最近のグラベルライドを足元から支えるタイヤ。
それがこちら。
VITTORIA MEZCAL 27.5×2.1
これはグラベルタイヤではなく、XC(クロスカントリー)タイヤ。つまるところMTB用のタイヤということです。これがグラベルライドにとても良かったのです。
今回はこのタイヤについてつらつらと。
最初に断っておくと、このタイヤ以外のXCタイヤを使ったことが無いので、他のXCタイヤとか、あるいはこのくらいの太さのグラベルタイヤとの比較ではありません。悪しからず。
・購入動機
グラベルをもっと余裕を持って下りたい。
これに尽きます。
今まで使っていたのはTERAVAIL CANNONBALL 700×38c。
悪いタイヤとまでは言いませんが、未舗装路での安定感がある、とは正直言いにくいタイヤでした(その反面舗装路はまあまあ)。直截に言えば、これでグラベルを下るのが怖かったということになります。
タイヤを太くしようと思うまで時間はあまりかかりませんでした。
悪路ではいろんなところで言われているように、エアボリュームこそ正義であり、信じるべき対象であるからです。
で、27.5×2.1、太さをミリメートルに直すと52㎜ほど、というサイズを選んだわけですが、この太さにした理由も少し書いておこうと思います。
間違いなく最も大きかったのは、冬チャリでしょう。
45NRTH KAHVA 27.5×2.1
このタイヤにした理由はこの記事に書いているので割愛しますが、これで走ってまず思ったのが「安定感がスゴイ!」で次に思ったのが「マージン取って走れるの、めっちゃ楽しい!!」でした。
これをグラベルでも感じたいな、と。
もう一つ影の後押しとして、「思っていたよりも距離も峠も走れた」というのがあります。片方で1㎏ほどの重さがあるスパイクタイヤですが、そのタイヤを履いて走行距離80㎞・獲得標高1800m近くのルートを問題なく走りきれたことや、北海道を走り回った経験は一つ自信になりました。
スパイクタイヤでこれだけ走れれば、スパイクの分軽くなるMTBタイヤなら、普通の時でも問題なく行けるぞ、と。
さらに挙げるならツイッターでのオススメも大きかったのです。
ご参考までに2点紹介します
— DUN (@high_left) January 14, 2022
①sim-works volummy 1.75" 590g
スリックの割に重いですが、柔らかい乗り味、耐久性・頑丈さが特長。舗装~乾いたダート向け。
②IRC MIBRO マラソン 2.3" 690g(2.1"も有)
ブロック&幅広で路面を制するMTB向けタイヤですが重量は軽め。ビード精度・気密性良く扱い易い。 pic.twitter.com/Js5P1WwjLN
乗っている人からのオススメほど信頼できるものもないのです。
この方からは2.3というさらに太いものをおすすめしていただきましたが、冬チャリで使った2.1での信頼と実績がある&そこまで不満は無かったので、とりあえずこの太さで探しました。
・選定理由
次に、なんでじゃあVITTORIAのMEZCALだったのかということについて。
まず一つに舗装路の走行性能です。
「未舗装路ではなく?」というツッコミが来そうですが、「舗装路」です。なぜか?
