『春の徳島~高知海岸線ライド』 2日目 宍喰~室戸~安芸

爽やかな朝だ。
徳島~高知海岸線ライド2日目。
昨日の雨と打って変わって、青色が空を覆った。


まだ4月の下旬。ゴールデンウィークを過ぎた頃の「これから暑くなりそう」という類の日差しではなく、春の柔らかな日差しが降り注ぐ朝。それでも、もうお花見をする頃の「朝晩、日差しが無くなると寒いんだよなあ」というひんやりとした風は吹いていない。ちょうどその間の爽やかな朝だった。


今日は良い日だ。

この日のルートは以下の通り。


ずっと国道55号線をトレースして室戸岬を回って高知方面へ向かう。


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国道55線のダイナミックさが味わえるのは宍喰を過ぎてそこから南だ。そう気が付いたのは走り始めて間もないタイミングだった。


ひたすらに水平線を左手に、昨日の雨のおかげか元気に青々としている山々を右手に走る。目を凝らせば遠くには室戸が見えるか見えないか。そのくらいの視界の広さがある。海は太平洋らしい荒々しさとおおらかさがあって、山は急峻というよりかは柔かい表情だった。



ここ国道55号線は、昨日の南阿波サンラインのように、急峻で入り組んだリアス海岸の中腹をワインディングロードで駆け抜けていくような道ではない。手を伸ばせば届きそうなほど間近に海岸線見ながら走る雄大な道だった。


四国の海岸線を走っているはずなのに一日でこうも表情が違う。「移動に伴う景色の変化」を楽しめるのは、移動距離を稼げる自転車旅の良いところだと思う。



昨日のモノクロ縛りと違って今日は全てカラー写真。
一日白黒で過ごした後だと、「色がある世界」って情報量がやっぱり多いんだな、と。写真を撮るときにそれを生かすも殺すも自分の腕次第な訳だけど、こうして家に帰って見ると「殺している」ことの方が多いな…。




少しカメラの話を続けると、今回もXF50mm f2一本体制。人物を撮る時にはバッチリな画角でボケも十分だし、気持ちボケがぐるぐるするのも好き。ただ、雄大な景色を撮るにはちょっと画角が狭すぎたなーという反省。(この時の反省で一本新しいレンズ買った)(反省に対するアプローチとして正しい手段なので実質タダ

ボケがちょっとぐるぐるしてる

ペースは上々。
追い風と向かい風が交互に来るような風向きの不安定さがあったり、すーさんがスローパンクしたりしたのもあったけれど、信号がほとんどないことも相まって全体に良いペースで走ることができた。なによりすーさんとのペースが楽。誰かと一緒に走るときに「ペースが合うか」って地味だけど大事。


室戸岬はジオパークである。
そのことを我々に告げるかのように、室戸岬に近づくにつれて奇岩や大きい岩が増える。男の子なので、それだけでテンションが上がる。常にサングラスをかけている妙に石に詳しいおじさんがブラブラする番組の一つでも解説を聞きたくなるような、そんな景色が広がる。



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ほどなくして室戸岬に着いた。

「室戸岬」という名前は有名だけど、そこまで観光地化されているわけではない。岬によくある「駐車場があって、そこから景色が広がる…」なんてことはなく、ボーッと走っていたら、そのまま通り過ぎてしまいそうなほど、何もない。

何かあると言えば、中岡慎太郎像くらい…
観光地の香りは全くしない


室戸岬の岬らしさを感じるには、自転車を置き道から逸れてアコウの低木をくぐり抜けた先にある。




奇岩と青い空、そして海。
室戸岬の海岸に来るのは2回目だけど、空と海が広くて大変良い。人もそんなにいない。好き。

室戸岬は写真の通り「砂浜」ではない。石が広がる海岸である。
足元には、何やらちょうど良さそうな石。
投げたくなるな?(この後ちゃんと水切り石した)

大人になっても海岸で一緒に石を投げてくれる人と一緒に遊んでいたいもんです。はい。


この室戸岬の石碑は室戸岬を少し過ぎたところにある。
室戸岬とは……?


