行止めで自転車で走れる場所はかなり限られてくる。そう考えた時、候補に挙がった来たのがビーナスラインの南側の区間だった。

知っている人は知っているだろうけど、ビーナスラインは区間により冬季通行止めがなされている。具体的に言うと、八島湿原より北は冬季通行止め。和田宿から美ヶ原方面は開いているけれど、そのほかも冬季通行止め。つまり北の美ヶ原周辺か、南の車山周辺のみ通行が可能。今回はルートバリエーションが豊富な南側を選択した。


ルートは以下の通り。


諏訪スタートの佐久平ゴール。
かなりきつめのルートになっているけれど、これはあえてで、これをもとに冬の北海道のルートの強度を決めようと思っていたので、自分の冬チャリにおける限界を探るため。

前置きはこのくらいにして以下、当日の話を。



千葉から長野は遠い。
というわけで今回は前泊した。
週一の授業である卒論演習を終えたあと、そのままの足でガラガラの夜に中央線に乗り諏訪に向かった。暖房の効いた小淵沢駅の待合室はとても暖かった。



すっかり夜の帳が下りた茅野駅を降りると、耳に刺さるキンとした寒さと路肩の雪が出迎えていた。いよいよ冬の長野を走るのだなと気持ちはホットだった。


路肩の温度計は-7℃と赤く示していた。
普段なら寒いと思うだろうけど、-20℃前後までは問題なく行けるように装備をしていたので、寒さはそこまで感じなかった。テンションがハイになっていたからかもしれない。


快活に入る前に晩御飯を食べた。
もう充分深夜と呼べる時間だった。
深夜に食べるラーメンは妙に高揚感があると思う。
ハルピンラーメンという諏訪では有名なラーメンらしい。

冬の夜の寒さと久々の夜のライドのテンションと、明日の行程への恐怖と高揚感が相まってよく分からないテンションになりながら快活にイン。そんなテンションだったので落ち着くまで漫画を読もうと思ったけど、結局眠気は来ず、漫画をめくる手だけが進んだ。



翌日。
外は雪が降ったようだった。

後々読み返した時のために書いておくけれど、この年はコロナ禍で物流が滞ったせいで年末からマックのポテトが販売中止になっていた。この時点では快活の無料モーニングのポテトは普通に食べられたけれど、2月からは快活も食べられなくなった、そんな冬でもあった。

外に出ると店内で温められていた体が一瞬で冷めたし、眠気のあった頭も一瞬で覚めた。
気温は-13℃ほどだった。



向かいのコンビニで暖かい飲み物をボトルに入れて、いざビーナスラインへ。
手始めに国道20号、県道40号と経由して立石公園へと向かった。

県道40号を上る途中、朝日が昇ってきた。


白の世界がオレンジに染め上がられていく瞬間は、ありきたりな表現だけど本当に美しいと思う。このためだけに朝早く出てもいいと思うほどだった。


立石公園からは諏訪湖が一望できた。
今年も御神渡りは観測できなかったらしい。
神様の足は温暖化で遠のくものなのだろう。




立石公園を過ぎた周辺までは基本ドライだったが、さらに登ると路面にも徐々に雪が増え始めた。





とはいえ、圧雪路というよりはフカフカの雪が薄く積もっているようなかたちで「ギュッギュッ」という、パウダースノーを頑張って雪玉にしようとして手で押し固める時の様な音を立てながら登った。


さらにこの近辺は斜度が15%近くになる場所も。
その上でサラサラの雪の上を走るため、消耗はそれなり。
感覚としては、石川県の千里浜なぎさドライブウェイとかで体験した砂の上を走る近かった。それがそのまま坂になった感覚。進まない。

ただ、実は、走行速度はそこまで遅くはなっていない。
スパイクタイヤを使う前は、片方で1kg以上あるスパイクタイヤを使えば、それなりに走行速度は落ちると思っていた。思っていたけれど、実際は違った。まあ、確かに走行速度は落ちるのだけれど、それでも8割程度に落ち着く。ノーマルタイヤで10㎞/hくらいで登れる坂なら8km/h、ノーマルで8km/hなら6~7km/h程度といった具合。

