『GW佐渡旅』0日目 上越妙高~新潟(プロローグ)

大型連休の行き先は悩む。
どこへ行っても人が多い。
それに、できるなら連休でしか行けない場所が良い。
となると、まあ頭を悩ませる。

で、どうしようかなあ、と考えて決めたのが佐渡だった。

日本海に浮かぶ大きな離島、佐渡島。
流刑地としての歴史や西廻り航路の港として栄えた歴史と、日本海らしい雄大でスケールの大きい景色を持つ佐渡島。以前も訪れたことはあるけれど、もう一度行きたい場所の一つだった。

もちろん観光地という側面はあるけれど、とはいえ離島。死ぬほど混んで嫌になる…なんてことはないのでは、という予想を立てていた。

結論から言うと、行きと帰りのフェリーはなかなかに混んでいたけれど、それ以外ではストレスを感じるようなことはなかった。
ちなみに今回の旅にはgatさんという同行者がいる。何回もブログに登場しているよく一緒に走る人。gatさんの了承も得て、今回の旅先は佐渡に決まった。


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さて、では佐渡旅スタート!……とはならなくて、今日は新潟までのアプローチ、いうなればプロローグ的な一日の記録。

新幹線でビュンと飛ばして新潟入りすることも一瞬頭をかすめたけれど、せっかくの休日なのだし、走ったことのない面白そうなルートを作ることができたので、プロローグを走ることにした。

gatさんとは新潟で落ち合う予定になっているので今日は一人旅。

「自分の足で集合地点に向かう」という行為には、なんだか言い知れぬ高揚感を与えてくれる気がする。さて、そんなルートは以下の通り。


上越妙高から新潟まで。
距離にして140㎞ほど。
大した峠はないイージーなルート。


まずは京都駅から上越妙高駅を目指す。
サンダーバードで金沢まで、金沢からは北陸新幹線へ乗り継ぎ。こういうタイミングだと、北陸新幹線が延伸すると便利になるのかな、と思わないでもない。

目的地が近づくにつれ、残雪の山々が見えた。


駅に着いたのは10時半ごろ。
分かっていたけれど、全区間特急料金を課金したはずなのに到着時間が遅い。というより、そもそも関西から上越妙高が遠い。関西に来てからというもの、この界隈へのアクセスに時間がかかるんだなあ、とよく思う。


今回に装備はこんな感じ。
久々のパニアスタイル。そもそも久々のキャンツー。

四次元的になんでも入るパニアはパッキング下手な人間に優しい。とりあえずどかどかと突っ込んできたけれど、割とまとまった感じになったのでよし。個人的な意見だけれど、パッキングはまとまって美しいほうが好き。


上越妙高駅から出て振り返ると、素晴らしい景色が広がっていた。
進行方向は逆なので、いちいち振り返らなければ見えないのが残念なのだけど。


のどかな景色。
良い。とても良い。
五月の吹き抜ける薫風は、まだ夏の前のそれで、日々の鬱屈した気分や諸々を全部吹き飛ばしてくれそうなほど爽やか。

……のだけど、風向きがなあ…完全に正面からなんだよな…。

実は上の写真も向かい風がきつすぎて、ちょっと写真を撮ってごまかしたの図だったり。前パニアは、説明するまでもなく前面投影面積をマシマシにしてくれるわけで、風の抵抗は推して知るべし。もちろん上り坂では前に荷物を置く方がリアパニアより明らかに楽だったりするからこのスタイルなのだけど、ちょっと後悔したりもした。


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遮るもののない田園区間をやり過ごすと、小村峠への登りが始まった。

途中、道横に駐車していたおばあさんに声をかけられた。
自転車に乗っていると、こういうことはよくある。
それに、自転車に積載している荷物量に比例して、こういう機会が増えるような気がする。話す内容は、たいてい大したことじゃない。

「どこからきたの」
「どこいくの」
「荷物重くないの」
「がんばってね」etc.

追加で「お菓子いる?」までがセットだったりする。
今回も「おせんべいいる?」と聞かれたので、「米どころだなあ」と思いつつ(関西だと飴ちゃんだったり、和歌山だとみかんだったりする)、荷物にもなってしまうからと丁重にお断りした。

するとおばあちゃん、何を思ったのかおもむろに財布から千円札を取り出して僕に押し付けてきた。「これなら荷物にならないでしょ」、と。

こういう時、どうするのが良いのか困惑してしまう。自分が何かしたわけではないのにお金をもらうことに対して、ものすごく抵抗感がある。のだけど、おばあさんの圧に負けて受け取ってしまった。おばあさんはとても嬉しそうだった。そのおばあさんの顔を見て、「ありがとうございます」と精一杯お礼を言った。それくらいしかできることはない。おばあさんはますます嬉しそうに笑った。僕もなんだかその顔を見られてちょっぴり嬉しかった。


