柔らかい布団で起きる。
二日目。
ここは越前大野だ。
部屋から出て外をのぞくと、重たい空が広がりすでに空は泣きだしていた。
天気は不安定のようだった。
「朝ごはん準備できましたよ」
のんびりしていると、そう声をかけられた。
まあ!おしゃれ!
自転車乗り的に見れば量は少ないとは思うけれど、味が抜群に良かったのでお願いしてよかった。腹を満たすのはコンビニでもできるけど、心を満たすことができるのはこういう食事だと思う。
温かい飲み物も一緒に。
この日のルートは以下の通り。
本当のことを言うと経ヶ岳の中腹を走る林道を走りたかったのだけど、通行止めとなってたので、高原牧場側を回ることにした。勝山方面に降りてからはR416で峠を越えて、あとは金沢へ。
宿を出る。
この時点では小雨。
雲は低く垂れこめた鈍色。
淡々と、いや、割といろんな話をしながら登る。
話す内容は他愛のない近況のことや近況の事や近況のコトなんだけど、それが楽しい。
自分は喋るのが好きな人間なのだな、と改めて思う。
さて、ゴール地点である金沢へ向かうという観点からは無駄登りともいえる、福井奥越高原牧場への登り道。景色がよさそうと思って入れていた(実際グーグルマップで見たら良さそうだった)けど、まあ、この天気。さらに言うと、登るにつれて雨脚は強くなってしまってカメラを出したくなかったし、そもそも写真なんか撮ったってしょうがないような状態だったので、ほぼなし。
ホントのほんとに無駄登りみたいな感じになってしまったけれど、行ってみなきゃわからない。これはこれで仕方ないということで。
足早に下ると勝山城博物館。
本当にお城があった場所ではないらしいけれど、遠くから見ると立派な威容。
勝山の市街地は雨もそこそこ降っていたし、走っていて楽しい道でもないので、これまたそそくさと。そこからは北に分岐して真っ直ぐ伸びるR416へ。
ここからがこの日のメイン。
「大日峠」
この区間は割と新しくできたもので、2018年から供給開始になっている。が、11㎞で775mほど登る&平均勾配8.4%という事実や、道の線形を踏まえればわかる通りなかなかに険しい道であり、なんというか、舗装の綺麗さと道の険しさと幅員とその他諸々のバランスが面白い道でもあった。
どっちかっていうと、生活道路よりもむしろ登山道へのアプローチとかの観光道路的な方向性も強いのかもしれないという印象を受けた。
…と、ここまで書いて名前が「大日峠」ではないのではないか、という事実に気が付いた。今グーグルマップを見ると新俣峠になっている。あれれ。自分がルートを引いた時には「大日峠」だった気がするのだけど。どっちが正式なのでしょう。
綺麗な九十九を折り返す。
おそらくこの道で一番有名なのはこの辺り。
福井側の頂上付近の道。ここまで綺麗に九十九を折り返す道もそう多くない。とてもきれいだと思ったけれど、願わくば晴れの日で勝山の方まで見渡したかった、と心の隅っこで思ったりもした。
ここまでこれば登り切りも近い。
ちなみにこの辺の斜度は10%は越えていたように思う。
ただ、この日の天候が荒れ模様で、サイコンの斜度がめちゃくちゃになっていたので正直、感覚でしか覚えていない。気圧なのか、雨粒なのか、風なのか、Garmin520は雨風が強い日はこうなりがちで、それはこの日もだった。上り坂なのに斜度-1%とか言ってるうちは可愛いもので、途中から斜度700%とか、もはやネタみたいな数字だった。(壁かな?)