さて、気を取り直してリスタート。
室戸岬のやや西より国道55号線から逸れて、「室戸岬スカイライン」へ向かう。
室戸岬スカイラインは、この室戸岬のすぐから始まるワインディングがとにかくすごい。

下から見た時だけで分かる「あ、これ豪快なやつだ」感



初っ端、豪快というほかないほどの豪快なヘアピンカーブを曲がりグングン高度を上げる。大した高度ではないのだけれど、見晴らしが良く、さっきまでいた海面がすぐに遠くなるのが見て分かるので「グングン高度上げてる感」がスゴイ。



今しがた上った道を見下ろす


実は、室戸岬スカイラインの景色の良い区間はここだけで、その後は室戸岬らしい南国の植生が楽しめる(つまり見晴らしは良くない)道なので、最御崎寺を観光してUターンすることに。

さすがは四国。この日もたくさんのお遍路さんを見た

お寺の前の道からも素晴らしい景色

自転車を置き、お寺散策へ




余談だけど、同行者のすーさんは、古い時代の人工物(特にお墓)に対して造詣が深いのでこういうところで話を聞くのが面白い。自分の知らない知識について解説しながら教えてもらえるのって本当に楽しいし、文化的なサイクリングは記憶にも残る。

自分も誰かのそういう一つになれたらなーなんて思うけれど、それには知識が足りなさすぎてまだまだ難しい。方言とかもう少し勉強してみようかしら、なんて。





室戸岬灯台はお寺のすぐそこにある



ぐるっと回ってきた
やはりお寺の前の景色は素晴らしい


最御崎寺の観光を終え、スカイラインを下る。



写真を撮るとき・撮られるときはゆっくり。
それ以外は「ヒャッハー」しながら。
海に飛び込めそうなくらいの解放感。
素晴らしい。



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国道55号線に戻ってからは方角が変わって北上。
風は相変わらず、向かい風になったり追い風になったりの不安定なままだった。


室戸岬を過ぎても景色は素晴らしい青


室津の辺りで、正午を過ぎていたのでお昼ごはん。
「料亭 花月」さんが金目鯛で有名とのすーさん情報で、そこに行くことに。

和風などっしりとした構えのお店と「料亭」とついている店名からちょっとビビってしまったけれど、中に入ってしまえば、案外庶民的というか気さくなお店だった。


人気店らしく三和土に置かれたベンチで待つ。程なくして席に案内された。席は2階にあった。田舎のおばあちゃんちにありそうな、とても急な階段を上がると港が見えた。窓からは緩やかな風が吹き込む良いお店だった。


メニューを見ると、キンメ丼・オールキンメ丼・スーパーキンメ丼。これでもかとキンメ推し。迷いに迷った結果、選ばれたのは海鮮丼。

「いやキンメじゃないの?」と言われそうだけど、「新鮮な地魚を使った海鮮丼」という言葉見てこれに。個人的な意見ですが、なんだかんだ「新鮮な地魚」って一番うまかったりしませんか?


もう写真で分かると思うけれど、もうとっても、とっても美味しかった。
ちなみにきちんとキンメも乗っていて良かった良かった。
お腹も満たされたところでリスタート。


しばらく北上し、吉良川の町でいったん休憩。


ここは重要伝統的建造物群保存地区範囲に指定されていて、古い町並みが残されている。古くから木材や薪で栄えたこの町は、土佐漆喰の白壁と「水切り瓦」と呼ばれる壁面に取り付けられた庇、「いしぐろ」と呼ばれる石垣壁が特徴的な家屋が並ぶ。

右手の建物の小さい庇が「水切り瓦」

いしぐろ

なまこ壁

吉良川まちなみ館で一休み

好い風が吹き込む




ここは規模が大きくないからか、観光地然としてなくて、ゆったりとした空気が流れていた。観光客は恐らく自分たちの他にはおらず、子供の手を引いて散歩する地元のお父さんくらいしかいなかった。

古い町並みでも、なんだか「忙しない」感じがするところはあんまり好きじゃないけど、ここは観光地じゃないからこそ、ちょっとゆっくりして行きたくなる雰囲気があった。


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吉良川の町を後にしたあとも、ひたすら国道55号を走る。


ちょっと寄り道


奈半利を超えたあたりから、どうも交通量が増えてきた。

今日のスタート地点である宍喰から、ここ奈半利までの区間は鉄道が走っていない。一観光客である自分からすると「鉄道があったら良いのになあ」とは思うけれど、それはきっと難しいことなんだろうなあ、ということを、この交通量の変化から感じる。

さて、そんな感慨はさておき、交通量が多い道は走って楽しくはない。
それと、どうも雲行きが怪しい。風がちょっと冷たくなってきた気がするし、何より見上げる空の雲がどんより。追加で言うと、これ以上高知方面に走っても交通量が増えるだけで楽しい道じゃないことは、3年前に走ったときに知っている。

という諸々を勘案してすーさんと相談して安芸駅にて終了!

ここからは電車旅で四国を縦断して京都のおうちまで帰宅。電車に乗ってすぐ雨が降ってきたので、このタイミングで輪行したのはやっぱり正解。


四国縦断からの電車旅は時間がかかるものかと思ったけれど、案外あっさり京都まで帰ってこれてしまった。これはすーさんと話が弾んだからっていうのもあるし、そもそもこの旅が良いものになって話が弾んだからってものあると思う。

というわけで、機会があれば、すーさんまたよろしくお願いします。

おしまい!

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