『GW佐渡旅』2日目 大佐渡スカイライン・大佐渡半周

旅は、2日目が好きだ。
1日目は体がまだ日常を引きずっている感じがするし、3日目以降は旅が徐々に「日常」になっていく感覚がある。時と場合によるけれど、一番2日目が楽しい気がする。佐渡旅は2日目も晴れだった。


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ルートは以下の通り。


小佐渡を回りきって大佐渡スカイラインを登り大佐渡の最先端まで。
迷うことのないシンプルな道。


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今日も海岸線を走っていく。
悪く言えば昨日から代わり映えのしない景色である。
でもそれでいい。
それを楽しみに来ている。


途中の海。
綺麗なのは、二日目の朝もう慣れた。
そのくらいどこも綺麗だった。

サブマリン!!

転ぶ0.1秒前。


しばらく走り羽茂小泊あたりで、県道45号線は国道350号線に合流する。
離島とは言え、大きい佐渡島。
国道はそれなりの交通量がある。





交通の流れの早い国道350号線に別れを告げ、田園の真ん中を突っ切る県道を走る。周りに田畑しかなくなると、大佐渡の山々の高さに改めて驚く。

「聳えている」という言葉がしっくりくる圧がある。
5月でも残雪を残す大佐渡山地は最高峰が1172mもある。

「あれ、さっきまで海沿いにいたのに」と思う自分はやはり内房育ちなのだろう、とこれも改めて思う。海の近くに山なんてものは無い。それが僕の「当たり前」である。佐渡の人が千葉をみたら「山が無い」と思うのだろうか。




再び国道に合流してすぐ大佐渡スカイラインへ向かう。


「今まで走ったことのある道で一番きつかった峠はどこですか?」

これは僕が結構好んでサイクリストに聞く質問の一つである。
その答えで相手の趣味嗜好が何となく見えてくるし、そもそも「きつかった」という話は、大抵の場合、面白い。きつかった原因が峠だけでなく、「そのとき水が無くて…」「ハンガーノックで…」「自転車始めたばかりで…」などなど色んな原因があったりして、そういう話を聞くのが僕は好きだ。


さて、そういう僕は大佐渡スカイラインが一番きつい峠だと思う。
シンプルに道がきついのだ。
10㎞で900mほどを一気に駆け上がる。
単純計算で平均勾配は9%である。

それに前回訪れた時は、アスファルトで目玉焼きが出来そうな8月のある日だった。
大佐渡スカイラインは日陰があまりない。
それもあって、とにかくとにかくとにかくきつかった。
視界の先に陽炎で揺れるガードレールをよく覚えている。

前回訪れたときから3年経った。
印象は変わるだろうか、と楽しみに登り始めた。

フロントトリプル万歳!



斜度は大体15%くらい。
きついところで20%くらい。
やっぱりつらいぜ。




下から、黄緑、黄色、そして茶色。
新緑から芽吹く前へと季節を逆行する。
次第に風が高原を帯びてくる。



交流センターの白雲台の前で、いきなり目隠しが取れたように木々が無くなり、景色は大きく開けた。遠くは両津港まで、はっきり見えた。

昨日僕らはあそこから上陸して、あの辺りからこの山を見ていたのだと思うと、自転車の移動距離ってすごいのだなあ、と当たり前のことを思う。


「きつかったっすね」
と僕が尋ねると、gatさんは
「ですね。でも思ってたほどじゃなかったです。トミーさんが登る前からずっと『ここは本当にきつい』って言っていたので」と。

思っていたほどじゃなく登れて良かったと喜ぶべきか、煽りに煽って過度な期待を持たせすぎてしまったことを反省すべきか。


僕の感想としては「やっぱりここが一番きつい峠だな」。
以前よりは全然楽だったけれど、それでも今まで走った道の中で一番きついことに変わりはなかった。そのことが、なぜかとても嬉しかった。



