『魚沼・奥只見・檜枝岐紅葉ツーリング』3日目 馬坂峠グラベルライド

七入山荘の朝。
ここは福島県桧枝岐。
「山荘」と名が付くだけあって、朝食は6:00~で好きなお時間でどうぞということだった。
尾瀬も近く、そういうお客さんも相手にしているよう。

昨日合流したzumishさんと相談して、我々は7時に朝食をとった。
ちなみに、この日は既にほかのお客さんは既に朝ごはんを済ませており、食堂には我々のお皿だけが並んでいる状態だった。やっぱりなるほどそういう客層なのだな、と思った。


朝ごはんをゆっくり済ませ、8時過ぎに出発。


この日のルートは以下の通り。


なんといってもこの日は、馬坂峠を含む川俣檜枝岐林道。福島県と栃木県を結ぶ林道で、ダート区間が30km超の関東屈指のロングダートであり、かつ完抜可能。

この林道を走りたくて、遠路はるばるここまで来たと言っても過言ではない。

馬坂峠に行きたいと思ったのはいつだっただろう。ずっと前から気にはしていた。行きたいと思いつつ行けなかったのは通行止めだったからに他ならない。

そういえば、イナさんと日光を走ったときに「馬坂っていつか開きませんかね」って聞いたことがあった。イナさんの答えは「あー、あそこは多分もうないですね」だったはず。あれだけいろんなところを走っているイナさんがそういうのだから間違いないだろうなというのもあったし、そもそもイナさんに聞いた時点で自分も、まあ、正直開くことは無いだろうな、と半ば諦めていた。

だからこそ、この秋に飛び込んできた「通行可能」の4文字には本当に驚いたし、このタイミングを逃す手はないな、とも。またいつ通行止めになるやもしれぬ、と。

そんなタイミングでzumishさんからのお誘いがあったので、これはいかない選択肢はないと思ってホイホイそのお誘いに乗ってここまで来た。前にも書いたけれど、体重とフットワークは軽い方が良いというのが持論なので。

少し前置きが長くなったけれど以下、当日の様子。



最初は国道350号線をゆく。







檜枝岐温泉峡の温泉街の中を曲がり川俣檜枝岐林道へ。最初数キロは舗装路だったけれど、ほどなく未舗装路が始まった。





馬坂峠は標高1790mに位置する。
檜枝岐温泉峡は標高約950mほどなのでざっくり800m強のヒルクライムになる。こう書くと結構登るな、と感じるけれど、距離は14㎞ほどあることも手伝ってか斜度はそこまできついという印象は無かった。(これは二人で楽しく話しながら、写真を撮りながら登ったからかもしれない。)

路面状況はかなり良好。
というのも田代山なんかの登山のアプローチとして車がかなり出入りしているので、しっかりと踏み固められていた。実際、走ったこの日も「林道としては」だけれど、それなりの車の交通量があった。








この辺で休憩がてらお互いのバイクをチェック。

zumishさんが乗るは、GIANT REVOLT。
フルカーボンのバチバチにバチバチのバイク。
ボリュームのあるBB周りに小さいリアバックの、いかにも速そうな外観。

外観だけでなく、しっかりそれを踏み切るzumishさん。
「パワフルに」という形容詞がぴったりな登り方をされていた。
「登り速いですね」って聞いてみたら「よく言われます」と返ってきた。
間違いない。お強い人だ。



その新しい機材には合わせるシフトレバーがギブネールというが、また。
利便性はSTIなんかには多少劣るけれど、決して懐古主義なんかじゃなく「一気に変速できる」・「パッと見で今どのあたりギアを使っていることが分かる」なんていう実用的なメリットもある。

もちろんそれはダブルレバーやバーコンでもできるけど、でも、それが手をブラケットに置いたまま実現できるという実用性を保ったまま感じられるところは唯一無二。STIとは別ベクトルの一つの完成形だと個人的には思う。

ギブネールでしか感じられない変速の楽しさがある。
ギブネールだから感じられる愉悦がそこにある。
ギブネールはいいぞ。

分かる。

そんな感じでzumishさんのバイクを見ている時間があるということは、僕のバイクをzumishさんが見る時間もあるというわけで。

僕のバイクはzumishさんのカーボンバイクとは対照的に全てクロモリ製かつ、クロモリの中でもステータスを頑丈に振った重量級。「重いですよ」なんて話していたのだけど、zumishさんが持ち上げて一言。

