『紀伊半島横断ライド』3日目 十津川村~奥仙丈林道~有田

一棟貸し切りはぐっすり眠れる。
そういう朝だった。

ここは、十津川村の農家民宿山本さん。


朝ごはんも豪華。
どれもこれも丁寧なお味。
御馳走様でした。

さて、本日のルートは以下の通り。


外に出るとヤマガラがたくさんお宿に来ていた。

標準の単焦点レンズだと大きく写すのは無理…。

オレンジ色とグレーの体に、顔のクリーム色が特徴的なヤマガラは、普段よく見る鳥ではないイメージがあるのだけれど、ここでは目視できる範囲で10数羽はいて、少しびっくりした。もはや街中のスズメ感覚でいる。こういう動植物に関することで「お!」と思えるのは小学生の頃、図鑑ばかり読んでいた自分のおかげ。ありがとな。今、割と楽しいよ。

個人的な振り返りはさておき、神納川沿いに県道733号線を走る。


と、思いきや、いきなり川床を走る。


2022年12月時点では県道733号線は道自体が落ちていて、迂回路として川床に道が整備されていた。もちろん、砂利道。だけど、このパーティに驚く者も、慌てる者も、騒ぐ者もどこにもいない。むしろ喜び勇んで突っ込んでいくリムブレーキロードのかさん・イナさん。

グラベルバイクがどうとか、ぐちゃぐちゃ言ってないで、とりあえず乗る。考えるのはそれから。ホイールが二つ、ペダルがあって漕げば進むのは皆同じ。デカい石を踏めば転ぶのも、また同じ。結局のところ、車種なんてものは本質では無くて、すべてはハートによって決まるのだ、ということをよくよく理解した。



数キロで砂利区間は終わり。
県道733号線に再び復帰し、そのまま西へ向かう。





かさんのゴープロ。後が面倒とかバッテリーとか容量と色々とあるそう。それでも撮れるものは間違いなく面白い。



しばらく西へ進むと県道区間は終わり、そのまま林道奥仙丈線に接続する。道としては真っ直ぐの一本道だけど、管理団体がここで変わる模様。ここからは1000m超の稜線まで登る。しかも、待つは紀伊半島の山々。僕の期待は大きな気球のようにどこまでも膨らむ。



撮る覚悟、撮られる覚悟


林道に入って数キロ。
気付いたことがある。
景色が、眺望が、本当に良い。


ガードレールはほぼない。
だからこそ得られるこの解放感。
空がどこまでも広い。

ガードレールが無いことにビビっているなんてもったいない。こんな道ばっかり走っていたい、と心の底から願わずにはいられないほど、とっても良い道で思わずにんまり。

山道と言えば木々に視界を遮られることが多いイメージもあるけれど、この林道は、山の中腹に道路をそのまま取り付けた、と言っても差し支えないレベルで右側がずっと崖。そのつくりは豪快というほかない。




ガードレール無いことにビビるな、と書いておいてなんだけど、こんな崩落跡をのぞき込むと若干足がすくむ。

ちょこちょことこういう崩落跡はあったけれど、しっかり修理してある印象だった。この林道を維持するだけでも、相当の金額がかかることが容易に想像できる。紀伊半島の山奥でこれだけ整備されているということは、それなりに色々な需要があるのかな、とも思った。


山の中腹を巻きながら徐々に標高を上げていく。
おそらく、ここはそう有名な林道ではないはず。
関東に住みながらそんな林道をルートを組み込んでくるイナさんには、多分きっとおそらく一生敵わない気がする。



奥仙丈林道について説明しておくと、距離は23㎞ほどで獲得標高は1000m超。山岳路ではあるけれど、一旦登り若干下ったあともう一度登り稜線にたどり着きそこからは横ばいなので、ずっと登りではないし、登り自体もそこまで苦しくはない。ただし、なんせ紀伊半島の山奥。補給は一切無いし、電波も当然届かない。

ただ、そういうルートだということは、地図を見ればすぐわかるだろうと思う。そういう道だから”好い”のである。




今からあそこまで行く。
そう。右端の尖った三角の山の中腹から写真中央に延びている稜線沿いに、ちっっさく見えるあの道へ。ここまで遠くの道が見られることは、そう多くない。その遠さが本当に素晴らしい。これだけで日本昔話盛りされた丼ご飯三杯は間違いなくいける。