選ぶ対象はMTBタイヤです。つまり大抵の場合どのタイヤを選んだとしても、そのエアボリュームやパターンを考えれば、グラベル程度の道での走破性にはお釣りがきます。
反対に辛いのは舗装路。残念ながら、グラベルライドと言いつつ「グラベル」の割合が半分を超えることはあまりないように思います。
グラベル性能を上げたいと言いつつも、結局あまりにも未舗装路にパラメータを振りすぎて、半分以上ある舗装路で疲れ果ててしまったら、元も子もないのです。
ということで「舗装路性能が高いMTBタイヤ」という一見矛盾したタイヤさがしを始めました。以下、その時の候補をずらっと挙げてみます。
- VITTORIA MEZCAL
- Hutchinson python2
- IRC MIBRO for MARATHON
- TERAVAIL Rutland
ざっとこのあたりでしょうか。
選定基準としては、センターノブが低いor繋がっている・重量は700g以下・前述の通り2.1であるということ。まだまだ探せばあるとは思いますが入手性とか考えるとこの辺かな、と(他に「これオススメ」ってのがあったら教えて下さい)。
たぶん性能的に一番間違いがないのはIRCのMIBRO for
MARATHON。さっきオススメしてくださった方も使われていますし、軽量でパターン的にもセンターが低くてサイドノブしっかり目。加えてチューブレス化した時の安定感もいい、というのはいろんなところで耳にします。今こうやって並べて見ても良さそう。
ただ、その間違いがないと分かっているものを使うのも芸がないな、という天邪鬼心がむくむくとわいてきて、これは一旦見送りに。ハッチンソンはビットリアと比べて重いので見送り。TERAVAILは今と同じタイヤメーカーを使うのは面白くない&CANNONBALLの評価が自分の中で低いというところから見送り。
こう書いてみると割と消極的な理由ですが、センターがつながったパターン、重量660g、ヴィットリアの自分の中でのイメージなどなど、ありとあらゆるバランスが良く欠点が見当たらなかった、という点は大きかったと思います。
今こうして書きながら、そういや検討するときに忘れていたなと思ったのがマキシス。いや忘れていたわけではないけれど、Crossmarkとかノブしっかり目のモデルばっかり気にしていて、しっかり調べてなかったのは反省しなければいけない点。こうしてブログ書くために少し調べたら、PaceとかIkonとかその辺はかなり良さそうで、次はこっちに行くかもです。最初に調べる時は視野が狭くなりがちで良くないですね。
さて、これは完全に余談ですが、27.5×2.1というサイズ自体が古臭いというか遅れたものになっていて選択肢が限られているという現実があります。新しくリリースされるXCタイヤは29インチがほとんどで、27.5インチでしかも2.1という細いタイヤはかなり少ない印象があります。
さらに余談に余談を重ねますが、700×50c以上のグラベルタイヤが最近いろいろとリリースされていたりして、そのまま650bサイズにして欲しいと思うこともあるのですが、そういうタイヤをあまり見ないのはその流れなんでしょうか。自分の場合、背が低いので700cや29インチだと身長に対しデカすぎて持て余してしまうだろうなあ、と思っていたりします。
それはさておき。
以上の理由でVTTORIAのMEZCALにしました。
・使用感
最初に断っておかなければならないのは、冒頭に書いた通り自分はMTB乗りでもなく、この太さのタイヤで使ったことがあるのは45NRTHのスパイクタイヤだけで、他がどうかを知らないということです。つまるところ、あくまで700×35~40cのグラベルタイヤと比べてどうか、ということしか分からないわけです。その点に留意して読んでもらえると嬉しいです。
装着について
チューブレスレディにて運用していますが、安定感は抜群。ビード上げは石鹸水とか使わず、フロアポンプでシュコシュコバチンでおしまい。ブースターも必要ありませんでした。シーラントはスタンズ。暴発はもちろん、サイドからカニ泡が噴き出たり、いきなり空気圧が減っていたりすることもなく、極めて安定しているように思います。
この辺はタイヤとリムの相性がかなりデカいので、何とも言えませんが少なくともwicked
wheel
worksのリムとは相性がよさそうです。MTBタイヤなので詳しいところは分かりませんが、もしかするとGハイトの低いリムは敬遠した方が良いのかもしれません。
未舗装路の走行性能
これはもう抜群。
荒れた路面から、整った砂利道まで。
これが悪かったら意味がないわけですが。
体重50kg程度の自分は1barちょっとくらいまで下げて走ることが多いです。
このぐらい下げても特によれる感じも無く、むしろこのくらい思い切って下げた方が調子がいい感じです。
グラベルタイヤに比べてタイヤサイドがかなりしっかりしているので、自分の下手くそなライン取りでもサイドカットの心配をそこまでしなくていいというのも大きなメリット。加えてこれだけエアボリュームがあるので、リムを曲げる可能性も低い点も◎。ありとあらゆる面でマージンをしっかりとって走ることができます。