そもそもギア比が変わっていないのでそれ以上スピードを落とすと、その方が疲れてしまうのである。というわけで意識的に速度を落としすぎない程度にゆっくりと進んだ。ただし、同じ距離を進むのに疲労度はというとノーマルタイヤの倍以上に跳ね上がっていた。なんか計算が合わないような気もしないでもないけど、それはともかく倍以上疲れた。

ヒルクライムの数字的な話をすると、登り始めから霧の駅まで距離は15㎞ほどで獲得標高は1000mほど。普通のタイヤなら問題ないけれど、雪道だときついかきつくないかで言ったら、かなりきつかった。


ところどころ意識的に多めに休憩を入れてエネルギー切れを起こさないように補給食も多めに、水分もしっかりとりながら進んだ。寒いと言うだけで消耗度も大きい。まだまだ序盤。こんな山中の眺望の全くきかない場所で帰るわけにはいかないのである。

交通量は、太陽の高さに比例するかのように増えていった。
この区間、つまり立石公園から霧の駅までは多いとは思わなかったけれど、基本的にはある程度車に注意しながら登る程度には交通量があった。

車で来ている人が雪道になれているとも限らないので、慎重に、例えば対向車がいたりする場合などは適宜自転車を降りて道を譲りつつ。交通量のことを考えても、始発でこちらに来るよりも、やはり今回のように前泊して朝早めに登ってしまうというのがよさそう。

標高1200mほどまではフリースで登っていたけれど、そこから先は汗冷えも伴ってさらに寒くなりジャケットも着てクライムした。気温は15℃程度だったと思う。

淡々と、でも着実に上ると霧の駅手前のスキー場が見えた。


ここまでこればほぼ登り切り。
かなりしんどかった。



ビーナスラインらしい白の世界が広がっていた。
来てよかった、と心から思った。
この世界が見たくて冬季サイクリングを始めたのだから。


霧の駅からは十字路を左折して県道194号線で八島湿原方面へ。
ここまでは圧雪路というよりかはフカフカ雪路面がほとんどだったが、ここからは圧雪路となる区間も増えてきた。



軽いアップダウンをいなしながら八島湿原ビジターセンターへ。
圧雪路の上は舗装路というよりはグラベルとかの未舗装路に近い感覚。



あまり景色に見とれていると氷の凸凹があって危ないし、かといって近くを見すぎていても未舗装路同様危ない。リアタイヤが滑っても焦らずスパイクが噛んでくれるまで変な挙動をしないように。そんな当たり前だけど、でも新鮮な氷の上の感覚を楽しみながら進んだ。



八島湿原より北はご覧の通り通行止め。
ビジターセンターももちろんやっていない。

ビジターセンターの駐車場からは西側の眺望が開けていた。



ここはピストンなので再び霧の駅方面へ。



ピストンかつスキー場が無いからかここに関してはかなり交通量が少なかった。この日では朝早い時間を覗いて一番少ない区間だった。具体的な数字を言うと、ここは往復で10㎞弱の距離だったが、見た車両はビジターセンターに止まっている車を除けば両手で足りる程度だった。

繰り返しブログで言っているけれど、個人的に決めている良い道の基準として「車が少ない、無ければないほどいい」というのを挙げているので、個人的にはかなりオススメの場所だった。




霧の駅からは車山方面へ。



正面やや右手には八ヶ岳、さらに少し進むと右手にはやや霞んだ富士山も見ることができた。


時折、西側にやや怖い雲が見えることも。


歩く道と走る道




時々色味が違う写真が混じっているのは、設定を間違えてそれに気が付かず撮っていたから。これはこれでいいんじゃないかなと思うので敢えて直さずそのままにしときます。

閑話休題。

車山肩でちょうどお昼時を迎えたので、ご飯を食べようかとも思ったけど残念ながらどこも休業中だった。日によってはやっているみたいだけど、この日はお休み。車山を登るか一瞬悩んだけれど、消耗度が大きかったのと、雪が結構あったのでやめてそのまま進むことにした。