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ちょっと心がホカホカしながら、でも「受け取っても良かったのかなあ」なんて思いもまだちょっとあって、頭の中ぐるぐるさせながら登っていると、いつの間に小村峠だった。


小村峠は、ものすごくざっくり言うと直江津と柏崎のちょうど間に位置する、標高300mほどの小ぶりな峠である。直江津側の斜度は緩く、あまり峠を登っている感じがしないまま上の写真の大展望に至る、お得なような、峠っぽくないようなそんな道だった。

とはいえ、見える景色は一級品。
素朴な田園風景、これぞ新潟という景色が広がる。


この峠は、米山への登山道があるらしく、駐車場には何台か車が止まっていた。



上の写真で道路が見えているように、柏崎側の下りは好展望が続く。景色を楽しみながら登りたければ柏崎側から登るのがよさそう。



うねりを下る。
小ぶりな峠だけあって、下りは一瞬で終わった。


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峠を下った後はそのままの勢いで柏崎を抜ける。


柏崎の海側では「原発」という言葉がよく目に入るようになった。自分が思っているよりもずっと広い敷地のようで、色々と考えたりした。いや、ここには書かないけれど。原発の圧倒的な存在感を横目に抜けると、穏やかな日本海だった。



一瞬、ここは「北海道か!?」「オロロンラインか!?」と思うような景色が広がる。

間違いなく通底する部分はあり、それは日本海というところとは切っても切り離せないのだろう。でも、見えてくる家々が明らかに新潟で、よくよく目を凝らしてみると、景色自体も上手く言葉に出来ないけれどなんだか違っていて、「ああ、今、僕はやっぱり新潟を走っているんだなあ」と、思ったりしていた。







しばらく進むと、遠くに弥彦山が見えてくる。
古来より霊峰とあがめられる弥彦山。
遠くから、ちょっとずつ近づくその山容は、「なるほどこれが霊峰」と思わせるような威容があった。気が付けば風は背中を押す方角から吹いていた。


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国道402号線は大河津分水路を過ぎると、「越後七浦シーサイドライン」と呼ばれる名勝区間に入る。岩の存在感がとてつもなく大きくなり、自分自身がスモールライトかなんかで半分ぐらいの大きさになってしまったのではないか、と疑ってしまうほどスケールの大きな景色が続く。





おそらく昔は交通上の難所だったのは間違いないだろうなと思うのと同時に、こういう道を何の苦もなく自転車で通れる時代に生まれてよかったなあ、とも思う。


浦浜という場所で夕暮れを迎えた。
太陽が日本海……ではなく、佐渡島に沈む。

太陽の下、海面にある影は雲ではなく佐渡島。

「明日は、あそこに行くのか」と思うと、ちょっとワクワクするような、不思議な気もするような。


夕暮れR402



角田灯台を過ぎると風光明媚な景色は終わり、防風林の中を走る道に変わった。海側の地面は道路より少し高く、もう海は見えない。微妙に海側が道路よりも高いのは砂丘なんだからだそう。辺りはもうすっかり暗くなっていて、微妙な追い風を背に受けて新潟へ急いだ。


ラウンドアバウトに出会うと妙にテンションが上がる。

WCC2019年夏合宿でも通った、懐かしの場所でもある。あれ以来、流行り病で合宿なんてものがまともにできなくなっちまった。4年という歳月をどう思うかは人それぞれだろうけど、この4年間で、自分も、世の中もいろいろと変わったなあ、と思った。

合宿が出来なくなってしまった悲しさと、後輩に合宿という文化を引き継げなかった後悔を引きずりながら、2019夏合宿スタート地点でもあった新潟へ進む。


夜はスーパー銭湯的な場所で風呂上りにチキンカツを食べた。ボリュームだけが取り柄のそのカツは、冷凍を揚げたんだろうな、という味がした。旅情が無いと言えばそうなのかもしれないけれど、でも、旅先で食う妙に安っぽいご飯が僕は嫌いじゃない。それもなんだか「旅だなあ」と思ってしまったりする。

どこかいい場所で野宿でもしようかと思ったけれど、街中ということもあっていい場所もあまりなく、いい場所に快活はあったのでそのまま快活泊。学生の頃とやってることが変わんないなあ、ということにちょっぴり嬉しく思ったりした。

明日は、これまた4年ぶりの佐渡。
楽しみだ。

つづく

実際に走ったルート
走行距離:138㎞ 獲得標高:1000m




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