とくに斜度のきつめのグラベルで多い、こぶし大の石が並ぶグラベルではその真価を発揮するように思います。そのエアボリューム、パターンのおかげかかなりスムースに乗り越えていけますし、そういった道の下りでの恐怖心はかなり緩和させることができました。
こういう道でもビビらず行ける |
反対にバラスの撒かれた高規格林道だとそこまで優位性は無いかな…と思うこともあります。いや、全然悪くは無いんです。ただ荒れた林道に比べるとグラベルタイヤとの違いを大きくは感じないというか。ノブが低めで硬めという点もありそうですが、そういう道だと自分が想像しているよりも砂利の上を滑っていく感じがあります。ただ、これは技術不足も大きそうな気もします。
こういう道だとMTBタイヤである意味があんまりない…。 |
と、まあ少しマイナス点も書きましたが、総じて二重丸いやハナマルくらいはあげられるように思います。このタイヤでグラベルを走るのが楽しすぎて、他のタイヤで行く気が全く起きないほど、このタイヤの魅力に取りつかれています。やっぱり信じるべきはエアボリューム。
舗装路の走行性能
うん。これって書くのが難しい。
口が裂けても良いとは言えないです。
当たり前です。MTBタイヤですから。
じゃあ全くダメなのっていうとそれは違うと思います。
回りくどい言い方になりますが、「良く走るわけじゃないけど、想像しているより全然良く走る」という感じでしょうか。
センターノブがつながっていることは結構大きそうに思います。雨で濡れた道を走っても、濡れるのはそのセンターノブの部分だけだったりするので、転がり抵抗にはある程度貢献しているように思います。(センターノブが低いタイヤとどの程度違うかは微妙なところですが)。
センターノブが繋がるパターン |
緩い下りや追い風だったりすれば20km/h後半まで上げることも苦ではないですし、その重量を生かして、一旦スピードに乗せてしまえばそこそこ巡行もできます(当社比)。自分が最初に想像していたよりもはるかに良く走れるなあ、という感じです。
苦しいのは緩い登り、向かい風です。ここはもうしょうがないと割り切っています。何かを得るには何かを捨てる必要があります。反対に坂がきつい場合は思っているほどのきつさではない、というのは一つありがたかったことです。まあ、正直これはキツイ坂なんて、どのタイヤ履いてたって皆辛い、ということの裏返しでもありますが。
少なくとも舗装路のアプローチがきつすぎてタイヤを花脊峠に埋めてきてやろう、とか思うことはありません。具体的な数字を言うと、走行距離100㎞で獲得2500mくらいまでならなんとかなるという印象です。あくまで個人的な印象ですが。
もし、もっと軽快に走りたいなら、細いタイヤを履けばいいのです。絶対にこのタイヤだけ履かなければならないわけではないわけですし。と、言いつつこれを買ってから38cのグラベルタイヤをほとんど履かなくなってしまったという事実もここに併せて書いておこうと思います。
・グラベルにMTBタイヤ?
今回記事にしたタイヤは、パラメータを未舗装路にかなり思い切って振ったものだと思いますが、結果としては上記した通りかなり良かったです。とはいえ、当たり前ですが別に万人にお勧めするわけではありません。
グラベルバイクはその立ち位置からかなり中途半端で、なにかを得るためには何かを捨てて、あるいは自分の技量で補うことが求められるように思います。
舗装路をメインにチューニングするなら、未舗装路の走行技術が必要でしょうし、その技術が無いならマージンをもって走れる路面が減ることもあるでしょう。未舗装路に振るなら、体力は余分に要求されるでしょうし、体力的に走りたい道を諦めざるを得ない場合もあるかもしれません。
じゃあ、自分がグラベルに求めるものは何か。
今の僕はそれが「グラベルで余裕を持って下りたい」でした。
これは自分の走行技術が低いことの表れでもありますが、この欲求はその場所以外で多少の犠牲があってもお釣りがくるほどのものでありましたし、それにマッチした機材が今回のVITTORIA
MEZCALだったということです。
今まで使っていたグラベルタイヤは、良くも悪くも中途半端で、正直どっちつかずだったという部分がありました。舗装路も未舗装路もどっちも楽しみ切れないという。グラベルバイクにおける最大公約数的な解ではありましたが、僕の場合、楽しさが最大化する答えでは無かった、と言い切っていいように思います。そのくらいには今のタイヤが気に入っています。
もし、メリットデメリットを突き合わせて、その上で「グラベルをもっと余裕を持って下りたい」と思っていて、このレベルの太いタイヤが入るのであれば試してみる価値はあるように思います。
SURLYの掲げるfff (fatties fit
fine)、訳すと「太いのがいい!」くらいな感じでしょうか、この考えが自分は結構好きです。とはいえ、ただ太けりゃいいってもんじゃないようにも思うので、今の自分の考えはこれです。
グラベルバイクのタイヤは舗装路の上りで我慢できる範疇において最も太いタイヤを履くのが良いんじゃないか、とバイクコントロール下手な自分は思いました pic.twitter.com/UeB59S3itK
— 103 (@Tomy_viajar) May 28, 2022
おしまい!
コメント
コメントを投稿