例のごとくバラバラになったり、集まったり、写真撮ったり、撮られたりしながら登っていく。無理にペースを合わせて一緒に走る必要はない。別々に一緒にライドをする、という一見矛盾したライドが成立する人たちと一緒に走るのは、本当に心地が良い。

気がつけば、いつの間に先ほど小さく見えていた稜線だった。時刻は正午を回っていた。朝に比べ雲が低くなってしまったが、それでもこの豪快な林道の素晴らしさは色褪せない。


伐採されて荒涼とした稜線を走る。
素晴らしい。


霧渡りて山の端霞たる。
むしろ見えない方がいいこともある。



緩やかに稜線を流せば、遠くに聞こえていた高野龍神スカイラインを走る車のエンジン音がだんだんと大きくなる。残念ながらこの素晴らしい林道は終点だった。



高野龍神スカイラインのごまさんスカイタワーで、すーさんさんささん(以下「さ」がゲシュタルト崩壊するので「すーさん」と表記)と合流。「秋の京都・若狭ライド」以来2回目。お久しぶりです。ざっくり説明すると、すーさんもカメラ担ぐ系サイクリストであり、機材にも詳しいので毎度毎度色々と聞いたりしている、一緒に走ると楽しい人。

既に冬季休業に入ったごまさんスカイタワー。中に入れず、外で1時間ほど待たせてしまっていた模様。12月の標高1000m超はそれなりに冷える。すーさんは笑って許してくれたけど、今考えれば普通に土下座案件だったのでは…?



高野龍神スカイラインを少しかすめて、西に延びる林道白馬線へ。


ここでイナさんのパンク。
もちろん、手際は大変良かった。


修理を待っていると一瞬山々に光が差した。
紀伊半島。まだまだ深部には触れられていない。
そんな気がする。いや、間違いなく、まだまだ。


気を取り直してリスタート。
距離は三分の一を過ぎた程度であるものの、後はほぼ下りと考えると半分を過ぎたと思っていいくらい。気分はだいぶ楽。ただ、その気持ちには「もう少しで終わりか」という一抹の淋しさが混じる。


すーさんチタンバイク。
濡れたチタンは良く輝く。
滴る水は、雨と路面の濡れ。

ちなみに、かさんがここでパンク。下りだから写真は撮れなかったけれど、路面状況は舗装路とはいえ「舗装されているだけの、やや自然に還りつつある舗装路」だった。ん、いや、若干舗装じゃないとこもあったな。


落枝、落石、苔に加えて路面の濡れ。
それなりの斜度も加わって集中力が必要な路面。
でも、この研ぎ澄まされていく感覚、好き。




県道124号線から国道424号線につないで、西へ西へ。
太陽も西へ西へ。


有田川に合流する前に太陽は隠れてしまった。


あとは淡々と流して藤並駅で終わり。

「紀伊半島横断と銘打つならば紀伊水道を見なくてよいのか」というツッコミが来そうだし、実際そういう話になったけれど、「松阪駅スタート時点で伊勢湾見てないので、厳密じゃなくてもいいのでは」ということになったので、"ほぼ"紀伊半島横断ライドはここで終わり。



今回のライドを振り返ると紀伊半島の深部を垣間見たような、そんなライドだった。紀伊半島は、同じ関西圏とはいえアクセスの面では直線距離よりかなり遠く感じてしまって、今までなかなか足を延ばせていなかったエリアだったけど、もっと早く来ればよかったと後悔するくらいに良い場所だった。今回行った場所は紀伊半島のほんの一部にすぎないはず。まだまだ魅力的な場所はたくさんあるだろうし、今回行った場所も、次は晴天の下走ってみたい、なんて欲求もある。さて、次は紀伊半島のどこに行こうかしら。

それと、イナさん、かさん、すーさん本当にありがとうございました。感謝やらなんやらはここで書くことでもないので色々な気持ちは胸にしまっておきます。また、どこかでよろしくお願いします。

おしまい。

実際走ったルート

走行距離:106㎞ 獲得標高:1980m



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