『GW佐渡旅』1日目 小佐渡

快活で起きる朝は、なんだかのどが渇いてちょっとイガイガすることが多い気がする。快活内の湿度もあるかもだけど、これは昨日天気が良すぎてちょっと水分が足りなかったからかもしれない、なんてことを寝ぼけ眼で考える。

天気予報を見ると、今日は曇りと晴れ五分五分のよう。
天候が悪くならないのは何より。
水分は多めにとっておかなきゃなんて思いながら無料のモーニングを食べ、快活を後にして新潟港へ向かった。佐渡旅1日目が始まった。


端午の節句よりは少し前だけれど、信濃川沿いには鯉幟が青く広い空を気持ちよさそうに泳いでいて、その下ではお祭りの準備だろうか、地元の人がせわしなく動いていた。朝は、一日が始まるぞという空気を吸い込んだ青空だった。


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新潟港でgatさんと落ち合った。
何度かブログに登場しているgatさんは、僕と同じkona sutraに乗る自転車乗りであり、走る感覚も近い。

「自転車持ってるんだ~! 今度一緒に走ろうよ!」というのは「球技するんだ~! 今度一緒に球技しようよ!」くらい意味がないという言説を以前ツイッターで見たことがある。ものすごくしっくりくる例えだったし、その例えでいうならgatさんは同じ競技だと勝手に思っている。なんならポジションもかなり近い。


新潟港から佐渡へ向かった。
GWだからか、乗船フェリー乗り場のロビーに僕らが付いた頃には、ロビーの端から端を3回も折り返すほどの長い列が既にできていた。僕らのように遊びに行く人も多いように見えたけれど、帰省する人もそれなりにいたのかもしれない。

暫くの後、乗船開始。

「こんなに多くの人乗るのか…?」と不安に思うほどの行列だったけれど、何の問題もなく乗船。輪行した自転車を抱えていると、船員さんに手慣れた様子で「自転車はこちらへ」と案してくれた。その対応からして、自転車乗りも多いんだろうなと思った。

船内は椅子の取り合いが始まっていたので、我々は外の席に座った。
髪はゴワゴワになるけれど、景色は外の方が楽しい。


「近況はどうか」「最近どこ走っているのか」「自転車のカスタムはどんなことしたか」などなど話しながら航海は進む。内容は取り立てて書くことではない。でも、こんな個人的なブログですら取り立てて書くほどでもないと思うようなことに、旅の愉しさが詰まっているのだと思う。実際、2時間半の航海は一瞬で、気が付けば佐渡が目前に迫っていた。




佐渡は、やはり新潟だ、と思う。

「いやいや、そもそも新潟県なのだし、なにを当たり前のことを言ってるんだ」と思われるかもしれない。それは確かにそうなのだけれど、佐渡島は明らかに新潟の、そして本州の通ずる土地なのだと感じる。

佐渡へ上陸した。格別、内地と変った事は無い。十年ほど前に、北海道へ渡った事があったけれど、上陸第一歩から興奮した。土の踏み心地が、まるっきり違うのである。土の根が、ばかに大きい感じがした。内地の、土と、その地下構造に於いて全然別種のものだと思った。必ずや大陸の続きであろうと断定した。(中略)私は、佐渡の上陸第一歩に於いても、その土の踏み心地を、こっそりためしてみたのであるが、何という事も無かった。内地のそれと、同じである。これは新潟の続きである、と私は素早く断案を下した。
(太宰治『佐渡』より)

家に帰って来てからこの一節を読んだ時に「分かる~!!」となった。僕は太宰ほどの鋭い感覚を持ち合わせてはいないけれど、でも佐渡は新潟なのだと感じた。それは土を踏みしめた時に感じるものも、走っていて街並みを眺めていても。


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さて、佐渡の両津港に到着したのはちょうどお昼時だった。
まずは腹ごしらえ。腹が減ってはなんとやら。


両津港近くの食堂に入った。

「時間かかるけど、大丈夫?」とお店のおばさんに聞かれたけれど、急ぐ旅じゃない。「大丈夫です」と答えて待った。すこし待つと、待つほどに混みあった店内に相応しい、とても美味しいお造りが出てきた。


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腹も満たされたところでいざ佐渡を走る。
今日のルートは以下の通り。


佐渡はS字の上側が「大佐渡」、下側が「小佐渡」と呼ばれる。この日は下の「小佐渡」を回る。昼からなので、時間対距離としては長めの行程だけど、穏やかな地形の小佐渡の海岸線。問題はないはず。


新潟は晴れていたけれど、佐渡では雲が空を覆っていた。
初夏寄りというよりも晩春寄りの肌寒い風が吹いていた。
二人してジャケットを羽織って走り始めた。



左側通行の日本であれば、離島はやっぱり時計回りが良い。
海岸線を左手に眺め、民家が点々と並ぶ集落を緩やかに走る。



先端部をぐるりと回り進行方向が南南西を向く頃には、薄曇りの向こう側に青空が見えるようになり、ジャケットは要らない陽気になっていた。この時期の体温調整は難しいと、毎年のように思う。

赤亀岩



小佐渡は、緩やかな海岸線と漁村が時々、というのが特徴的だと思う。風景としては能登半島が近い。けれど、能登半島より風景が素朴な印象があった。うまく言葉にならないけれど、そういうところが離島だなあ、と思う。



海の青さが日本海


GWだと言うのに交通量は少なかった。
せっかくの二人旅なのだから、話しながら走れるくらいがちょうどいい。

ちなみに翌日訪れた大佐渡の交通量はそれなりにそれなりだった。
「旅」を味わうなら、間違いなく小佐渡のほうに行きたい。


「穏やかな海岸線」と書いたので勘違いされるかもしれないけれど、日本海らしいダイナミックな景色は小佐渡にもある。全体の印象としては「穏やか」なだけで、「ここは日本海だ」と思い出す景色もたびたび顔を出してくれる。

自転車をセットして……

……写真を撮る!



日が傾く頃に小木に着いた。

小木は小佐渡の海岸線では一番大きい街で、個人商店だけでなくスーパーマーケットがある。ので、ここで買い出し。

個人商店は「ほんとうに営業しているか行ってみないと分からない」というのがあるけれど(特にGW期間なんて)、スーパーマーケットはその点信用が高い。この日もありがたいことに営業していた。

旅先のスーパーは面白い。
「佐渡産」と書かれた魚は、安いのに普段のスーパーの数倍美味しそうに見えたし、反対に豚肉や鶏肉はちょっと高めだった。どちらからともなく、晩御飯どうしましょうかという会話が始まる。

「魚にしましょうか」
「どれにしましょう」
「どれも美味しそうですね」
「これで何作りましょうか」
「それ作るならこれ要りますね」
「調味料これ持ってきてます」etc.

gatさんは僕よりも自炊歴が長い。そして魚を捌くのも僕よりも圧倒的に上手い。つまり晩御飯の選択肢がかなりある。キャンツーだと「あれができない」とか消極的な理由で晩御飯が決定しがちだけれど、今回は違う。普段自炊している人と旅先のスーパーに行くのは、とても楽しいことかもしれない、とこの時初めて気が付いた。

キャンツーで持つべきものは、料理できる友。

買い出しした荷物はリュックへ
リュックって便利。


夕暮れの町を抜ける。
小木でついでに温泉に入り、再び外に出るころにはマジックアワーだった。







完全に日が沈み、あたりが暗くなった辺りでちょうどよい場所があったので、そこでこの日は一泊。



晩御飯はそりゃあ旨かった。

つづく。



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