「見た感じよりも軽いですね」と。

僕の頭に「???」が浮かんだけれど、それもそのはずzumishさんも相当な重量級バイクの持ち主。


RIVENDELL  Joe Appaloosa。
明らかに重たいバイクだし、ホイールベースもむちゃくちゃ長いから、多分だけど速く走らないだろうし、俊敏な加速もないだろうし、軽くないだろうけど、分かる。絶対これで旅をしたら楽しい。荷物たくさん積みこんで旅したら、絶対楽しい。

「拗らせているだけですよ」なんて快活に笑うzumishさんが印象的だった。あと「一人で走るときに手が伸びるバイクはREVOLTよりもこっちなんですよね」とのこと。いつかこのバイクも拝んでみたい。


重いバイクも悪くないもんだと思うのですよ。
とはいえkona sutraを「重くない」っていう人珍しくてびっくりした…。)


さて、旅に話を戻そう。
前述の通り馬坂峠までの道はかなり締まっていた。峠付近では「最近砂利を撒いたかな」と思うような少し緩いバラスの多い所もあったけれど、それを差し引いてもかなり走りやすい部類に入ると思う。


photo by zumishさん

楽しそうに登る私。
実物の5割増しくらいにカッコよく撮っていただいて嬉しい限り。
同行者がカメラ担ぐ系サイクリストだと、楽しそうな自分の姿が残るの本当に嬉しいし、ありがたい。


紅葉はというと、標高1000m前後をピークに、その先は落葉が進んでいた。






標高1700mを過ぎたあたりだっただろうか、雪化粧をした木々が見え始めた。昨日の天気は雨。その雨がこの標高だと雪だった模様。もうこの辺は10月終わりでもう冬なんだな、と明確に感じた。気温は5℃を下回っていた。


ここまでこれば峠まではあと少し。





そんなこんなで峠に到着。
お互い「思っていたよりもいいペースで走れましたね」なんて笑いながら話し合えるくらいには、楽しく登れる道だった。



遠くには山を望む。

ここからは下り。
さらに空気圧を下げて。
自分の場合だと2.1インチタイヤということもあり、1barちょいくらいまで下げることが多い。それではいざ。


ツイッターなんかで聞いていた通り、序盤はこぶし大の石がゴロゴロとして、その間を砂地が埋めるような、緩めの路面が多かった。


この川俣檜枝岐林道は、ずっと通行止めになっていたのがこの栃木県側。
頻繁に車が出入りしていた福島側とは様子が違う。
実際、福島側では数台の車を見たけれど、栃木側ではほとんど見なかった。
バイク乗りはいっぱいいた。

ちなみにその辺のガレガレの場所の写真が一切無いのは路面に集中していた表れ。
路面に精一杯の時、写真を撮る余裕なんて無いのである。

とはいえ、それはあくまで楽しめる範疇であったというのも事実。

峠では登山客と思しき人から「いまから栃木側に下るの? サスついたMTBじゃないと手ェバカになっちまうど」なんて話を聞いたけれど、zumishさんと僕の結論は「サス付きMTBは不要」。あくまでグラベルバイクで楽しめる林道であった。

もう少し酷い路面を想像していたので、この程度だったのは嬉しかった。実際、全線通じて乗車率は100%だったし、転ばなかったし、転びかけるような箇所もほとんどなかった。


まあ、これは2.1インチのXCタイヤを履いていたからというのも多分にある。XCタイヤの太さとエアボリューム生かして、荷重のかけ方とか気にせずとも、ドッカンドッカン突っ込んでいけば、ある程度の砂利道はクリアできる(できてしまう)し、そこら辺のグラベルタイヤよりもサイドがしっかりしているので、ライン取りが下手でも、サイドカットも気にせずガンガン突っ込める。バイクコントロールが下手な自分にはありがたい限り。


反対に700×40c以下のグラベルタイヤでこの道を下るとなると、自分としては「うーん」と思ってしまう。個人的にはそういう路面の印象だったと書けば、なんとなく想像してもらえると思う。もちろん、この辺は個人の技量によってかなり変わってくるとは思うけれど。



photo by zumishさん


下りは季節の逆再生。
峠では寒風が吹いていたけれど、下るにつれて陽光が差し込み気持ちの良い小春日和。
山々の彩度も高まり、「おお、秋だ!」と思った。






zumishさんカメラはオリンパスのOM-D EM-1 Mark3。アウトドア性能抜群。センサーサイズを生かして、全体にコンパクトになるのもいい。あと、下位機種と比べて、デジタル面での機能が充実しているそう。


