『魚沼・奥只見・檜枝岐紅葉ツーリング』1日目 魚沼~大湯温泉

「あ、あの…。こっ今月の終わりに、あ、あの、ゆゆゆ有給を取りたいの、ですが」

斜陽が差し込むオフィスに緊張した新米社員の声が響いた。
声をかけられた上司はめんどくさそうにPCから顔を上げる。

「ああそれね。」

そう声をかけられた新米社員の顔はさらに硬くなり、「一年目から有給なんてあるわけないだろう」「好きなタイミングで有給なんて」などと言われるのではないかと、そう言われたどうしようなどと色々な思いが胸に去来する。

「有給いつ取ってもらってもいいから、取りたい日を勤怠システムから申請しといて」

そう上司から言われた瞬間、マスクの下で顔が緩まないよう必死に神妙な面持ちを保つ僕がいた―――

そんなわけで三連休を錬成して向かった紅葉ライド。
今回はその1日目の様子。

まだ朝の暗い時間、会社と反対方向に進み新幹線で加速。
朝日差し込む車窓をぼんやり見ながら。


日が昇るのが遅くなったことに秋を感じる。




見慣れた、でもこの半年でずいぶん遠くなった東京を加速して振り切り北へ。



降り立ったのは新潟県の浦佐駅。
駅には銘酒八海山の広告が躍る。
昨年のライドで好きになったこのエリア。
ここが今回の旅のスタート地点。

輪行解除してほっと一息。良い天気。
空の高い気持ち良い秋だった。


浦佐駅からそのまま西の山々を目指してスタート。
向かうは越後駒ヶ岳の手前、越後三山森林公園。


今回のバイクはKona sutra。


さて、突然だけど、僕はグーグルマップで色々な場所を見るのが好きだったりする。

いや、もう少し丁寧に、正確に言語化するのであれば、グーグルマップのストリートビューで色んな場所を見て、素敵な場所を探したり、見つけた素敵な場所に自分が立った瞬間はどんなものだろうと想像する、あの時間が好きなのである。

今回向かっている越後三山森林公園もまた、そんな場所の一つ。
夜な夜なグーグルマップ旅行をしている中で見つけ、ピンを立てていた。

どんな景色が待っているだろう。
そんな期待に胸を膨らませ越後三山森林公園への道へ向かう途中、地元の方と思われるサイクリストに声をかけられた。曰く「森林公園に行った方が良いです」と。地元の人がそういうならば間違いなかろう。さらに期待が膨らむ。


八海山と同様、越後駒ケ岳もまた、浦佐駅から西に進むとずんずんと近づいてくる。山に向かうとなると坂を上って…なんてことが頭によぎるけど、ここは魚沼盆地。斜度は緩やかで越後三山森林公園まで標高差は200m。浦佐駅からの距離は10㎞以上ある、と書けばどの程度の緩やかさであるかが伝わると思う。

林を抜けると、待っていた光景が待っていた。


川沿いの視界が開ける中心には越後駒ケ岳。






越後三山森林公園の手前数キロがこの道のハイライトだった。

もともとは越後三山森林公園で引き返す予定だったけれど、その先ダブルトラックながら道が続いていたのでとりあえず突っ込んでみることに。


砂利道と、元舗装路だけれど草に侵食されている区間と、シングルトラックになる区間と、しっかりとした舗装路区間と様々な顔を見せてくれた。総合して考えると、おそらく昔は河川か何かの管理用道路に使われたような、そんな気がした。




少し進むと穏やかな小さめ滝。
渓谷の急流と呼んだ方が正しいかもしれない。
全国にその名を轟かせる米どころを育む流れは、秋の穏やかな光を浴びてキラキラと透き通っていた。





結局、森林公園から進めたのは3㎞ほど。
大きな石が目立つようになってきたのと、太陽の傾きからもうそろそろ帰った方が良さそうだなと判断したので、そのくらいで引き返した。距離にしたら短いけれど、距離だけでは測れない楽しさがあったのでこれで良し。







越後三山森林公園に戻って、越後駒ケ岳をバックに写真を。


越後三山森林公園から魚沼盆地に戻る途中も写真を撮りながら。ツーリングはなるたけ一筆書きというか、同じ道を走らないようにしたいと思ったりすることの方が多いけれど、これだけ素晴らしい道なら話は別。そのくらいの価値はあったと思う。







越後駒ケ岳に背を向けてからは魚沼盆地の田園を走る。
昨年訪れた時は金色のたわわが田を埋める季節だったけれど、既に物寂しい田んぼに変わっていた。それでも、空が広いことに変わりはなく、出来るだけ車が少ない道を探しながら、空の高さを全身で味わいながら走った。

もう後は今日の宿へひたすら走るだけ。
この日の宿は、少し山の方にある大湯温泉にある。
小出の町から西へ針路をとり、緩やかな登りを走った。

夕暮れの足音が聞こえるくらいの時間に本日の宿に到着。
いつもならこれで終わり。
でも今日はこれで終わらなかった。
というのも、単純に言えば「地域限定クーポンを使いたかった」ということになる。

後々自分が見返す備忘録として書いているこのブログなので、「ああそんなことあったな」と思えるように書いておくのだけれど、2022年秋は全国旅行者支援なるものがあった。その一つとして地域クーポンなるものがあり、この日僕は色々合わせて総額4000円分のクーポンを手にしていた。

しかしながら、地域限定クーポンはその名の通り地域限定なのであり、明日には山の中をひたすら走り福島県に入る自分にはこの日使うしかなかったのである。

んで、結果こうなったということ。
宿のおばちゃんに「自転車で10㎞だったら30分くらいでしょ。それだったら道の駅営業時間内だから」と言われたのも大きかった。(おばちゃんの距離に対する自転車の走行時間感覚が正確すぎて、もしかして「こっち側」か?なんて思った)。

そうして手に入れた魚沼産コシヒカリ新米5㎏。
こうして家に帰ってブログを書いている今、既に食べているのだけれど、割れが少なくてふっくら炊きあがってとってもホクホクしてる。

実を言うと昨年も魚沼産コシヒカリ新米をお土産に買っていて、家族からの(特に母からの)受けが良かったので、今年も買ってみたのだけれど、心から買って良かったと思う。どこでも買えそうなクッキーやなんかを買うくらいなら、僕は間違いなくこっちを買った方が良いと思う。


てなことで、道の駅から暗くなる道を帰り再びお宿へ。
この日の走行距離が若干物足りないように感じていた部分あったので、道の駅まで往復するくらいでちょうどよかったくらい。

晩御飯のお料理は丁寧な味がするとっても美味しいもので、ご飯はもちろん魚沼産。





何杯もおかわりしてしまった。
明日は良く登る行程。
食べ過ぎるくらいがちょうどいい。
心地よい満腹感に襲われてそのまま布団へ。

明日は行程的にも、実際のルートとしても山場。
どのような旅になるか楽しみに思うか思わないかくらいで寝た。

続く。

実際走ったルート。

走行距離:67㎞ 獲得標高:1099m





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