白雲台を過ぎると「スカイライン」らしい開けた景色が広がる。

5月初めだと枯れ草色の割合が多くて爽やかさに欠ける。2023年の大佐渡スカイライン冬期通行止め解除は4月21日。ここが新緑に満たされるのはもう少し先のことらしい。道端には汚れた茶色の雪が日陰で丸くなっていた。


最高点を過ぎて、ところどころ登り返しを挟みつつ金山のある相川へ下る。


海が再び目の前に見える頃にはお昼だった。


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お昼ごはんは「パーラーつるや」で。
海の近い観光地では「魚介を食っておけばいい/食わせておけばいい」みたいなところがあるけれど、こういうその地域の食堂みたいなところでご飯を食べるのが結構好き。

注文したのは記憶が正しければ焼肉定食だったはず。
もやしと豚肉がピリ辛(結構辛め)の味付けでご飯が進む。
写真では伝わりにくいかもしれないけれど、「パーラー(軽飲食店)とは……?」と思うほどの大ボリューム。比喩ではなくお腹はちきれそうになり、「ちょっと食後休憩してから走りましょうか……」なんて言い合うほどだった。


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休憩後は大佐渡の海岸線、つまり佐渡の北側の海岸線を走る。
ツーリングスポットとしてド定番中のド定番だけれど、人気の理由が良く分かる豪快でスケールの大きい景色が続く。





大佐渡というと「奇岩! そしてまた奇岩!」という印象が強いけれど、この地域の日本海らしい集落があったりと見ていて飽きない景色の変化がある。


佐渡一周とかの看板かと思いきや「ASTROMAN」って書いていあったので、どうやら佐渡トライアスロン系の看板のよう。






いわゆる「Z坂」。
白蛇がのたりと横たわるようにも見えるツーリング写真のスポット。
換算75㎜という画角だと収めるのが苦しい。

Z坂は、佐渡ツーリングの象徴的な場所だとは思う。けれど、これをして佐渡ツーリングというのはちょっと違う。ツーリングは点を楽しむものではなく、線を楽しむものだと思う。そして、佐渡にはZ坂以外にも「線」を楽しめる風景はいくらでもある。






外海府海岸を望む。
これまでも素晴らしい景色ばかりだったけれど、佐渡の佐渡たる景色のハイライトをあげるとするなら、この辺りから。


景色と日常
ここにも、日常がある





ぽっかり浮かぶ大野亀。
「佐渡と言えば……」な場所ではあるけれど、やっぱりその迫力は桁違いにでかい。ありとあらゆる「岩」のスケールがバグってしまったかのような大きさだった。この大きさで一枚岩なのだから本当にすごいと思う。

でも、これもまた多分写真じゃ伝わっていないだろう。
写真では見たものが写せない。
それを確かめて安心するために、わざわざカメラを持ち出して旅で写真を撮っている。

遠くには大野亀が見え始めたころには、既に5月の日の長さでも陽光が橙色になり始める頃だった。




大野亀を背に。



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この日は大野亀のほど近くにある二ツ亀のキャンプ場にて宿泊。
キャンプ場にありがちな、「温かいお湯がたくさん出るコインシャワー」と「冷たいお湯がちょろちょろとしか出ないコインシャワー」のガチャに見事勝利して汗を流した後(gatさんは外して寒い思いをしていたらしい)、晩御飯。


サバを焼いたり……


トロトロのナスのホイル焼きを作ったり……


この日は満月の一日前だった。
月影がはっきり見えるほどの明るい夜。
普段の生活の中で、月の明るさなんて意識することはない。
街灯の影しか見ない普段の生活は豊かなのだろうし、月の明るさを知っている昔の人の方が豊かだ幸せだと言うつもりはないけれど、「影のさやけさ」と詠んだ人が見た世界を知ることも、それはそれで豊かだ、と思う。

それはともかくとして、あれやこれやと他愛のない話をして夜は更けていく。
明日は佐渡最終日。
楽しくなりますように。

つづく。


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