『冬北海道ツーリング2023』 1日目 女満別空港~藻琴峠~川湯温泉

北海道に行こう。
そう決めたのは旅にでる、ほんの数日前のことだった。冬の景色が見たい。理由はそれだけ。旅にでる理由はいつだってシンプルな方がいい。

金曜夕方、定時と共に退勤ボタンを叩き、その足で新幹線に乗り込み京都を抜け出し羽田へ。空港近くのゲストハウスで一泊したあと、朝イチの便で羽田から女満別空港へ向かった。色々調べた結果、道東へ行くにはこれが一番早かった。




寝ぼけた顔で飛行機に乗り込むと、あっという間に女満別だった。まだ北海道に来たことに頭が追いつかないくらい、あっという間に女満別だった。文明の利器は時間のない人間に優しいけれど、旅の情緒も振り切って加速するものなのかもしれない。


この日は、冬の北海道にしてはとても暖かかった。空港前で-3℃。「昼はプラス温度帯になるな」と思いながら、輪行を解除して走り出した。

この日のルートは以下の通り。


さあ、北海道ツーリング2023スタート。




空港周辺はドライ路面が多かったけど、ほどなくして雪道はがじまった。
求めていたのは、こういうのなんだよ。




裏道を走りながら、藻琴峠を目指す。
当たり前のことのように書くけれど、「裏道」、つまり交通量の少ない国道でも道道でもない白道と呼ばれるような道のほうが、冬チャリの場合楽しいと思う。”距離の移動”という観点だと入り組んだ道はデメリットになるけど、”道を楽しむ”という観点ではこっちに軍配が上がる。


「もう春だな」と思うようなポカポカとした陽気。冬の北海道は全てが凍てつくような気温のほうがありとあらゆるものが綺麗だったりするので、少し残念に思うところもないではない。

でも、北海道に来た。
そして真っ白な雪道を走る。
それでもう十分じゃないか。
そう思う自分のほうが強かった。





少しずつ藻琴山が近づく。
「あそこまで行くのだ」という目標が見えるのは、やはりテンションが上がる。









それにしても暑い。
この辺りで気温は+3℃くらいあったはず。
こちとら-20℃までは対応できるようにしているので、暑いのなんの。





あれに見えるは斜里だろうか。
ぽっかりと春のような霞に浮かぶ白いその姿はあまりに大きく、他のものと調和しない異質な存在感で、まるで蜃気楼のようだった。


藻琴峠への道、道道102号線に合流する。写真の通り、天気はこの辺りからイマイチに。加えて路面からは雪が消え、ほぼウェット路面。日陰と峠付近のみ雪道が少し残っている程度だった。




峠にたどり着くまで、あとどのくらいか。
それを注意深く考えながら進む。冬の峠は普段よりも考えることが多い。天候、風、エスケープ、残り体力。一つの判断ミスで即死、なんていう可能性はさすがに低いけれど、普段のサイクリングより危険度が高めなのは確か。楽しいと思えるマージンを常に確保するにはどうするか。それを考えること自体が楽しい。



峠につく手前、オホーツク海が見える場所がある。眺望は素晴らしいけど、残念ながら今日はオホーツク海よりも霞の海のほうがよく見える。ちなみにここからは斜里岳や、知床方面の山々まで見えることがあるらしい。「らしい」と書いたということは、まあ、うん、つまりそういうこと(察して)。

一瞬、峠に来ないで青空の見えていた大空町で遊んでいたほうが良かったかな、とも思った。でも今の気分は峠を越えたい気分だったことを思い出して、まあそれも旅だ、と思いなおした。それに、望んだ景色が見られなかったとしても、それはまたここに来る理由になる。



冬の峠、そして山。
本当に好き。
天気は確かに残念だけど、それでもこんなに素晴らしいのはどうしてだろう。


オホーツクの眺望カーブを後にして、藻琴峠へ。
ここからは屈斜路湖方面もよく見えるはずだけど、こちらも霞の海。残念。


峠では少しゆっくりして、天気が良くなりそうか、空を見た。が、雪はぱらつき分厚い雲の向こう側にも分厚い雲があったので、恨めしそうな顔をしながら下りへ。

下りもほぼウェット、時たま雪道。
路面にも、後続車にも気をつけながら下った。




実は、今回は三脚を持ってきた。
ので、下りの途中景色の良いところで自撮り。

最近、三脚を持ち出してなかったけど、色々と思うところあって今回は持ってきたのだけど、結論から言うと、持ってきて良かった。とても良かった。デメリットを上げればそれはたくさんあるけれど、でも自分が写った写真が残せるということは、それだけで価値があるのだと思う。他の人からしたら僕の写った写真なんて鐚銭の価値すら無いだろうけど、自分にとっては宝の山。


これはダサいメイキングカット


今回の宿は川湯温泉にある。
場所は峠を下ってすぐ。

峠を下りきって時計を見ると、まだ日没まで時間があった。せっかくの北海道。もう少し裏道で遊んで行くことにした。その判断を後押しするように、徐々に再び青空が見えるようになった。

さっきまでいた藻琴山



雪道は恐ろしく静かだ。風の音しか聞こえない。自転車を止めるとあまりの静けさに驚く。時々、バサバサバサッと雪が木から落ちる音がしてビクッとなる。でも、それしかない。本当にどこまでも静か。その静けさを胸いっぱいに吸い込む。そして再びペダルを踏む。タイヤから雪道を踏む音がする。その音を耳いっぱいに吸い込む。どこまでも幸せだ。






硫黄山を横目に見るくらいで夕暮れだった。
いい一日だった。



今回は川湯観光ホテルに泊まった。

「今日」ではなく「今回」というのは、今回のツーリングの拠点をここに置いていたという意味。”点”をつないでいくツーリングもあるけれど、今回は”面”でじっくり回りたいという気持ちがあったので。自転車は離れの建物の中に入れさせてもらえた。ありがたい限り。

先に晩御飯にするか温泉に入るか迷って温泉に。すでに日没後とはいえ、ここは冬の道東。3時くらいには「もう夕方だなあ」と思うくらいに日没が早い。まだ晩御飯にするには早すぎる時間だった。

川湯温泉自体に訪れるのは3回目だけど、温泉に入るのは初めて。強烈な硫黄の匂いのするいいお湯だった。浴槽に浸かって、癖で顔にバシャっとお湯をかけたらめちゃくちゃ目が染みた。なるほど、酸性の湯、と思った。

温泉に入って出たくらいでちょうど良き時間になったので晩御飯。川湯温泉にある喫茶ノーブルさんへ。






クーポンがあったので色々頼んだらお腹はちきれそうになった。
まあ、それも思い出の一つということで。



温泉のおかげか、あっという間に眠れた。
つづく。

実際走ったルート
走行距離:65㎞ 獲得標高:1111m



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