荒れていたのは峠から数キロの部分だけで、この辺になるとかなり路面も締まり、いわゆる一般顧客満足度の高い砂利道と言える様相だった。

















photo by zumishさん

林道の看板の前でパシャリ。
ここまでのダート区間は25㎞弱。
峠からは大体13㎞で吐き出した標高は750mほど。
あー楽しかった。めちゃくちゃ楽しかった。
今年走った砂利道では間違いなくダントツで一番。
下りながらずーーっと笑ってたくらい楽しかった。


ただ、この日はこれで終わりではなく。
この看板がある箇所までが村道馬坂2号線で、ここから川俣湖畔を走る道へと続く。そしてこちらもまた、みんな大好き砂利道だった。






ここで、MTBで走るご夫婦と会ったので、しばしの間ご一緒した。
千葉からこちらに引っ越されて、色々とこの辺のダートを走っているのだそう。

確かにこの辺、ロングダート多いし楽しいだろうなと思った。
もしサイクリングライフの充実一点突破で住む場所を考えるのであれば、個人的にこの辺に住むという選択肢はかなり上位に来る。そのくらい魅力的な場所だと思う。

じつはこのご夫婦、本当に偶然なのだけどzumishさんといろんな縁があって、大いに話が盛り上がった、というのはまた別のお話。



この辺も紅葉は素晴らしく。
日を透き通し、黄色く赤くキラキラと。



独特の青さがある川俣湖。



道は基本ダートで時々舗装路が混じるような道であった。ダートの路面はしっかりと締まり、走ってとっても楽しいダート。多少のアップダウンをこなしながら、全体としては下り基調。

ただ、水たまりが多く、バイクがドロドロになったのと、チェーンから油分が飛んでいくのを明確に感じた。
流れれば洗堀、溜まれば水たまり。
未舗装路って難しいな…。


ダート区間は10㎞強だったと思う。
馬坂峠方面と合わせれば35㎞近くのダート。
やっぱり、かなりのロングダート。
実際、あまりに長いのでカーブを曲がる度に「おお、まだダートが続いてる!」と何度も思った。




そんなロングダートも川俣大橋の辺りで終わり。
いやーマジで楽しかった。





林道から出た後は、途中からご一緒した旦那さんが先頭で、県道23号線で東へ。「ここはトンネル回避してこっち行った方が景色良いですよ」とのことで、ホイホイついていく。

不確かなこの世の中で、最も信頼できるもの一つ。
ローカルライダーの案内。


瀬戸合峡。
よきよき。



県道169号線との分岐の付近でお昼ごはん。
もう2時とか、そのくらいの時間だった。


温かいものを食べたくなる季節になったなあ、としみじみ思う。

さて、ここでMTB乗りのご夫婦とはお別れ。
またどこかで!

というわけで再びzumishさんと二人旅。
ここからは大笹牧場へと登る。



5㎞で350mほど登る。
斜度は場所によりキツイ場所もあるけれど、総じて上りやすい道。
この日はここを登ればおしまい。そう思えばたいして辛くない。
淡々と回して登った。

空が広くなったことを実感した辺りで大笹牧場。


前回ここに来たのは1月の白銀の世界だったなあ、季節よって(当たり前だけれど)だいぶ印象が変わるよなあ、と思った。


この辺りから太陽の傾きから光の色温度が高くなり、その光を浴びた紅葉もまた、綺麗なコントラストを写していた。紅葉が最も綺麗に見えるのはこの時間帯だと思う。









大笹牧場からは県道245号線で下今市までほとんどずっと下り。
ばばばばーっと下ってこの日はおしまい。


お疲れさまでした!



zumishさんとは以前からずっとご一緒したいと思っていたので、今回、こうして一緒に走る機会があって嬉しい限り。zumishさんは千葉に住んでらっしゃるので、自分が千葉に住んでいる頃は「いつでも一緒に走る機会はあるだろう、なんならどっかの林道で会うんじゃないか」なんて思っていたけれど、その機会はなく。やっぱりある程度自分から動かないとなあ、と反省したりしていた。

そういう個人的な事情もあったので、繰り返しになるけれど、今回のライドでご一緒できたのは本当に嬉しかった。

zumishさんありがとうございました。
とっても楽しかったです。
またどこかでご一緒出来たら嬉しいです!


おしまい!

実際走ったルート。

走行距離:86㎞ 獲得標高:1610m



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