『冬北海道ツーリング2023』 3日目 塘路~北太平洋シーサイドライン~釧路

「あの、すみません、有給2日分追加でお願いしたいのですが………いえ、体調不良とかではないんです。あの…今北海道にいるんですが、その…電車が大雪で動かなくて、帰れそうにないんです。はい。申し訳ありませんが、ええ、よろしくお願いします」

なんて電話をしたのが昨日。
「ええ分かりました、お気をつけて帰ってきてください」とだけ言われるだけで、特に怒られたりしなかったので、ほっと胸をなでおろしていたのはここだけの話。
ちなみにこの「有給2日間追加」ってのがみそで、これにより木曜日の天皇誕生日まで休みがつながる。つまるところ、

 土
 日
 月 もともと有給
 火 有給NEW!
 水 有給NEW!
 木 天皇誕生日(祝日)

の6連休が錬成された、ということ。
やったぜ。

実を言うと水曜は晴れ予報だったので、有給追加を1日だけにして帰ろうと思えば帰れた。が、まあ本当に電車が動くかどうかは分からない(建前)ということで2日分の有給を追加。どこの誰が晴れ予報で帰るかよ(本音)


昨日は大雪。
宿でゆっくりする一日も悪くない。

というわけで、今日から延長戦。
朝起きて天気予報を見る。
釧路方面は雲ひとつ無い晴れ。

ここで重要なことがある。昨日は雪が降っていた、ということである。もうこの時点で冬チャリ経験者は分かるであろう。そう。つまり、つまり、ひょっとすると多分おそらくきっと絶対路面は仕上がってるに違いない…!

期待を胸に川湯温泉駅から始発輪行して塘路駅へ。


夜が明ける前の川湯温泉前。
幻想的な風景の向こう側に除雪車が走る。
北海道の冬、という感じで良き。




ディーゼル車特有の振動と共に車両は南へ。
途中駅からは高校生が続々と乗り込む。
当たり前だけど「そういえば今日って平日だったなあ」と思う。
幸せだ



朝日は窓の結晶を宝石のようにキラキラと照らす。




列車の旅、というのは実は結構好きだ。

この季節の釧網本線は特に好き。朝日を浴びて白く輝く雪原が広がる車窓は、筆舌尽くしがたい美しさがあるし、地元の高校生が通学に使うその「寂れていない」感じが、地元の生活を覗いているようで、なんだか乗っているだけで楽しいのである。



小一時間ほど車両に揺られ塘路駅で下車。



駅を出て路面を見る。
今日は「当たり」だ。


塘路駅からは、道道221と裏道を使いながら南東へ進む。




やばいこれはトべる。

写真で見ている限りでは「ほーん綺麗だね」くらいかもしれないけれど、本人のテンションとしては「うおおおお! あーきもちいいいいいいいいい!!!」ぐらいだし、実際そんな感じの叫び声を上げながら進んだ。



これは雪道でテンションがめちゃくちゃ上がっている僕。







そういうこと。
アイスバーンの上にほんのりパウダースノーがかかった路面を走る楽しさは、きっと走ったことのある人にしか分かるまい。そして、その楽しさを知っている人は、この路面に取り憑かれているに違いない…。





鹿の足跡。


大きめの車両が通ったあとは雪が舞い上がり、光が当たってキラキラと光る。




走っても走ってもこれ。
気持ち良すぎないか…!




途中防風柵がある区間も。
こういう区間は風で雪が飛んでいくのか、圧雪路面ではないことが多い。こういう道はなるべく避けるのが吉。



風の強い区間だと、逆にガッチガチのところも、ときたまある。
これはこれで怖い。





風が吹けば雪が舞う。
雪軽いんだな。


厚岸手前からは門静駅方面への裏道へ。
首輪のない牧場の番犬にめちゃくちゃに追いかけられて、ちょっと、いや、かなり怖い思いをしたのもこの区間。白目剝いて牙見せながら追いかけてくる犬、怖すぎる。

路面は極上だったのだけど。





門静からは、R44を跨いで南西方面にのびる海岸線沿いの裏道へ。

ここがかなり当たりの道。
「この日一番の楽しい区間だった」といっても過言ではないほど。これは色々と言葉で説明するよりも、写真を見てもらったほうが早い。


太平洋を左に望みながら、極上の圧雪路が続く。遠くには、この辺り独特の断崖の海岸線が伸び、この景色を彩る。間違いなくこの季節、この場所でしか見られない絶景。


僕が色んな場所を旅する理由として、その場所その時期でしか見られない景色をみたい、というのがある。そういう意味でも、ここは大変ポイントの高い素晴らしい道だった。

さらに言うと、写真の場所だけがそうなのではなく、尾幌のあたりまでの約5㎞、ずっとこの景色が続く。本当に、本当に、本当に最高。






海に向かって緩くカーブしていく下り坂。
大好き。



気持ち良すぎるこの道のもう一つの特徴は、一つ一つの距離は短いけれど、それなりの急坂が交互にやってくる、というもの。



斜度11%の上り→17%の下り→15%の上り、みたいな感じの道がずっと続く。まとまった積雪があった翌日というのもあって、上りでは脚力を、下りではライディングスキルを要求された。ストレートに言うと、それなりにしんどかった。


といいつつ、この景色を見れば全て吹き飛ぶ。
そういう魔性も兼ね備えた道でもあった。






楽しい区間はあっという間に終わってしまう。


海岸線に別れを告げた後は、これまた裏道で尾幌へ。




尾幌からは裏道を繋いで道道142号線へ。
別名北太平洋シーサイドライン。



老者舞からは視界がバーンと開け、大きく太平洋を望む。




昼前で気温はご覧の通り。
このぐらいが良き。





この道の最も気持ちの良い区間が、ここ。


セキネップ展望広場の辺り。
ここのカーブが大好き。

太平洋、雪、岩、木。
白、黒、青が眩しい。




初無敵のカーブ。
ここも大好き。



一つ、これは後悔なのだけど、この北太平洋シーサイドライン、思っていたよりも雪がなかった。

釧路までの区間で積雪路面だったのは、半分あるかないか。去年も来ていたので雪の少ない場所だとは知っていたけれど、冒頭でも書いたように昨日は雪。天気図見ている限りでもこの辺りも降雪があったように見えていた。

つまり、もう少し雪があるのじゃないか、と。
そういう路面状況に対する読みの甘さが多くて、もどかしく思うことが時々ある。冬の北海道に限らずではあるけれど、冬の北海道は特に路面状況と天気とを見極める力が重要になってくる。そういうのを見極める嗅覚と勘と、それをがっちり下支えする経験が全然足りないなあ、と反省した。


次、来るときはもう少し読みの精度が上がっているだろうか。
いや、なんとして上げて行きたいところ。




もちろん日陰には雪はある。
反対に言えば、日陰にしか雪は無い。





昆布森からは、日向日陰問わず、ほぼずっと雪のない路面。
残念。




諦めの境地で「無」になりながら進むと釧路市街が見えてきた。


そのままのんびり流して東釧路駅で輪行。


釧路湿原の向こうに見える夕焼けはとてもきれいで「これは明日も期待できるかな」なんて思いながら川湯温泉へと帰った。

川湯温泉に着いた頃には夜の帳がすっかり落ち、空には満天の星空が輝いていた。写真は撮らなかった。あまりにも鮮烈な記憶として残すことができたから。うん、きっと明日もいい一日になる。


晩御飯はお多福食堂さんにて。
古き良き正しいラーメン。

つづく。


実際走ったルート
走行距離:93㎞ 獲得標高:1070m



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