登山用GPS導入の波動を感じないでもない。
閑話休題。
昼ごろに峠に到着。
「石川県 小松市」の看板が示す通り、この峠は福井と石川の県境峠でもある。
標高は900mを越える。
石川側を望むと遠くまで見渡せた。
昨日の温見峠でも思ったけれど、想像よりも柔らかい谷が広がる。
それもそのはずで、この峠は、勝山側(標高140m)から標高900mまで11㎞で一気に上がる標高差を、石川側の下りでは大体40㎞かけて吐き出すという、南北でかなり非対称な峠だったりする。どちら側から登ったかによって、印象は結構違ったりする峠の典型。
紅葉はというと、悪天候という点もあるけれど、温見の方が綺麗だった印象。ネタバレになってしまうし、この先の記事を読む気が無くなってしまうかもしれないけれど、日本海に向かうにつれてどんどん明度と彩度が下がってしまった印象があった。
と、いいつつ結構、綺麗な場所もあった。
具体的にはやっぱり標高600mより上。
それより下はくすんでいた。
峠を越えて少し下った頃。
気が付いたことがある。
「寒い」
雨はむしろ小康状態になっていたので、シンプルな気温の低下。
明らかに冷涼な、いやむしろ寒気すらするような空気が流れ込んできた。
と思っていたら、案の定の霧。
視界はかなり遮られ、白の世界にいざなわれる。
「明らかに気温下がったなこれ」と実感するやつ。
峠を越えるまでは10℃以上を示していたサイコンは、手元では6℃と告げていた。
この辺も国道。
車は、見なかった。
大日川ダム
トンネルの向こうの紅葉は黄葉。
この辺で厄介だったのがお昼ごはん事情。
我々は途中で県道44号線へと曲がったこともあるけれど、結論から言うと、勝山から鳥越までは無かった。いや、あったのだけど、やってなかった。あてにはできない。
もし興味がある人はその辺を注意した方が良いと思う。
というわけで鳥越まで下って「道の駅 一向一揆の里」で昼食。
温かいそばが体に染みる。
温かい道の駅でゆっくりしたい反面、宿でもっとゆっくりしたい気持ちも強くなったので、休憩もそこそこにリスタート。
さらに下ると視界が開け、山間から出たことが分かった。
途中、「手取キャニオンロード」なる自転車道があったので、そこを走った。鋭い人なら既にピント来ていそうだけど、ここは廃線跡。旧北陸鉄道金明線の跡をたどるように出来ている。分かる人が走れば「ああ、明らか廃線跡だな」と思う、狭目の幅員と柔らかなカーブしかない道。
高速移動するならば、側の国道を走った方が良いだろうけど、こっちの方が楽しいよねって話になったので、終点である鶴来駅近くまで二人でここを走った。ちなみに、反対に山間部側は、「道の駅 瀬女」まで廃線跡が続いているらしく、そちら方面に足を延ばすときも楽しそうだな、と思った。
途中、加賀一の宮駅跡に。
その名の通り、近くには加賀一の宮である「白山比咩神社」がある。
今回は時間が無いのでパスしたけれど、いつかは行ってみたい神社の一つ。
この辺からは市街地。
交通に気を付けながら。
この日は暗くなる前に宿に到着。
この日の宿はこちら。
実は文化財。
それはさておき。
まずは晩御飯とお風呂。
今回も素泊まりゲストハウスなので、とりあえず荷物だ宿において、近くの飲食店&銭湯へ。
宿主さんが、おでんの「若葉」がオススメということだったので凸。
さて、お味はというと、めちっっっちゃ美味しかった。
私の一番好きな具である大根・こんにゃくはもちろん、牛すじ、たまご、つみれ、シュウマイ、しらたき、タコ、そのほか練り物。どれもこれも、本当に美味しかった。
が、一番印象に残ったのは土手焼きかしら。
豚バラをおでんの汁を煮詰めながら火を通して、白みそを載せていただく。
これが旨いのなんの。
いい感じに柔らかいお肉を噛めば肉汁と脂とおでんの出汁がぶわーっと口の中で広がる。白みそがしっかりいい仕事をしていて、ねぎのシャキシャキ感も絶妙なマッチ。こう書いているだけでも、思い出してまた食べたくなる。今年食べたものでトップ5には間違いなく入ってくる。
〆は茶飯。
ごちそうさまでした。
ちなみに、このお店はかなりの人気店らしく、席数も少ないので、外で待っている人も多かった(この日が金曜だったってのもありそう)。我々は丁度タイミングよく待たずに入れたけれど、他の人を見ていると待たずに入れる人の方が少なかったので、その辺は注意した方が良いようにも思う。でも、待ってでも入りたくなるのも分かる、良いお店だった。
腹が満たされた後は銭湯へ。
牛乳石鹸の暖簾がかかる銭湯に悪い銭湯は無い。
風呂上がりの牛乳瓶はいつでもうまい。
宿への帰りは、髪を乾かしながら、写真を撮りながら。
金沢ってこう見ると坂の町だよなあ、と思う。
金沢をしっかり回ったことが無かったので、全然知らなかったのだけど、市街地の真ん中でもかなり起伏の多い町という印象を受けた。
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