抜群に景色はよかったけど、車山肩周辺からはそれなりの交通量があった。
平日(金曜日)でこれなのだから、土日はもっと多いと思うと個人的には平日に来たいなあと思う。


ここで思わぬ出会いが。
向こう側から登ってくる自転車が。
正直三度見くらいした。
だって、こんな場所、平日に自転車で走っている人がいるなんて思わないじゃないですか(特大ブーメラン)。

それは相手も同じようで、しばしの間路肩に泊まって談笑した。
ここからの路面状況や、この辺で雪上サイクリング出来る場所の事、そのほかいろいろ。驚いたけど、世の中、いろんな人がいるなあとなんだかうれしくなった。


正面に見える山は蓼科だろうか。
ずんずんと進むにつれてドンドンと大きくなった。





車山スキー場で一旦昼ご飯。


昼ごはんが食べられなくても問題ないくらいの補給食も持ってきていたけれど、食べられるところでは食べておいた方がいいだろうし、なにより温かいものが食べたかった。

スキー場内のレストランで一休み。
出てきたカレーは美味しかったが値段の割に量が少なかった。
観光地値段だったなあ、と思ったけど、この場所で暖かいものが食べられること自体がかなりありがたい。ただ次は火器を持ってこようかとも思った。

さて、ここからもともと引いていたルートだと女の神展望台まで行くルートになっていたけれど、さすがにそれは体力的に厳しい。というわけで、そのまま県道40号線を走り女神湖方面へ行くルートを選択した。こちらの方が距離も獲得標高も優しめ。


大門峠周辺は交通量がかなり多く、また、このあたりからは雪が解けてしまって、ほぼ雪解け水をまき上げるような形になってしまっていたので、疲労度も相まってテンションはやや低めに。

そのまま県道40号を進み、蓼科牧場の交差点の前でいったん休憩。
折角なので自撮りを。


まあ、確かに自分の自撮りは人から見たら意味がないだろうけど、自分が後々見たら結構嬉しいものだということを最近学んだので、時間と体力がある限りは積極的に撮っていきたいなと思う。あと、ゴーグルしていると完全に顔が隠れるので、自分の顔が映る構図でも撮れるのが嬉しい。

そんなこんなで県道40号を進み雨境峠に到着。


木々の間からは浅間山が見えた。




雨境峠からの下りも雪解け水。
大門峠を越えてからは基本的にずっとこんな感じだった。
時間帯が違えば路面も違ったのかもしれないけど、雪道を走りたいなら大門峠よりも車山方面の方がいいのかもしれない。



蓼科第二牧場周辺より。
さっきしっかり見えた蓼科山は既に雲に隠れてしまっていた。
天気の移り変わりは早い。

その後は県道152号線などを使って佐久平方面へ。





最後の最後まで良い天気だった。


佐久平駅からは新幹線で帰宅。
輪行しようとしたら自転車に氷柱が出来ていて「なるほどこれがうわさに聞いていたやつか」と感動した。





今回は冬の北海道の前哨戦として位置付けたライドだったけれど、冬のビーナスラインを目当てに冬タイヤを買ってもいいんじゃないか、と思えるほどの満足度の高いライドになった。例年にも増して雪の多かった2021~2022にかけての冬。ここビーナスラインでも雪が多かったようで、白に染め上げられた高原道路を心ゆくまで堪能することができた。

強いて言うなら交通量がある程度考えられるのでそこだけ注意だけど、それを勘案しても良きライドだったと思う。

ビーナスラインの北側、美ヶ原方面の方がスキー場もなく交通量が少ないと聞いたので次回はそのあたりも行ってみたいところ。あとはチェリーパークラインも良いかもしれない。なんて、帰ってきてから次のライドを考えるくらいには良いライドだった。

おしまい。



コメント

  1. 真っ白な山肌に深い青空、とっても素敵ですね!
    私も次の冬は雪上ライド挑戦してみたいです

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  2. コメントありがとうございます。
    雪山には雪山でしか見られない魅力があることを知りました。
    是非是非雪上ライドやってみてください。一点だけ言うと、タイヤだけは早めに用意すると吉です。他は何とかなりますが、タイヤは売り切れるのが早いので…。

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    1. なるほど、タイヤの準備参考になりますm(_ _)m
      思ったより需要があるのか、それとも生産数が少ないのか……

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